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神さまの噺

人は勝手だ

憤って声を上げると、そうだな、と彼は笑った。


だが、神も勝手だ


生きとし生けるものは皆、

それぞれに勝手で

我が儘に生きるものだ



── 龍の背の上で、彼は穏やかに笑っていた。




人が神を模しているのか、

その逆なのかはもはや分からぬ


神は確かに遥か先に存在していたが、

それに名を与え、力を与えたのは

間違いなく人間達であった


だから、

人は勝手だ。


故に、

神も勝手なのだろうよ。



我らは人と共に在り、

人もまた、我らと共に在るのだから。



人が滅ぶ時が我ら神が滅ぶ時であり、

神が滅ぶ時がまた、人も滅ぶ時であろうよ




人が言い伝え、人が仰ぐから信仰というのだ

神はそれの通りの存在になっていく


栄枯盛衰、盛者必衰……

人も山も季節が移り変わるように、

神とて変わっていくのが道理であろう


命あるものは限りがあるからこそ美しく、

それ故にまた愛おしい


そう……わたしはね、

ただ、たまらなく人が愛おしい

愚かで小さく拙い人が、ただただ愛おしい

──それだけなのだよ

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