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2021年5月ブックカバーチャレンジ1日目『THE TASTE OF WAR』

『THE TASTE OF WAR』

私が監査役として係わっているシンクタンク系NPO法人つながりのラテン系言語に明るい友人から「7日間ブックカバーチャレンジ」というチェーンメールがやってきた。1日一冊。まるで1日一膳・・いや・・一善みたいな、こんな本はどうですかとやってもみましょうか。
 さて栄えある1冊目は外国語に堪能なバトンを渡してきた友人に是非ともお勧めの本を。LIZZIE COLLINGHAM(リジー・コリンガム)著『THE TASTE OF WAR』という第二次大戦中のイギリス、アメリカ、ドイツ、ソビエト、日本の武器としての食料という切り口で実際の食べ物についてか書かれた珍しいテーマの本。著者はケンブリッジ大学で博士号を所得した歴史学者で、ワークィック大学で教鞭を取り、ジーザスカレッジケンブリッジでリサーチフェローを務めた後にライターとして独立している。
 この本との巡り合いは全くの別の話で、アメリカが第二次大戦中、食肉加工工場や精肉店、そして一般家庭からも廃棄される脂肪を回収して火薬の原料となるグリセリンを作っていた「脂肪サルベージプログラム」というのが1942年8月から1948年1月まで実施し、家庭から毎月平均1000万ポンド、期間中合計1億1400万ポンドの脂肪を回収したとアメリカ農務省のアーカイブにある「脂肪サルベージプログラム」の最終報告書にあった。しかし農務省のタイプミスだらけの報告書に一般家庭の事情やサルベージプログラムの実務については細かくは書かれていない。そこでずっと探していたらこの本に突き当たった訳です。
 この本の面白いのは実際の料理について述べている点です。著者の関心は最終的に「何を食べていたのか」なので、近著は英国の料理の歴史本を出版している。
 この中でナチ究極の食べ物としてキャセロールと共に上げられている食べ物が “Eintpof”アイントポフというもので簡単に言って牛や豚の内蔵と野菜のごった煮でドイツでは古くからある田舎料理の一つ。アイントポフは食材の費用が少なくて済む。すると食費が節約できる。節約した食費を慈善団体に寄付してもらえば冬の厳しいドイツで役に立つ。そんな三段論法から第三帝国政府は1933年9月13日、毎月第一日曜日を “Eintpof Sunday” アイントポフの日曜日とし、街のレストランから一般家庭まで等しくアイントポフを食し、浮いた食費0.5ライヒマルク(=50ペニヒ銭1枚)を市町村役場の役人が回収して回る政策が実施された話があります。そんな家庭から50ペニヒ銭1枚回収するより国家予算当てればいいじゃんって、今の日本でも似たような事、ありますよね。ちなみに1933年のドイツは干ばつと冷夏で農業生産が大打撃の年で不足する食料を輸入する為に国家予算が厳しかったという事情もありましたが。

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