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ジブンゴト化 -「主体性」の哲学、稲盛和夫を中心に 2/4

「そういう努力が一番大事なんだ」

稲盛和夫は、従業員一人ひとりが自分の仕事を「ジブンゴト化」することの重要性を常に説いていた。「ジブンゴト化」とは、会社の問題を自分自身の問題として捉え、主体的に取り組むことを意味する。

JAL再建を任された際、稲盛氏は伊丹空港を視察した。その時、カウンター勤務の若い女性社員が月2千円のコスト削減効果を発表した。金額の少なさに周囲は困惑したが、稲盛氏は「そういう努力が一番大事なんだ」と大いに褒めたという。

「ひとつひとつの金額は確かに小さいかもしれない。しかし、JALの全社員が、あなたと同じような気持ちになって知恵を出せば、その効果は絶大なものになる。あなたの発表に込められているフィロソフィに私は大変感銘を受けました」と稲盛氏は述べた。

この若い社員の行動こそ、稲盛氏が求める「ジブンゴト化」の体現だった。一人ひとりが自分の仕事に主体的に取り組み、小さな改善でも積み重ねることで、大きな成果につながると稲盛氏は考えていたのだ。

稲盛氏はこう語っている。

「自分から積極的に仕事へ向き合い、周囲に働きかけ、仕事をダイナミックに進めていける人を、私は『渦の中心で仕事をしている人』と表現しています」

「ジブンゴト化」とは、まさに「渦の中心で仕事をする」ことに他ならない。受動的に与えられた仕事をこなすのではなく、自ら仕事の中心に飛び込み、周囲を巻き込んで前に進めていく。そうした姿勢が、大きな成果を生み出すのだ。

また、稲盛氏はこうも述べている。

「『もうこれでいい』と思った瞬間から、会社の没落が始まる」

「ジブンゴト化」には、現状に満足せず、常により良いものを目指し続ける姿勢も含まれている。自分の仕事に主体的に取り組み、絶え間ない改善を続けること。それが「ジブンゴト化」の本質なのだ。

稲盛和夫の「ジブンゴト化」の哲学は、一人ひとりが自分の仕事に誇りを持ち、主体的に取り組むことの大切さを説いている。たとえ小さな改善でも、それを積み重ねることで大きな成果につながる。現状に満足せず、常により良いものを目指し続ける。そうした姿勢こそが、企業を成長へと導く原動力となるのだ。

現代人には暑苦しく感じるかもしれない。しかし、このフィロソフィは現代にも受け継がれている。その特徴が出ているのが楽天の三木谷氏やファーストリテイリングの柳井氏だろう。

何の理想も信念もなく、ただひたすら企業のために身を捧げるという時代はすでに過去のものになった

仕事はいつも血湧き肉躍るスリリングなものとは限らない。毎日毎日、退屈な仕事をしなければならないこともある。それを会社や上司のせいにして、手を抜いたり、いい加減な仕事をしてしまったら、自分が損をするだけだ。限りある自分の時間をドブに捨てるということだからだ。

「こうしたほうがいい」でなく、「こういうことができる」と実例をもってこそ世の中を動かせる

経営者意識を持って自分の仕事に取り組めば、見える世界が違ってくる。ビジネスを見渡す視点が高くなるのだ。
三木谷浩史

サラリーマンではなく、自分自身で考え行動する自律・自立型の社員(ビジネスマン)を会社内で育成しなければ会社は成長しない。

これから問われるのは、自分の頭で判断して、決めること。周りの空気、隣の人の行動に左右されるなんてことは情けないことだ。

人の言うことを聞いて、疑いもなく作業する人はいらない。何が一番最適なのか、自分がやるべき仕事が全体から見てどうなのかを考えてもらう
柳井正

しかしながら、言われたことを素直にやり余計なもめ事を持ち込まない部下を好むマネージャー役が多いのもたしかだろう。この点はリクルートの江副氏も感じていたようだ。

我社は永遠の発展を願っているが、それは後継者たちの力のいかんにかかっている。後継者の育成も、マネージャーの大切な仕事である。自分が脅威を感じるほどの部下を持つマネージャーは幸せである。
江副浩正


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