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【有栖川櫻子SS-7】 とある新聞部の航行

飛行機の機内においても私は新聞部として活動する。
新聞部たるもの、学内の出来事には常にアンテナを張っておくべき、というのは私の持論だ。
だから今注目の的となっている解決部の掲示板にも目を通す。
その最中、後輩……恐らく、後輩の卜部の投稿を見て私は手を止めた。
そして隣の席に座っている志帆の顔をじっと見る。
彼女は手元の有栖川櫻子の写真を整理していた手を止めて顔に疑問符を浮かべたような顔をした。

「アンタ、卜部のこと焚き付けたでしょ」
「何の事でしょうか?」

とても白々しい顔をしている。
私はスマホの画面を彼女へ突き付けた。

「これ、顧問が言ってた修学旅行関連の記事を書いて欲しいってやつ、卜部がこういう依頼出すように仕向けたでしょ」
「ちょっと分からないですね!」

清々しい程の知らんぷりに私はため息をついた。
長年一緒にいたから私には分かる。
修学旅行先を沖縄にしたのにわざわざ調査を後輩に任せる形にした理由、そもそも何故沖縄を選んだかについても。

まぁ、沖縄を選んだ理由は私でなくとも分かるだろう。
はるか遠くに座っているであろう有栖川櫻子を想起しながらふと思う。
彼女のことだから、一挙手一投足を見逃したくないとでも言うのだろう。
わざわざ後輩に調査するよう仕向けた理由もそれに通ずる。有栖川櫻子を見逃したくないからだろう。
その為に噂を一部だけ伝えるのはまだしも、ネットのオススメ欄に出てくるように弄るのはやりすぎではないか、とは思うけれども。

「本当、悪い先輩なんだから」
「だって、仕方ないじゃないですか!」

志帆は開き直ってふんすと言う。
分かってる。何年傍にいると思ってるの。
あっちもそれが許されると分かっているから、これだけ開き直ってる。私、甘やかしすぎたのかもしれない。

「実際、興味とかあるの?ハート岩だとかキジムナーだとか」
「ん〜新聞部としては勿論興味はありますよ?
でも、プライオリティ的には櫻子様に負けるので……」

なので流れ的に解決部に任せられる事になって万々歳!とか言って鼻歌を歌っている。

「でもさ、有栖川櫻子も解決部なわけじゃない?
結果的に有栖川櫻子にも仕事を押し付けてる形にならない?」

そう言うと志帆はピタリと鼻歌を止めて「あ」という顔をする。
まさか気付いてなかったんだ。

「まぁ!解決部の活動をする櫻子様もお美しいことに変わりありませんので!」

謎理論を展開し、鼻歌を歌いながら再び写真整理の続きを始めた彼女に私は何度目か分からないため息をついた。

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