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【瑞木瑠衣SS-4.5】 #6'迷宮 side瑠衣

【依頼】
依頼人:一ノ瀬 濫觴
 
 耳が早い人なら既に聞いていることだろう。再開発地区の集団失踪事件は迷宮の仕業だ。
 これまでにない巨大な迷宮だ。入り口など気にする必要がないほどにね。再開発地区を歩いていれば、迷い込めるだろう。
 このまま拡大すれば私たちの世界は迷宮と取って代わられる。それだけはなんとかして避けなくてはならない。
 
 迷宮内では『幸せな日々が繰り返している』。1日がループしているそうだ。同じ時間に同じことが起きる。市民はみんな笑顔で暮らしているように見える。
 超常的な世界かもしれないが、決めつけは危険ということは伝えておく。
 このループを終わらせることが今回の解決となる。
 
 迷宮内の箱猫市では邪魔する魔女と協力してくれる魔女がいるかもしれない。
 邪魔する魔女に出会ったら逃げるように。脅威度としては、敵に私がいると思ってくれていい。気をつけてくれ。
 
 ちなみに二次君は精神的に不安定でね、今回の迷宮依頼ではサルベージを担当するのは私だ。よろしく頼むよ。
 逆に言えば今回私は迷宮を解決できない。君たちの手にかかっている。
 本来なら私の手で解決したかったところだが、みんなに託したよ。
 
 報告はこまめにするように。自信のない者は挑まなくていい。
 解決部のみんながいるべき世界はここにある。
 みんなの帰還と良い報告を待っているよ。

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From:瑞木 瑠衣

ふらっと歩いててなんか違和感あんなって思ったんだけど、新しい迷宮の依頼が出てたんだな。
迷い込んでから依頼の存在に気付いちまった笑
迷い込んだついでだし、オレもこの迷宮について何か分からねぇか調べてみる。

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【途中報告】
From:瑞木 瑠衣

家に帰ると昔に家を出た父さんがいた。
母さんも今よりずっと笑顔だ。
オレの先月出した絵がコンクールで賞を取ったから、とお祝いにクレームブリュレを作ってくれた。
父さんはご褒美に今度旅行でも行くかって言って笑ってた。
不和の欠片なんてひとつもなくて、きっとこれが理想の日々っつーやつなんだろなって。
醒めてしまうのが惜しいくらいに。

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【途中報告】
From:瑞木 瑠衣

幸せな日々が繰り返している、ループしているという意味がすぐに分かった。
起きてすぐの事とかはさすがにまだ体験してねぇことだったから新鮮だったけど、しばらくしたらまた記憶と同じ光景をなぞっていく。

先月のコンクールでオレの絵が入賞して、母さんはクレームブリュレを作ってくれて、父さんはご褒美に皆で旅行に行こうと言ってくれる。
言葉だけでなく指先の1つがどう動くかどうかもオレは記憶している。
昨日と同じ日々。
きっと、分かりきった一日が繰り返されることをつまらないことであると断じる人も多いだろう。

けれども、オレは
心を乱されるくらいなら、凪のように同じ日々を繰り返す方が楽なのかもしれない。

なんてな、冗談だから真に受けんなよ。

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【途中報告】
From:瑞木 瑠衣

今日もまた同じ一日が始まる。

ループって凄いな ちょっと違うことをしても修正力が働いているというか。
定められたレールから外れないように動いている感じがする。
今日もまた先月のコンクールでオレの絵が入賞して、母さんはクレームブリュレを作ってくれて、父さんはご褒美に皆で旅行に行こうと言ってくれる。

ここはとても心地良い。
だけどなんつーか、生きてる意味を嫌でも考える。
オレ、普段から新しいものを覚えて、処理しての繰り返ししてて頭ん中がクリアなことって無かったから。
風の吹き方だって、葉の揺れ方だって現実はひとつひとつ違うけど、ここは全部同じなんだな。
こうも同じだともう見た事のある光景だから、処理しなくて良い分色んなことを考えちまう。

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From:瑞木 瑠衣

オレが生きてる意味って、あんのかな。

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【解決済】
From:瑞木 瑠衣

あー、なんて言えばいいんだろな。
あんまし人に言うべきことでもねぇっつーか……
でも、ちゃんと報告はしなきゃいけねぇよな。
言いたくねぇけど腹くくんなきゃいけねぇよな。
一応、閲覧制限だけ掛けさせて貰うぜ。
まぁ、オレの話なんてそこまで皆興味ねぇから大丈夫だよな!

<以下、閲覧制限が掛かっている>

結果として、迷宮は無くなった。
その為に何したかっつーか、結果的に無くなっただけなんだけど……

オレ、死のうとしたんだ。

この幸せにずっと浸かっていたい、それと同時にオレの生きてる意味ってあんのかなってずっとぐるぐる考えてた。
皆大変なんだな。オレ普段はここまで生きる意味に悩んだりしねぇのに。思考に余裕がある奴は普段こんなに考えてたりすんのかな。

この迷宮では母さんも父さんも笑ってて、オレを愛してくれてて。
ならなんで、現実のオレはそうじゃないんだって。
それはきっと、本来のオレはそんな幸せを享受する資格がねぇんじゃないかって。
だから、こうして幸せであることがすげぇ罪深いような気もして。
気付いたらオレ、また学校の屋上まで来ててさ。
屋上好きすぎんだろオレ笑

んでそのまま落ちて、目が覚めたら身体はどこも痛くねぇし、家はいつもと同じで母さんが1人、口数少なく待ってた。

なんで迷宮が無くなったのかって考えてみたんだけど、オレきっと迷宮にかなり馴染んでたんじゃねぇかって思うんだ。
そのオレが死のうとしたことで迷宮のオレの存在を否定したから、消えたんじゃねぇかって。

結果論だけど迷宮が消えて良かったぜ。

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【礼文-拡大停止】
From:一ノ瀬 濫觴
 瑞木君、お疲れ様……と言いたいところだが、いくらなんでも怒るよ。
 解決さえすれば良いというのが私の方針だが、わざわざ死んでもらう為に依頼を出してるわけではない。
 
 今回は瑞木君が魔女側の存在になり、唯一その迷宮を観測してる人間として死んだから消滅したのだろう。
 そして尚且つ瑞木君自身が現実の世界に未練があったからギリギリ帰ってきたということか。
 どちらにせよ、こんな綱渡りみたいな解決は二度とやらないように。
 
 君はしばらく迷宮に行くな。
 そして自由登校期間と春休みは毎日学校に来ること。登校したら卒業式と入学式の生徒会の活動を手伝ってもらう。余計なことを考えられないほど忙しくなるから覚悟しておくように。
 あと登下校は逃げられないよう、解決部か生徒会メンバーが付き添いに同行するから逃げられると思わないことだ。
 
 今日はゆっくり休みたまえ。
 お疲れ様。

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From:瑞木 瑠衣

……わりぃ、オレになんかあったら一ノ瀬の責任問題にもなっちまうもんな。
オレ、全然考え無しだったわ。

オレの付き添いに他の奴を巻き込んじまうの申し訳ねぇな……でも、生徒会長の言う事だし、大人しく従うよ。
毎日……は起きれるか分かんねぇけど……善処する……

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