価値と評価 2

名古屋での打ち合わせの帰りに, たしか大須に古着屋がたくさんあったなと思い出して立ち寄った. 今また古着が流行っているので, 若い子が行きそうなポップな感じのお店も多くてごちゃっとした古着の街という雰囲気は昔のままだったが, どのお店に行ったらいいか分からないので, 検索しながらいくつかのお店をまわってみた.

そもそも何か探しているものがあるわけではなかったけど, たまたま入ったお店の古着をみているときにグッとくるものがあった. それは, 昔のアーミーが着ていた1世紀近く前のいい感じにやれたジャケットで, もの自体に言い知れぬ雰囲気があって骨董品をみているようだった.
で, 値札を見たら, あらやだ こんなにするのね..そりゃそうだよね, こんなに古くてかっこいいんだもんね. と, とりあえずその時は, そんな骨董品みたいなのじゃない古着(軍パンなど)をいくつか買って帰った.

で, 買ったことは忘れて(良くあるパターン),,袋に入れたまましばらく放置していたのだが, その後たまたま映画We Margielaの話を友人としているとき, ふと, そういえば昔のマルジェラのショーで有りものの軍パンをモデルに履かせてたっていう話があったなと思って調べてみた. そうしたら, あらびっくり, 昔の既製服の縫製の良さをみせるために, フランス軍の昔のパンツを裏返して履かせていたらしい. さすが敬愛するマルジェラ,  これぞアンチモード, まさに価値転倒じゃないですか!
というあたりで, 急激に自分の中で民藝と古着が重なってみえてきた.

それから, 古着を手持ちのデザイナー服と合わせて着るようにはなったけど, 古着に対する熱がそこですぐにスパークするわけでもなく, ぶすぶすとくすぶっている感じでまた数ヶ月が過ぎ,,

仲良しのtortoago(https://tortoago.net/)大久航さんと話しているときに, 最近古着に興味があるんですよって話してたら, 航さんから,
"オレもうここ10年近く, 下着以外で新品の服を買ったことがない"
って強烈なパンチラインが飛び出したので,
えっ!!そんなに古着の方だとは知りませんでした! 今度一緒に古着を見に行ってくれませんか. とお願いした.

後日, 高円寺を一緒にまわっていただいた. しかも, 単にぶらぶらするのではなくて, 星の数ほどあるお店の物量に圧倒されてビギナーが溺れないように, そして私が気に入りそうなものを過不足なく見られるようにと, 航さんが下見した上で決めてくださったコースだったこともあって, 古着の様相がスムースかつ大量に流れ込んできて, 後半は脳が完全にぱっかーんとなってしまった. 何だこれはヤバい!と.
航さんありがとうございました!最初に手取り足取り教えてくださる方の存在は大きいなと改めて思った.

結局のところ, 私が好きな古いミリタリー系のものって, 当時なりの機能性とかコストからできているので, 民藝と一緒でケレン味が無くて, デザイナーの押し付けがましさといったものが感じられない. 呪力がない伏黒甚爾みたいなものか. 違うか.
(好きなデザイナーの押し付けは大歓迎だけど.)
それでいて素材やディテールのマニアックな話もあるし,  価値転倒的な本質論もあるし, そもそも探しているものが見つかるのかといった一期一会の部分もあるし, 何よりもいいものはものとしてかっこいい. 言い出したらキリが無いが, まあ要はわかりやすく沼にハマってしまった.. 

それからというもの, 会う人会う人に古着の面白さを話していたら, 一緒に好きになってくれた人もいて, 分かち合う楽しさもでてきた.
とはいえ, ボロボロなものだと仕事上支障があるし, カジュアルすぎるものも好きではないので, なるべくきれいに着たいとは思っている. この12月も航さんや仲間と古着を見に行きながらあれこれ話すのが楽しみだ.

今度は古着の話になりすぎた, 価値と評価に話を戻したい.
つづきは次の機会に

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