これからの”がん治療薬”について(間質細胞編)
こんにちは!
今回は、今後開発が期待される抗がん剤の作用機序の予測について、お話させて頂きたいと思います。
まず、現在はどんな種類の薬があるかをご説明させて頂きます。
■代謝拮抗薬
■分子標的治療薬
■免疫チェックポイント阻害剤
の3つですかね。これらについては、以下のNoteで説明しております。(免疫チェックポイント阻害剤とは、以下の記事でいう免疫療法のことです。)
今後数年もおそらく、この流れが大きく変わることはないでしょう、、、
しかし私は今後別の作用機序の薬が出てくるのではないかと思っているのです。
その一つが間質細胞に作用する抗がん剤です。
■そもそも間質細胞とは、、、?
間質細胞とは、上皮細胞を支える支持組織を構成する細胞の総称のことですね。(例えば、免疫細胞(マクロファージ)、繊維芽細胞、血管内皮細胞などが挙げられます)
逆に上皮細胞とは、皮膚の細胞や、肝臓、胃、食道、腸などを実質的に構成する細胞のことです。
つまり、上皮細胞同士の間にいて、支えているのが間質細胞ということになります。
そして、血液がんなどを除けば、私たちがイメージする”がん”とは、全て”上皮細胞ががん化した細胞集団”のことを指します。
同様に、これまで開発されてきた抗がん剤の多くは、”上皮細胞ががん化した細胞集団のみ”を標的にした薬剤ばかりです。
では、間質細胞は本当にがんの発生や進展に関係ないのか、、、、??
いいえ!!!大ありなのです!!!!
それは、間質細胞が”がん微小環境”を構成することと関係しています。
■がん微小環境とは、、、?
間質細胞たちが、がんが育ちやすいような環境を作ってあげてことを意味しています。(例えば、がん細胞が育ちやすいように増殖因子を分泌してあげるとか、免疫細胞の攻撃からがん細胞を守ってあげるとかがあります。)
近年このような”がん微小環境”の研究が進んできましたので、いくつか例をあげさせて頂きます。
実際、基礎研究レベルでは、上記のようながん微小環境ががんの進展に与える影響というのは、最近かなりホットな話題となってきています。
しかし、創薬に結び付けるには、まだ少し時間がかかるようです(一部の製薬会社ではすでに臨床試験が始まっているものもわずかにありますが。)
理由としては、これまでは微小環境をターゲットにしたとしても、候補薬剤が本当に効いているのかを評価することが難しかったからなんですね。
しかし、最近はオルガノイド培養法や流体デバイスの開発に伴い、組織の複雑性や、臓器間のADME問題も、かなりin vitroで追えるようになってきました。
ですので、今後は、がん微小環境を標的とした抗がん剤も開発されてくるかと思います。
なぜなら、現在競合が一切いないのですから。
最初にお話ししましたように、現在の抗がん剤の標的はがん細胞自身であり、がん微小環境を構成する間質細胞は標的にされていなかったのです。
ゆえに、がん微小環境を標的とする薬剤を開発することで、既存の抗がん剤と併用できます!!!
いわゆるブルーオーシャンというやつでしょうか笑
今後、がん微小環境を標的とする薬剤がパイプラインに上がっている製薬会社が出てきたら、株価も上がるチャンスかもしれません。
今後の新薬開発に乞うご期待!!!
ではではまた~~
なーとしです!大学院卒で、製薬業界なうです。生物系論文や、今後の医療業界や世の中のことについて、と自分の意見を発信していきます。 がん、再生医療、幹細胞、発生、消化器らへんに強いです。Twitterもやってます!https://twitter.com/naaaaaaato2018