【間宮ひまりSS-2】 タカラモノ
「本当にありがとうございましたっと、送信!」
掲示板にぽん、と今打ったメッセージが出る。
「えへ、良かった」
アタシはペンダントを軽く撫でた。
あのクソ教師に雑に扱われたけど、チェーンは切れてないし傷も付いてない。
箱猫に来て早々無くしちゃうなんてサイアクって思ったけど、優しい先輩達のおかげで戻ってきてくれて良かった。
かなめっち先輩の言う通り、ジャージに突っ込んだせいで無くしちゃったなら持ち歩かない方がいいのかも。
それでも、手元に置いときたい。
そう思うのは、別におかしいことじゃないよね?
今度は無くさないように、アクセケースの中に入れてメイクポーチの中に仕舞い込む。
流石にメイクポーチ落としたらアタシも気付くしこれごと盗られることはないっしょ!
うんうん、カンペキ!
引越したてで気抜いてたけどちゃんとしてるアタシには死角なんてないからね!
アタシは満足げに頷いた後、ぴたりと止まる。
「一応、確認しとかなきゃね」
万一ってこともあるし、とアタシはLINEの画面を開いた。
───────
「平田パイセンー!!ペンダントの件、ホントありがとね!」
「良いってことよ!俺中々のファインプレーだったっしょ?」
軽い口調で平田先輩がへらりと笑う。
「うんうん!マジで感謝ー!お礼にお菓子作ってきたから食べてねー!」
ラッピングしたシフォンケーキを手渡すと「ひまりちゃんの手作り!?マジで〜?」とニコニコしている。
アタシ料理は得意だからね!味は保証する!
お礼を済ませてアタシはすうっと軽く息を吸う。
あくまで自然に、さりげなく。
「そういえばさー!平田パイセン、ペンダントの中身……見た?」
「見た見た〜!あの子かわ」
「そっかー!でさ、その子前にどこかで見たことある?」
言い終わる前に食い気味に言ってしまう。
アタシダメだな。これじゃあ怪しいよ。
幸いにも平田先輩は気にする様子なくうーんと唸る。
「んー??どうだっけな〜?こんな可愛い子なら忘れないと思うし、無いんじゃね?」
あっけらかんと言ってのける。
「ふむふむ!ありがとね!用事はそんだけ!じゃね!」
平田パイセンが「お菓子ありがと〜!」と笑顔を返す。
アタシは大きく手を振って自分の教室へ戻っていった。
教室へ駆けながらふと思う。
アタシはバカだから、何が正解かなんて分かんないけど。
このまま一歩ずつ、近付いてくから。
進んでる気しないけど、これも大事な一歩だよね。
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