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永遠の花へ

今年は私にとってパーフェクトで、たぶんこの先どんなアイドルにもとってかわれないガールズグループのデビュー十周年で、そして実質的な解散年になった。

5人のメンバーのうち2人が事務所との契約期間を終えて会社を去り、既にグループ活動を離れていた最年少メンバーのソルリが、25歳の若さでこの世を去ったからだ。詳しい報道はないけれど、死因は自殺とされている。

写真はソルリのインスタから。

私はかれこれ10年近くK-POPのファンをやっていて、今も二つのアイドルグループのFCに入ってて(SUPER JUNIORとSEVENTEEN)、国内近場なら遠征込みでライブに足を運んでいるので、マイルドなガチ勢ではあるのだが(海外遠征まではしたことなくて、全ステとか接触イベントには興味ないので、緩いオタクだと自分では思っているのだが、一般の人から見たら東京以外のライブに行く段階でかなりのガチオタということになるのだろう)、それらのアイドルに対するスタンスは結構【軽い】と思う。

(でも推しの曲は知られて欲しいので一応貼っとく。)

https://youtu.be/8M146nXXTYg

https://youtu.be/rZ0LYaneOpk

大好きだし、彼らが頑張ってる姿を見ると元気になるし、その世界で成功するように応援もしたい。お金も使う。だけどそれはあくまで大人になってから得た新しい趣味の一つだし、女友達と共通の知人の話題みたいに彼らの話題で盛り上がりつつ、美味しいご飯を食べるとこまで含めた娯楽なので、別に本気で恋をしてたり、メンバーが結婚したからと言って「なんとかロス」で会社を休むようなハマり方をしてるわけじゃない。

特別な存在だし大切にしてるけど、崇拝してるわけじゃなく、親戚の男の子がスポーツとか何かの研究とかで有名になり、世界で活躍してるのを応援してる感覚に近い。

その私が、おそらく唯一【本気で】ハマったガールズグループがf(x)だ。

https://youtu.be/r4u3BzM0rqo

私はファン歴の長いSUPER JUNIORやSEVENTEENのものであっても、ライブ行く時にお化粧や服に変に迷ったことなんか(例え最前列だとしても)実はなくて、とりあえず3時間半ぐらい疲れないカッコで、という気軽な感じで出かけているのだが、f(x)の最初で最後の日本単独ライブのチケットがとれて、有明まで観に行ったときは、スタンド席だったけど着ていく洋服を選ぶのに何日もかけ、誰に見せるでもない下着までチームカラーのパープルに揃え、前夜はドキドキしてよく眠れず、オープニングの曲はガチ泣きしながら見ていた、という程度にはキモヲタだった。

https://youtu.be/kKS12iGFyEA

f(x)のどこがいいかを語らせたら私半日でも喋ってられる、MVに使われなかった捨てカットの無編集動画がDVDで出たら10万円でも買う、みたいな話をしてはオタク友達に笑われていたけど、それぐらい好きだったし、似てると言われ代わりになりそうな他のアイドルも、比較してみても悪くはないけど自分の中での格が違いすぎて結局比較にならず、殿堂入りとはこういうことだろうと自己完結していた。これはもう恋だ。

そのグループのデビュー十周年、私が本格的に彼女たちに注目し始めたのはデビュー翌年の2010年からだけど、そのディケイドが、最初に書いたような形で終わったのだ。一言で言うと、打ちひしがれている。

ここ一月ほどは仕事の忙しさが尋常ではなく、それでも負けずに旅に出て、東日本大震災のあと初めて沿岸部の津波被災地を訪れたこと、SEVENTEENのライブのため名古屋に行き、話題のあいちトリエンナーレの終幕に間に合って、沢山の作品を見てきた感想とか、noteにも書きたいことは色々あったけど、ソルリの自殺の知らせを聞いてから今日に至るまで、まとまった文章を書く気には到底なれなかった。仕事忙しすぎて家に帰るとほぼバッタリ倒れて寝てたせいもありますが。

