隣人がうるさい

どうやら部屋の壁がネカフェ並に薄かったらしい。構造上、私は壁際に布団を敷いて寝なくてはならない。いや、なんとか努力すれば他の位置に寝ることも可能ではあるがほぼ無理に近い。あいつのせいでわざわざ寝る位置を替えてやらないといけないのかと思うと意地でも壁に耳をつけて寝てやろうと意志は固くなる。壁際で寝てるともう、壁の薄さは0.01mmなのではないかとすら思う。隣人が見ているであろうテレビ番組の音や遊んでいるであろうゲームの銃声、どんな人生を送っていたらそんな声が出るんだとマジで疑問に思うレベルの笑い声、楽しそうにゲームをしながら通話をしている声、夜中にふと起きればいびきだって聞こえてくる。

はっきりいって地獄である。人の笑い声で不快になる時がくるとは思いもしていなかった。もはやその声はイライラを起こすスイッチでしかない。壁ドンをしたくなる気持ちを抑え耳栓をして寝る、それしかできない。

何故ならきっと彼もまた隣人がうるさいと思っているに違いないからだ。私は大音量で音楽を聴いたり、声量を気にせず通話をしながらゲームをしたりしている。隣人への嫌がらせとしての面もあるが、壁の薄さと漏れる音に気付いて直せ、ではなくお前のも聞こえてくるから俺のも聞かせてやるの姿勢でいるのだ。お互い様である。寝ている時に壁に肘打ちをすることもたまにある。きっとあれはそこそこうるさいはずだから隣人のストレスをためているに違いない。私だけが文句を言えた立場では、きっとない。


つい最近、件(くだん)の隣人の隣人、私から見たら隣の隣の部屋の住人が越した。確か1年前に入居してきたはずだから卒業の年ではないと思う。特別な事情で大学をやめるなどしない限り、引っ越しをした理由は物件にあるとしか思えない。そう、隣人の騒音に彼は悩まされていた、絶対。このまま生活を続ければ精神を病む、そう判断して引っ越しを決意したに違いない。やっぱり隣人はうるさかったのだ。

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