【瑞木瑠衣SS-2】 クリスマスパーティーのその後で
「───これ、どうすっかな……」
屋上の寒空の下、オレは手元の封筒に目を落とした。
先日、有栖川のお嬢様の家でクリスマスパーティーに参加した。
オレのプレゼントが有栖川んとこに回ったのを知った時はめちゃくちゃヒヤヒヤしたけど、お気に召したようで何よりだ。
卜部にプレゼントを渡してから、もっと無難なの選んだ方が良かったんじゃねぇかって思ったけど、有栖川に当たるんならちょっと奇を衒った方が丁度いい……のかもしれない。
オレの所には新原からのプレゼントが回ってきた。
プレゼントの中身は映画のチケットが2枚。
今巷で流行っている映画のものだ。
貰った瞬間、センスの良さに脱帽すると共にオレもこんな感じのもの贈れば良かったな、と思った。
当たった人が人だから、下手に置きにいったものでなくて良かったのかもしれないという気持ちもあるけど。
素直に気になっていた映画だから嬉しい……のだが、ペアという所が何とも言えない。
『良ければ、ご家族や親しいひとと行ってみてください』
チケットと同封されていた手紙に書かれた丁寧な文字を見てオレは思案した。
母さんを誘う……のはオレには勇気が持てない。
母さんはきっとオレのこと嫌いなはずだから。
では親しい人と言われても、それも悩んでしまう。
きっと、オレから誰か誘ったとしても迷惑がられるのがオチだ。
貰い物だから誰かに全部譲るってのも気が引ける。
1人で2回見に行くってのもオレには全く意味のない行為だし。
「おや、今日は早いね?」
後ろから聞き慣れた声が聞こえる。
「おー、白石じゃねぇか」
オレは振り返り返答した。
白石は軽く手を上げ、ふとオレの手元の封筒に目を落とす。
「それは?」
何を持っているのか気になるのか、そう問われてオレは口を開く。
「あー、コレ前のクリパで貰ったヤツだよ
映画のチケット」
ぴらぴらと封筒を揺らして見せる。
「ほう!奇遇だね、僕もその映画今度見に行こうかと考えていたんだ!演技の参考になりそうだと思ってね」
「なら、コレ白石が使うか?」
オレはそう言いチケットを2枚とも手渡す。
全部譲るのは良くないかと思っていたが、本当に見たがっていたヤツに渡すなら新原も許してくれるだろう。
「でも、これは君のだろう?」
白石はオレの差し出すチケットを受け取らずに首をかしげる。
そんな些細な動きにも華があるように見えるのだから、凄いものだ。
オレはその言葉に首を振り「見てぇヤツに使ってもらった方がいいからさ」と答える。
しかし、そう言っても白石はまだ受け取るのを躊躇しているらしい。
うーんと思案し、不意に「そうだ!」と声を上げた。
「ルイ君、良ければ僕と一緒に映画に行かないかい?」
白石の言葉を聞き、思わずぽかんとしてしまう。
「ダメかい?とても話題の映画だからね、きっと君も楽しめると思うのだけれど
勿論、嫌と言うなら断ってもらっても構わないよ」
「ん、いや……ちがっ、別に嫌ってわけじゃ」
作った口調が崩れる程に動揺する。
オレなんかが同行の相手に相応しいとは思わない、けどこういう所で断るのはもっと良くないだろう。
「嫌じゃねぇから……行こうぜ、映画」
そう答えると、白石はにこりと笑顔をみせた。
「そうと決まれば、早速日程を決めようじゃないか!ルイ君はいつが都合がいい?」
「そうだな、オレは───」
会話をしながらふと思う。
オレ、友達と2人で出かけるの初じゃねぇか?
不安だ─────
寒空の下、太陽だけは眩しいくらいに輝いていた。
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