だけど、最近の荒んだ世の中で、SNS上で繰り広げられる女性アカウントへの嫌がらせ、日本や近隣アジアの国々ではmetooがどんな風に叩き潰されているのか、トリエンナーレで観てきたモニカ・メイヤーの展示のこと、そんなことをあれこれと考えていたまさにその時に、儒教的思想に支配されている保守的な韓国社会において、アイドル歌手や女優としてだけでなく個性的なインスタグラマーとして知られ、しばしば大衆の攻撃の的になってきた私たちのソルリ(韓国人は好きなアイドルに対して親しみを込めて「ウリ=私たちの」と呼びかける。遠く離れてしまったソルリにも、私は「ウリマンネ(=私たちの末っ子ちゃん)」と呼びかけたい)がひとり命を絶ったことの意味が、ニワカの新聞記者とか、f(x)のことをよく知りもしない別のアイドルのファンの手でこねくり回され、気楽に論評されることが本当に悔しくて無念で、何かを書かずに済ませたくないと思うに至り、こうしてまとまらない文を書いている。

乱文になるだろうし、どうせ一回では書き終わらない。推敲して、彼女たちのことを何も知らない人たちにもわかりやすいような文章に仕立てたら、きっと私のこの気持ちは薄まってしまう。言葉は常に気持ちを裏切るものだから、時間を置けば、そうやってどんどん今の本当の気持ちからは遠のいてしまうだろう。なので、他人にわかろうがわかるまいが、今感じていることを書きつけておくことにした。

私をそうする気にさせたのは、f(x)の存在でありソルリの存在だ。このことは先に書いておきたい。ソルリを死なせた社会を、彼女が生まれる前に、彼女が生きているうちに変えられなかった自分に、あれからずっと後悔してて、ソルリに対してごめんね、ごめんねと思っていて、この先ちゃんとその社会に向き合って闘って変えていこうと思ってるということを、今書いておきたい。

アイドルというか、有名人特有の悩みやプレッシャー、ストレスというのは男女問わずあると思うし、それだけだって死を選ぶ理由になることはあると思う。同じ事務所で私が大好きだったSHINeeのボーカル、ジョンヒョンが自殺したときもそれは思った。寂しく無念だったけど、自分たち一介のファンにはどうしようもないことだったのかな…と思った。

ジョンヒョンの遺影。練炭自殺だった。

でもソルリの自殺までの道のりは、それとは少し違う。同じ部分ももちろんあると思うけれど、ソルリは女の子であったことで、単にアイドルであることに追加された重荷を負わされていた。ソルリが男の子だったらこうはなっていない、という部分がものすごく沢山あると思う。

若くて美しい女の子がその美しさを散々消費された上で、自由な自己表現は制限され、SNSで赤の他人に好き勝手に叩かれて死を選ぶこと、それはアイドルの世界に限ったことではなくて、私たち一般人にも関係があることだ。だから私はソルリの自殺に対して、ものすごく自分の有罪性を感じている。業界のことだから、セレブのことだから、で遠ざけてしまえない。

何かに違和感を感じても、こんなことを書いたらクソフェミ呼ばわりされて叩かれる、大多数から嫌われないようにうまく立ち回った方がいい、出る杭については自分にできることなんてどうせないから、自分さえ悪く言わなければいい、誰かの他人への嫌がらせには、軽く冷笑的なコメントつけておくけど、こちらに攻撃の矛先が向くのは避ける程度で済ませるほうが、自分の身を守るにはいい。そういう自分やいろんな人たちの保身が、回り回ってソルリを死なせたんだ、と思うと泣けてくる。

一報をきいてからずっと、あれは自殺じゃない、社会による婉曲な他殺だ、と感じてきたし、大きく言えばそういう社会の構成員である自分も、同じ罪を負ってるんだなと思う。それが悔しくて無念で何度も泣いた。

私はデビュー当時は幼かったソルリが大人の女性になって、自由な自己表現を積極的にし始める姿を見て頼もしく思い、いいぞもっとやれ!って思ってた。アンチが何を言っても圧倒的な美しさと奔放さでそれを凌駕するソルリが好きだった。自分のことでもないのにウリマンネは凄いでしょ、どうよ、って心の中で自慢に思っていた。

でも、そんな風に孤独な闘いをさせるべきじゃなかった。私たち自身が、自分の身近にある違和感のひとつひとつについて声をあげていたら、社会を変えていたら、ソルリはインスタの写真ごときであれこれ腐されることもなかったし、心を病むことも死ぬこともなかった。美しく咲き続けられたはずの花だった。

私は死ぬまでこの後悔を抱えて生きていくし、それが自分にとって唯一無二のアイドルグループをこんな形で永遠に喪ったことに対して自分が出来る最後の、ずっと続くファン活だと思ってる。

