大阪青年会議所 初代理事長 挨拶文

挨   拶             
                   初代理事長 徳 永 博太郎


 萬象は歴史を背景として、始めて生起するものであります。
 戦後、吾人の周辺は何よりも先ず「国際世界性」を以て彩られました。他方そこに於て、国家社会の要請して止まざるものは「青年の自覚と奮起」である、と申し得るでありませう。
 「青年会議所」は斯くして此処に生誕しました。同時にその使命と意義も亦此処に存するのであります。

 「青年会議所」は今より三十五年前一九一五年十月、米国セントルイス市に於て孤々の声を擧げました。而もこの世界的な大問題を遂行する運動が、無名の一青年によって考へ出されたことは、この運動に一層の光彩を添へているのであります。爾来この運動は急速に発展して、現在四十四ヶ國に及び、特に米國に於ては、各州各都市に約一、八○○の地方団体を有し、その会員総数は約十八万を算するに至りました。
 我國に於ては、一般に青年層がかかる団体の設立に比較的無関心であり、且打続く戦争のために今日迄全く空白の状態にあったことは、遺憾の極みでありました。然る処、昨年九月東京に東京青年会議所が創立されて以来、今日迄十指に余る青年会議所が各地に設立せられ、我大阪に於ても去る三月二十五日「大阪青年会議所」が発会式を挙行し、あげて以て世界の列に伍するに至ったことは、誠に喜びに堪えない次第であります。
 青年会議所は、第一に会員相互の啓発陶冶、第二に社会への奉仕、第三に全世界青年層との連繋による国際親善世界平和の確立、この三つをその目的とし使命として標榜するものであります。吾々は青年としての意気と友情を確信して、この目的達成に努力せんとするのでありますが、それには先ず自らが経験浅き青年であることをかへりみ、飽く迄も謙虚であるべく、徒に表面的な華々しい業績を求めることなく、着実に只管自己の錬成充実に重きを置かなければならないと考へます。
 他方に於て、この使命達成の為には、廣く社会全般の人々の理解と支持を必要とし、亦あらゆる層の有志有能なる青年諸氏の積極的参加を不可欠の事と致します。その意味に於て、青年会議所の意義に対する確信を何人にも臆すことなく此処に宣明致すと共に、熱意ある同志の人々のご入会を衷心から願ってやみません。 青年会議所は、他の経済団体と異なり、その会員の属する企業や日常の業務には直接関係なく、会員相互の人格的錬成を目的とする故に、会員の一人一人が互に相互の人格を尊重しつつ、本当に一体となって力を併せその運営に努力することか何よりも肝要であります。然らずして何うして強固な同志的結合や、輝かしい成果が期待し得るでせうか。
 今日我國の事情は如何なる意味に於ても多事多難であり、百年の大計はまさしく現在の障壁を打破ることから始められねばなりません。この時、吾々青年の責任の重且大であること、何人も均しく認める処でありませう。ましていはんや鵬志ある吾等、押へ難い情熱のささめきの自ずと沸き出るを、ひたひたと感ずるものであります。
 前途たとへ如何なる障害があろうとも、七難を敢て天に祈り、自からの大成を期する精神を以て、莉棘の道を力強く邁進したいものであります。
                       (1950/8/1記)

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