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【間宮ひまりSS-1】 箱猫への一歩

「次は〜箱猫駅〜箱猫駅〜」

電車のアナウンスが聞こえる。
アタシはイヤホンを外し、窓の外を見る。

ここは箱猫市。
アタシ───間宮 ひまりの育った街から遠く離れた場所。

「お姉ちゃん、アタシも箱猫に来たよ」

ぽつりと呟き、手元に視線を落とす。
手にした大切なペンダントをぎゅっと握りしめる。

電車は徐々に減速し、駅へと止まる。
アタシはペンダントをポケットへ突っ込み、重たいキャリーケースを持ち上げて箱猫暮らしの一歩を踏み出した。

​───────

キャリーケースを引っ張りながら新居へと歩いていく。
駅から徒歩5分の1K。
外観がカラフルで可愛くて、しかもオートロック。
中々良い場所では無いじゃないか。
一人暮らしをするにあたってパパとママと揉めたりもしたが、結局は折れて様々な援助をしてくれた。

アタシ自身、甘えっぱなしという訳にもいかないという認識があったから、引越しの前にもうバイトの面接の応募も済ませていたし、何なら掛け持ちする為の別のバイト探しも同時並行で進めていた。

大家さんとお隣さんへ挨拶を済ませ、早速新居の部屋の扉を開ける。
実家にも自分の部屋はあったけれども、自分だけの家となるとそこはかとなく特別感を感じる。
中はまだ家具の搬入もしていなくてがらんとしている。

「ふぃ〜!長旅お疲れアタシ!」

アタシはど真ん中で大の字になって寝転んだ。

真っ白な天井を見上げ、目を細める。
アタシには忘れてはいけない、忘れるはずのない目的がある。
これは最初の第一歩だ。

「とにもかくにも、まずはここに慣れないとな〜」

まっさらな床でゴロゴロ転がる。
高校でもバスケ続けたいし、バイトもいっぱいしないといけない。
高校で友達いっぱい作っていっぱい遊びたいし、やらないといけないこと以外にもやりたいことは山積みだ。

普段マグロかって言われる程落ち着きないって言われるアタシだけど、たまーにはダラダラするのもアリだよね。

まぁ、じっとしてるのは性にあわないから数分ごろっとしたらそのままガバッと立ち上がる。

「よし、箱猫探検にでも行くか!」

スマホを持って後の荷物は全部家に置いて外へ出る。

この後箱猫市中を歩き回って、宝物を無くしてめちゃくちゃテンション下がるんだけど、それはまた別の話。

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