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【世紀の一戦】井上尚弥vsルイス・ネリを熱くロジカルに語る

どうも、僕です。
実はボクシング観戦が好きなのですが、この試合は大変素晴らしかったですね。

ネリ選手も素晴らしかったが、
とにかく井上選手が圧倒していた。

6R1分22秒TKOという結果以上に圧倒的な内容でしたね。
この凄さをどうしても誰かとシェアしたかったので、書いてみました。
今回は、ラウンドごとに段落を作って書いてみたいと思います。
この記事に関しては、一度フルで観戦してから読むのがおすすめです。
自由なんですけどね。

ロジカルに、と言っても僕は観戦するのが好きなだけなので
ボクシングをやっている人や、本気で研究している人からすると鼻で笑うレベルの解説だと思う。
しかし、初心者の方やそこまで理論付けて観ていない人には丁度いいレベルの解説かなと自負はしている。

もちろん、あくまで100%僕の解釈なので合っているわけではないという点も抑えておいていただきたい。

1R

試合開始前から
「井上尚弥さん、気合い入り過ぎてね?」
と思っていた。

ましてや相手はあのルイス・ネリ。
どうせ圧勝するだろうとは思いつつ、不穏なところは感じていた。
そして2発目に繰り出した大振りの右を見ても、不安はまた募った。

そして、その不安は見事に的中した。

ネリの左フックが井上チャンピオンの顎を捉え、まさかの初ダウン。
井上選手のダウンシーンなんて何年も前のバラエティでち◯こを打たれた時にしか見たことがないし、リング上では見ないものだと思っていた。

後から映像を見返したら、このネリの左フックは完全に死角から放たれた実に上手くて良いパンチだった。
おそらく、井上選手の視点ではギリギリまでネリの体に隠れていて見えていなかっただろう。

※ボクシングの道理として、見えないパンチによるダメージは見えるパンチよりも大きくなる。自分が見えているところから殴られるのと、見えていないところから殴られるのではどちらが痛そうか想像していただければわかると思う。

プロ初ダウン、相手は悪童ネリ。
最悪の結末が具体性を帯びた。

このダウンも結局井上尚弥の未知の強さを呼び出しただけだった。

どちらかといえばタイミングで倒されたので、残り続けるダメージはなかったと思う。
しかし、このラウンド中は僅かにふらついているように見えたし、どうなるのか怖いところではあった。
このラウンドでロープに詰められて連打を浴びれば、一気に試合を止められる恐れがある。

が、ここからがすごい。
少し効いているはずなのに残りの約1分間は一発もパンチを食らっていない。
どころか、カウンター(※)まで合わせている。
普通にあの状況で出来る芸当ではない。

正直、後でこのラウンドを見返した時はもはや凄すぎてドン引きした。

※カウンター:相手がパンチを打っているタイミングで当てるパンチ。相手の意識が防御より攻撃に向いているタイミングなので、ダメージが入りやすい。もちろん打つリスクは大きいしタイミングも難しい。

2R

このラウンドは、とにかくすごかった。
僕がボクシング選手なら、一番参考にしたいのはこのラウンドだったかもしれない。

このラウンドの井上選手は、少し違った動きを見せていた。
1Rで左フックをもらった位置に右拳をピタッと付けてガードしていた。
ここから見える意図は、「さっき見えなかった左フックをまずはガードして見切ろう」ということだと思う。

実際、安全に離れた距離以外でほとんどこの右拳は外していないし
右でパンチを繰り出す回数も、このラウンドは少なかったように思う。

まずは、距離感を作り直す作業。
いかに相手の射程とパンチの軌道を読み、自分だけが優位に立てるポジションを見つけるか。
そのために相手のパンチを見て、自分のパンチで距離を測り、その場所を見つける。

そして、このラウンドは攻撃2、守り8くらいの意識だったと思うが攻める時は攻める。
1Rのようなフックを貰わないように、右拳でガードもしくは打ち終わりはしっかりと距離を取る。
じわじわとフックをかわす制度が上がる。
大きく避ける、次は右手で受け止める、紙一重で空振りさせる…。
空振りさせるときの動きも、徐々に最低限になっていく。