ソルリが人生最後の日々に一番叩かれていたのはノーブラについてだった。彼女がそのことについてテレビ番組でコメントしていた内容が以下にある。

https://tr.twipple.jp/p/ad/9aa3ae.html

女性のノーブラやミニスカを、やれはしたないだの控えるべきだの過剰に叩く国というのは、ノーブラと見ればじろじろ眺めてニヤついたり、「やらせろ」みたいなセクハラを口にしたり、ミニスカートで痴漢やレイプにあっても被害者がわの自己責任扱いするのが当たり前だと思っている奴が大半、という国だ。野蛮で民度が低い社会を正当化して、そういう野蛮さにあわせる形で身を守らない女性がいれば、犯されたり攻撃されるのは当然、と居直っている。

ソルリは(そんな言い方はしなかったけど)自分自身が「心地よく過ごしたい」という人として当たり前の権利が、そういう野蛮人の理屈で奪われることを「人を傷つけるわけでもないのに変だな」と感じられる素直な人だったし、変だなと思ったことはやらない天真爛漫なストレートさを持った永遠の少女だった。

そんな彼女のことを、死後もノーブラソルリ、ノーブラソルリと書き続けるメディアやネチズンに私は本当に辟易してるし、それを放っておく気もないんだよ。

赤の他人のノーブラがお前の親でも殺したのか?他人のノーブラにいちいち構うな。ノーブラならセックスしたがってる、なんていうのは野蛮な妄想だ。他人の体をジロジロ眺め、自分勝手な性的な妄想を、その人に向かってわざわざ言葉にして投げつけて怖がらせるなんてことは文明人のやることじゃない。

日本での#kotoo運動やそれに賛同した人たちがどんな風にネットで叩かれ絡まれ嫌がらせを受けてるか、SNS見てる人ならすぐにピンとくると思う。それと韓国ネチズンのソルリに対するノーブラ叩きは相似している。

【誹謗ツイートのため閲覧注意】

女性による(欧米などに比べればかなり控えめな)主張に対する異常なまでの攻撃性、という点で韓国社会と日本社会はそっくりだ。儒教文化圏の悪いとこが凝縮されたようなネットの反応。

時としてそれなりの地位のある知識人や女性自身ですら、個性的な女性を小バカにしたり「私は女性だけどこんな人と一緒にしないで」と逸脱者を叩く側にまわって喝采を浴びる。異分子を叩いて叩いて叩き潰し、時には死ぬまで追い詰める。そんなことが日常茶飯事になってるのは異常だ。

f(x)は、5人組のガールズグループだけど、メンバー一人一人がこういう均質性を要求する差別社会における被差別者でもあった。

リーダーのビクトリアは中国人、ラッパーのアンバーは台湾系アメリカ人、ボーカルで同じ事務所のスーパーアイドルグループ少女時代に所属していたジェシカの妹クリスタルもアメリカ出身で、最近でこそ改善してきたけど十年前には露骨な外国人差別を平気で垂れ流していた韓国メディアにはしばしば餌食にされてきた。

アンバーは性自認について特にはっきりとは言及してはいないけど、男の子のようなルックスと振る舞いでずっと叩かれていたし、ボーカルのルナは(そのまんまでも十分に可愛いのに)他のメンバーがモデル級の美少女なものだから、やれ足が太いだの背が低いだのと比較してケチをつけてくるルッキズム社会に傷つけられてきた。ソルリがグループ活動を休止したあと、4人になったf(x)のカムバック時には、おそらくダイエットのし過ぎでガリガリに痩せていて、健康的なルナが好きだった私は、本人がいいならそれでいい、と言いながら、やはり見ていて悲しかった。

ソルリは子役の出身で、f(x)のデビュー時から特に有名なメンバーであり、事務所のお気に入りでもあったと思うが、ドラマ撮影のため多忙で、f(x)の活動にしばしば不参加だったり舞台で疲れた表情を見せることから(韓国のドラマ撮影のスケジュールは総じて過密なので、そっちを何とかせいや、と私は思っていたけど)「やる気がない」などとf(x)のファンにまで叩かれていた。独特なファッションスタイル、プライベートやSNSでの奔放な振舞いは保守的な韓国社会ではしばしば物議を醸し、メンヘラだの気違いだのと中傷され続けてきた。

それでも、当時の韓国女性アイドル界では主流だった男性に媚びる衣装や曲とは一線を画したビジュアルと楽曲で、アンチなんかどうでもいいわ、と思わせてくれるf(x)が大好きだったし、今でも、これからもずっと好きだ。今日はここまで書いて終わる。

#アイドル #KPOP #fx #自由のために #大切なこと #永遠の花へ

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