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ボルネオ島の「森の掟」 04/06

イバン族にとっては、とりわけ、狩りをする時に重要で、特に、イチジクの実がたわわになっている時は、様々な動物が集まるので、狩りの獲物が集まる場所として、逆に、絞め殺しイチジクのすぐ傍の木が果実をたくさんならしている時は、この絞め殺しイチジクは、空洞が沢山あるので非常に登りやすいので、上の方に登って、隠れて獲物を待つ事が出来る。一方で、自分たちにとって重要な木に、例えば、ドリアンの木等に、この絞め殺しイチジクが憑くと、いの一番に伐って落とす事で、重要な果実の木が殺されない様な手立ても行う。この絞め殺しイチジクは、イバン族の人々にとっても、良い面がある一方、悪い側面もあるのである。その巨大な絞め殺しイチジクを横目に思いを巡らしていると、人間には性善説と性悪説とあるが、時として、人間は天使の様なやさしさを持つ反面、時として、悪魔の様な残虐な一面を持つ事を考えると、きっと、人間もそういう両側面を兼ね備えている自然の産物だろうと、ふとそんな考えが沸いてきた。因みに、イバン族の諺で、「ピンジャオ・カラ」という言葉がある。「ピンジャオ」が「借りる」と言う意味、カラは、絞め殺しイチジクの現地名の「アラ」からきた言葉。転じて、借りたものを返さない輩の事を、「ピンジャオ・カラ」と言う。


突然、前にいる青年が立止まったので、私は、一瞬、転びそうになった。何かいる様だ。彼が、「蛇がいるよ」と教えてくれたが、どこにいるか分からない。その青年は、長い事探している私を、興味深げに見ながら、「あそこだよ、あそこ」と指差してくれるけど、皆目分からない。私が見つけられないのに我慢できないようで、近くにあった落ち木を拾って、その蛇に向けてくれた。やっと、私の目で場所が確認できたが、その蛇は、綺麗な緑色のヨロイハブという種類で、丁度、1m位の高さの幼樹の枝先にいて、その葉と似たような色の為に、識別が困難だった。その青年が、「俺が気付かなかったら、お前は蛇に咬まれていたよ」と笑った。最初は、ただ私をからかっているだけなのかと思って、私がムスッとした顔をしたら、彼が真顔になって、「イバン族の言い伝えではね。3番目に歩くのが一番危ないんだ。今、僕らは後ろの方だけど、前の方の人は、ここを通っていないんだ。ほら、この先には足跡がないでしょう。何故かって、きっと遠くから蛇が見えたから、少し遠回りしたんだ。それで、少し間があいて、ここを通ったのは、僕達だけだけど、お前は、ちょうど3番目なんだ。前にいる長老は、よく見えるんだ。新聞は読めないけど、こういうのは良く見えるんだ。後、その長老の傍にいる、背の高い痩せた青年は、お前の様に蛇を見つける事が下手で、よく咬まれるんだ。怖いから絶対3番目には歩かないんだ。今は、前から4番目に歩いているし・・」と言って笑った。

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