ヘルスケア・アセットがまた密かに人気だ、っていうけどさ

冴えない冗談言うなよ。いやまあ、ね。

ヘルスケア・アセット、要は高齢者向けの介護老人保健施設、サ高住が人気になってきているようです。答えは単純だと思っていて、賃貸住宅や物流施設におけるCap Rate、要は利回りが付いていけなくなったので、どこに利回りを求めるか、オフィスは本邦では将来的な供給増が見えてていて、一方で需要の弱含みからCash Flowの成長が中期的には厳しい、ホテルは相変わらず投資家が怖がる、商業はどうみたって厳しい、ということでヘルスケア、という感じでしょうか。なんせ、23区のええ所だと、結構強いCapが出るんですって。3%台も余裕とか。。。

個人的には2014年~2015年頃にヘルスケア・アセットをStudyした経験もあって、前向きに捉えたいな、と考える一方、その後この5年くらいの動向と社会情勢を考えると、一歩引いて考えてしまう姿勢もあり。

諸兄ご賢察の通り、本邦においては介護保険制度があり、これにお金を上納させられている一方で、高齢者になったらその恩恵を受ける(はず)、という立て付けになっています。だから後期高齢者あたりになってくると、年金や所有してた自宅を売り払って有り金集めて、子供たちがちょいちょい資金を融通しあってジイさんが亡くなった婆様が入る訳ですね。逆のケースは少数事例ですがあるっちゃある(まあ女性の方が長生きなので)。

一方で、介護施設に掛るコスト、これが税金で賄われている訳ですが、そりゃお国はこの高齢社会に伴うコスト増もあって減らしたくて減らしたくて仕方ない訳です。だからこういった施設で働くひとの給料は低い水準のままになってしまっている。というのも、受益者である高齢者and/or国(行政)は資金負担力が限定的だったりするため、"金払い"が悪い訳です。無い袖は振れぬ、という典型例ですね。

ただ、例外的に富裕層向けが利用するような施設がある訳です。ハーフセンチュリーモアがやっているような所謂超高級施設です。この辺になってくるともう億が見えるって感じ。こうしたところであれば、受益者が金を持っているので、多分色々やりようはある。

似たような話は米国のシニアリビングで、これがまた基本的に中~上の所得者が入る。段階によって、サ高住的なものから老人ホームでも要介護度が1~2位、3相当、後期みたいなのまで分かれていて、メモリーケア、と呼ばれる要は認知症患者向けのもあって。で、この介護度合いによって、1か月あたり日本円で言えば30万円台から70~80万円台までありまして。

まあ、日本と違って前払い金がないことと、高い利用料の施設になると平均1年から2年程度で「ご卒業」となるので、サ高住から始まって大体10年以内で走り去っていくことになります(卒業?どこに逝ったかは聞くのが野暮だ)。

こうした本邦の高級な介護施設や米国の介護施設の様に受益者がコスト支払うぜ!国の制度あまり関係ないぜ?ってのは、不動産ファンドの物件と相性が良い。よろしくないのは逆で、要は国の介護保険制度などにかなり影響を受ける物件、これが難しい。

本邦のシニア・リビングにおいては、基本的に最も多いタイプは、こうした一般の人向け(といってもそこそこ金を持っている前提ですが)であって、高級物件は少ない。つまり、エンド入居者から入るお家賃は国の締め付けもあり年々厳しくなっていく一方で、グロースが見込めない、当面はCash Flowは安定すれど、中長期的に成長が限定的になる、となれば、結局Cap Rateの引き下がりでしかValue Upが期待できないことになります。

この結果、2014年頃の一時期の盛り上がりは消え失せ、ヘルスケア専業リートも先細り、そして「これからはインバウンドで宿泊者増えるぜ!ヒャッホー」的なサムシングでホテルアセットへと皆さんの興味が流れていったと記憶しています。ヘルスケア?安定性はあるかもしれないけど長期でビミョー、将来的な成長?うーん?みたいな。故にメガバンクというよりも、りそなや新生BKがノンリコースローンのレンダーとしてよく見た、という記憶があります。

こうして考えると、本邦のヘルスケア・アセットにおける見方は、"本邦の社会におけるメガトレンド"に(実は)向き合ったものだった、ということが言えると思います。

メガトレンド、という点ではホテルも同じです。外貨獲得手段として、"メーカーによる輸出"だけでなくて、もう一つのエンジンとして観光、インバウンド客を増やして本邦に金を落としてもらう、という「大きな流れ」がありました。これは仮にCovid19が猛烈に吹き荒れても、本質的には変わっていないはずです。

しかし今やヘルスケアとホテルのアセットとしての位置は逆転されたかのような、そんな感じですね。でもそれで良いんでしたっけ?メガトレンド。

話が戻りますが、そもそも「メガトレンド」という呼称、これは、目先のいろんな流れや動きでなくて、もっと大きな動き、トレンドを見ていこう、という発想だったと考えています。

しかし、ホテルやヘルスケアアセットの見方の移り変わりは、ホントにメガトレンドを踏まえているのでしょうか。Covid19単体の事象が本当にメガトレンドとまで評することが出来る波を生み出すのでしょうか。

やや定性的な表現ですが、結論は「No」だと思います。

やっぱり、本邦では高齢化が進行するため「社会福祉・健康保険関連」は、Covid19関係なくコスト削減したい、但し行政や立法が攻められるのは嫌だ、ということは不変でしょう?。

また、「ホテル」というかもっと具体的に言及すると「インバウンド観光客」は、今後日本がどの分野でお金を獲得するか、という観点ではCovid19での動揺があれど今後ともホテルアセットは不可欠であると思います。

要はメガトレンドって何かな、と考えれば、仮令Covid19による動乱があっても問題の本質的に変わらないはずです。確かにCash Outによって既存ファンドでは苦しいものが多数あるとしても、それはどうやってこうした谷をしのぐか、ということであって、だから〇〇というアセットはだめなのである、とするにはいささか乱暴、というか無礼でないか?と思う次第です。

残念ではありますが、今や「残念な考え」が蔓延しています。個人的にはこうしたことを何とか突き破りたい、と思いながら今日も話は撥ねられた訳ですが。しんど。

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