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部長・副部長の選び方

今まで、私は公平な部長・副部長(同:キャプテン・副キャプテン、以下部長・副部長と表記する)の選び方というものをあまり見たことがない。
ほとんどの基準は、不公平かつ不明瞭なものであった。
そしてきっと、今でも、そうなのだろう。


私自身、剣道部では中学・高校ともに副部長であったが、同時に中学は駅伝部部長、高校はボランティア会の会長でもあった。
私が部長だった時は、一度も、指名するという形は取らなかった。
すべて後輩たちと教員に話し合いと立候補で、決めてもらった。
なぜなら、それは私が選んだ場合、後輩がやらかした時に責任を取り切れないということと、そもそも居なくなる先代が次代の部長・副部長を選ぶということがおかしいことだと思っていたからだった。

中学・高校6年間、学級委員も務めて来たが、その際、年下のクラスの学級委員を指名することは一度もなかった。そう表現したら、この違和感をわかって頂けるだろうか。


部長制のある部活動にとって、部長・副部長を決めることは、選手選考と同じぐらい、いや部活動運営にとっては、はるかに大切なことだ。
なぜなら、部活動内での人間関係に最も影響を及ぼすからだ。

部活動は大会等で結果を残すことが第一に置かれがちだが、決してそうではない。
部活動を通して、それに参加することを決めた「すべての生徒」が安心してスポーツ等に取り組むことが大切なことなのだ。
部活動とプロスポーツの違いは、そこにある。
※そのため、今回は大学の体育会/運動会、プロスポーツでの選び方を省略した。


一部の中学や高校では、顧問である教員よりも、部長・副部長、実績を持つ生徒に決定権がある現状が度々見受けられる。
そのやり方であっても、問題なく運営出来れば許容出来るのだが、残念ながら大概そうはいかない。
誰しも人間には好き嫌いがあるが、果たして嫌いな人、自分にとって具合の悪い人を後任に選ぶだろうか。
あちこちで決め方(選考)を見て来たが、教員や第三者の介入なしで、部活動運営のためにコネや好き嫌いを我慢して決めようとしているケースは見受けられなかった。

部長を務めた生徒による単独指名制は、結局のところ、非常に不公平な決め方であるということがいえるだろう。


実際に、相談があったケースを紹介する。


そこは中学の剣道部で、2年の女子部員が5人、1年の女子が5人居た。そのうち、2年には1人(現部長)、1年には2人、小学生の頃から大会で結果を残した生徒が居た。他の生徒は中学から剣道を始めた初心者だった。
経験者の1年2人はお互い自分が2年になったら、部長・副部長のどちらかになれると思っていた。

しかし、蓋を開けてみれば、部長・副部長はその2人を外した、3人のうちから2人が選ばれることになった。
現部長による、単独指名だった。
自然な成り行きだが、結果を残している2人も、他全員も驚いた。しかも現部長は、納得出来るような説明を後輩たち全員にしなかった。
その後、大揉めとなり、稽古がボイコット等々で、部活動自体が出来なくなった。

私は、部長に選ばれた生徒から相談され、現部長(〇さん)と話し合うことになった。


〇さん「あいつら、嫌いなんです。言うことを聞かないし、そんなに強くもないじゃないですか。この部活では、代々部長が指名するという伝統なんだから、口を出さないでください。」

私「つまり、貴女の好き嫌いで決めたってことだね?」

〇さん「いえ、部活のためにそうしました。あいつらが部長・副部長になったら、初心者いじめをするでしょう?」

私「どうかな。それは本人に誠意を込めて説明しない限り、貴女の詭弁にしか聞こえないね。第一、〇さんは責任を取れるの?そもそも貴女が選んだ2人も、このまま放置だと部活に居づらくならないかい?今後のサポートは?」

〇さん「もう引退する身ですから。あとは後輩に」

私「それは無責任だ。ならば、後輩たちと顧問の先生に話して、もう一回話し合いで、決め直してもいいんじゃないのかな?いじめが起こらないように」

〇さん「もう決まったことなんで、、、」

私「わかった。じゃあ私から顧問の先生に話をしよう。」

〇さん「やめてください。そんなことしたら、変わっちゃうじゃないですか。そうしたら、あいつ(□さん)は私より上になってしまうかもしれない。」

私「ん?あいつ?上とは?」

〇さん「………。顧問の先生に言って来ます」


結局、顧問の先生と校長先生の立ち会いのもと、話し合いで決め直しになり、指名された生徒の1人が部長、成績を残した生徒の1人が副部長になり、事態は収まった。

のちに、〇さんは、小さい頃から、その後副部長になった生徒(□さん)に嫉妬していたことがスポーツ少年団の先生の話で、わかった。
〇さんが嫌がらせをたくさんして、□さんがスポ少に来なくなったこともあったそうだ。〇さんは泣きながら、その旨を明らかにし、後輩たちの前で謝った。

さらに、学校でのいじめ行為が認定され、〇さんは部長の座を剥奪された。
後輩のフォローに当たった副部長が女子部長となり、3年生全員が引退した。
また、生徒各自に対して、顧問やスクールカウンセラーによる、サポートやアフターフォローが行われた。

これで、一見大団円に思えるが、満点のやり方ではない。我慢した子がいるからだ。


選考というものは、たとえどうあっても、揉めてしまうものだ。
スムーズに決め、揉め事を起こさないことより、揉めてもいいから、全員で意見を交わすことが必要なのだ。
技能の程度を問わず、部長・副部長をやりたい/やってみたい、部活動を変えたいと思う気持ちは、大切に育てたいと思う。
誰かの都合で、各個人の思いを踏みにじっている現状が悔しくてならない。

場合によっては、部長制をなくしてもいいと考えている。まず、内申書にプラスの要素として記載出来るとか、そんなことをやめてしまってもいいのだ。

指名制は、選考した生徒の複雑な感情を隠しながら、利用出来てしまう。そして各自がその理由を考えて、苦しんでしまう。
そういった危険性を孕んだものであるとわかってほしい。


日本国内、それが無理ならば、せめて都道府県内ごとに、部長・副部長制について、統一した選考基準とルールを決めてほしいと思っている。
中体連・高体連という組織があるのだから、可能だろうと思う。

どちらにせよ、無駄なしきたりで苦しむ生徒が1人でも減るよう、そしてその苦しみが生徒が我慢するという結果にならないように、制度・運営方法を抜本的に見直す必要がある。