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兄と弟(再始動)
先日、兄の百箇日を終えた。
今回は家族だけが集まり、今年最後の法要となった。
皆が日々の生活に戻り、故人を想うこともほとんど無くなっていった。
遺品整理もあらかた終わり、しばらくはこの家に来ることも無いだろうから、私も何か兄の “形見分け” が欲しいと申し出たところ、義姉が「オートバイは昇さんが乗ってくれればいいよ。」と言ってくれた。
百箇日とは
故人が逝去してから100日目に執りおこなう法要のこと。大切な人を失った悲しみや苦しみに別れを告げ、前に進むための大切な儀式と捉えられている。
もうオートバイに乗ることは無いだろうと考えていたが、兄の形見となれば、是非とも引き継ぎがねばならない。
兄が乗っていたYAMAHAのSRは、今どき珍しいキックペダル式で、エンジンを始動させるには、乗り手を選ぶオートバイだ。
しかも私は、右膝のじん帯を傷めているので、下手をすると脱臼を起こしかねない。エンジンを掛けるだけでも、真剣勝負だ。
まずはイグニッションをON、デコンプレバーを引き、ピストンの上死点を探る。
そして、右脚に全体重を掛け、一気にキックペダルを蹴り下ろす。
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「ドゥルルン!」
Wild Horse のお目覚めだ。
おもむろにヘルメットを被り、グラブを身につける。
ほか、ジャケットやブーツなど、全て譲り受けたものだ。
「さあ兄貴、今日は天気がいいから、富士山でも一周して見ようか。」
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スタートからトップギアまで、一気にシフトアップ。4,000回転まで引っ張れば、90kmを超える駿馬だ。
道すがら、
一人、富士を眺めて、想いを巡らせた。
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今回の人生、兄はどこまで辿り着き、どこまで辿り着けなかったのだろう。
そして、これから自分は、どこへ奔っていくのだろう...
そう、
いま再び、“兄と弟” の旅が始まったのだ。