ゴールドが抱えるジレンマ～ビットコインスタンダードより③～

初心者向けによく勧められている『ビットコインスタンダード』（著者：SAIFEDEAN AMMMOUS 、出版：WILEY）を読んでいます。勉強のために自分の言葉でまとめてみます。

チャプター3を中心にまとめます。

ゴールドで全ては解決しない

生産（採掘）が難しいことから、ゴールドのストック・フロー比率は高くなっています。供給がちょっとずつしか増えていかず、「大量に供給されて、インフレで価格崩壊」といったことがありません。

ゴールドは生産が難しいことに加え、劣化などに強いので、価値の保存先としてはとても優れています。

しかし、ゴールドで全ては解決していません。ゴールドは少額の支払いに向いておらず、そのままでは普段の取引には利用しづらいのです。これは経済成長の重しであり、潜在的なデメリットとなります。

少額の支払いを可能にするために、様々な対策が講じられてきています。それによって少額の支払いが容易になった例はあるものの、別の問題が浮上し、根本的な解決には至っていません。

以降では、少額支払いに不向きというゴールドのデメリットへの対策と、それによって出てくる新たな課題についてみていきます。

金貨と銀貨の併用によって対策する

1枚あたりの価値が高い金貨だけでなく、銀貨や銅貨も使うことにより、少額の支払いが簡単になります。実際、古代ローマではこれらの通貨が使われていました。

問題点：交換レートが不安定になる

しかし、異なる金属を貨幣として用いることで、貨幣間の交換レートが不安定になります。ゴールドは生産が難しいですが、シルバーや銅は生産が簡単でインフレしやすいです。そのため、金貨に対する銀貨・銅貨の価値が下がりやすくなります。そのほかの要因による需給の乱れも起こり得ます。

現代だったら、100枚の100円玉と1万円札を交換できますが、金貨と銀貨・銅貨は、このような固定レートで取引できないのです。

金本位制によって対策する

金本位制であれば、ゴールドの価値に基づいた少額決済が簡単にできます。

金本位制では政府がゴールドを保有し、ゴールドと交換可能な貨幣を発行します。このような仕組みの下で少額貨幣が発行されれば、ゴールドによる少額支払いが実質的に実現するというわけです。

問題点：政府がお金を発行しすぎる

しかし、金本位制にも問題がありました。それは、保有するゴールド以上の貨幣を発行してしまうという問題です。政府は使えるお金を増やすために、過剰にお金を発行することがあります。

例えば、戦争が起こるとなると、多大な防衛費が必要になります。また、国民からの人気を得るために、お金をばらまくとなると、お金が必要になります。

お金が余っていればよいですが、そのようにうまくいかないケースも多いと思われます。そのような状況下で、政府はお金を印刷し、金本位制が破綻してしまいます。

政府（中央機関）がお金を増刷することは、昔からあったようです。金貨が使われていた古代ローマの時代でも、お金を増刷するために、金貨の周りをちょっとずつ削り取って、その削り取った分で金貨を新規発行するということがありました。ちなみにこの行為は、コインクリッピングと呼ばれています。

問題点：政府の言いなりになる

金本位制では、人々が政府の言いなりになってしまいます。これもデメリットとなります。

この体制下で、ゴールドという本質的な資産を持っているのは政府です。また、貨幣を発行するのは中央銀行です。このため、政府や中央機関のルールに沿って支払いをしなければいけません。政府がルールを変更したら、それに従わないといけません。

金本位制では貨幣をゴールドと交換できるといっても、このような制約があるので、お金としての価値は下がってしまいます。

国民によるゴールドの保有を政府が禁止したこともあるようです。この事実から私が連想したことですが、今の証券会社や信託銀行なども、結局は政府のルールの下で運営されているので、政府が国民によるゴールド保有をバンしたら、証券会社や信託銀行などが、ユーザーの保有するゴールドを勝手に売却する、というシナリオもあるのかなと思いました。あと政府は、税金面で不利にして、保有するうまみを削り取ることもできますよね。

ところで、今のお金じゃだめなの？

ここまで、ゴールドが優れいてる点や抱えている問題を見てきました。しかし、ゴールドにこだわる必要はあるのでしょうか。

今のお金（フィアット）なら少額の支払いもできますし、銀行に預けておけば価値は保存できているように感じます。政府がバックについていますし、安全な感じもします。

しかしフィアットは、不健全なお金の代表格として、『ビットコインスタンダード』では強く否定されています。

実際、フィアットマネーが誕生してから、ゴールドに対するフィアットの価値は下落し続けています。すなわち、フィアットを価値の保存先としていた人は、ゴールドで価値を保存していた人に対して、大きく損を出しています。