寒空のセミ

私のいる地方は最近とても涼しい。
半袖だけでいると寒いくらいだ。
夏なのに涼しくて本当に夏なのかいと思いたくなるが、猛暑日に比べると過ごしやすくて本当に助かっている。

寒いくらいの日でも、夏なのでセミは変わらず元気に鳴いているように聞こえる。
でも、せっかく鳴いているのにこんな寒い日で気の毒だなとも感じる。

セミも本当は茹だるような暑さの中で、
地面から上がる熱気で視界が揺らぐような陽の中で、汗だくの青年がアイスでも食べているような日に鳴きたかったのではないかと思ってしまう。

それでも例年と変わらず鳴くセミは健気だなぁと思う。

太宰治の「冬の花火」を読んだからだろうか、
何もかも、つまらない、間の抜けた冬の花火のように感じて、どうにも夏の花火のような幸福は、もう永遠に来ないのではないか、という感じがずっとあって。
もう、あの日々のような幸福は来ないのかしら。
みんなで集まって、縁日の音楽がかかって、
好きな食べ物片手に、隣に大切な人がいるような日々は。