誰もが理想とする序盤の試合運びだと思う。

しかし、仮に僕が世界チャンピオンクラスのボクサーだとしても
参考にできるのもここまでだと思う。(違ったら世界チャンピオンクラスの方本当に本当にごめんなさい。)

2Rで取ったダウン。
咄嗟にネリの打ち終わりに被せたパンチだと思うが、あれは意味がわかりません。笑
もう、長年に渡る井上選手の鍛錬の賜物だと思う。
努力に勝る天才なし、としか言えない。

ちなみにネリが打ち終わりに被せられたパンチとは「左フック」だ。
つまり、1Rではクリーンヒットしていた左フックを2Rの終盤にはよけてすぐ殴れるくらいにまで見切っていたということになる。

3R

ここのラウンドからは、井上選手が攻めのウエイトを増やしていく。
距離を取りたがるネリに対して、ガンガン距離を詰める。
比較的避けづらいボディからのコンビネーションを中心に攻める。

ボディを打たれると顔のガードが空く。
そうすると、顔に右ストレートが飛んでくる。

そして、1Rにダウンを取ったネリの頭への左フックは
このラウンドの終盤から試合が終わるまで、ほぼ全て空を切ることになる。

もう、何も起こらない。

リアルタイムで、そう確信した。

4R

ほとんどの武器を見切られたネリにも、唯一薄い勝ち筋があった。
それは、距離を潰すこと。
距離を潰せば避ける選択肢は消え、ガードでしかパンチを受けられない。

距離を潰した上で、パンチの打ち合いに勝てることが前提だが。

しかし井上チャンピオンとの距離は縮まらない。
速く予測できない動きで、常に井上チャンピオンの距離で戦い、打たれ続ける。

チャンピオンは頭をガードすればボディに、ガードが下がれば顔面にえげつないパンチをぶち込む。
この階級ではまず聞けない鈍い打撃音が、何度も聞こえる。

5R

4Rと同じようにネリのパンチが空を切り、井上選手のパンチが当たり続けるシーンが続く。
そして、打撃音が東京ドームに響き続ける。

槍一本で戦う陸上の兵士に向かって、戦闘機が一方的に空爆をし続けているかのような、井上選手の試合では見慣れた展開だ。

そしてこのラウンドで、井上選手のプロフェッショナルを感じたシーンがある。
バッティング(頭と頭が当たること、故意なら反則)をレフェリーに抗議し、観客にブーイングを煽る行為だ。※もちろんネリは故意ではないはず。

ネリの唯一の勝ち筋は、頭を止めて打ち合うこと。
その勝ち筋をルールの中で叩き潰した。
恐らくそんな意図はなかっただろうが、"悪童"ネリをある意味で終わらせた瞬間だったかもしれない。

そして、蓄積されたダメージなのか
ネリが再び膝をつく。

6R

ここまで来たら、井上チャンピオンには2つの選択肢があった。
1つは、足を使って自分だけがパンチを当てられるポジションからじわじわと弱らせて終盤でKOすること。
もう1つは、足を止めてネリの望む近距離での打ち合いに応じ、すぐにKOすること。

普通は1つめを取るはず。
負けようがない展開で、わざわざ危険を冒す必要はないのだから。

だがチャンピオンが選んだのは、、、、後者。

近い距離でも、チャンピオンのパンチだけが相手を捉え続ける。
打ち負けたネリはロープ際に後退し、最後はロープに弾き飛ばされて倒される。

最後の右ストレートはガチで射殺シーンかと思った。
あれだけ画面に釘付けになっていたのに、映画のグロシーンのときのように「うっ…」と言って目を背けた。
それだけ衝撃的なKOだった。

まとめ

ネリ選手ナイスファイト、リスペクトします。
井上チャンピオン強すぎです、尊敬を通り越してキモいと思ってます。

ボクシングは
ただの殴り合いじゃなくパンチを当てるため、当たらないための高度な駆け引きを通じた芸術です。

そして、多くても3ヶ月に一度の試合のために練習して減量して
負ければその全てがほとんど無駄になる。
勝てば勝つほど1つの負けが重くなる。
日本史上最高傑作と言われる井上尚弥さんに至っては、負ければ日本中のボクシング熱を冷ましかねないだろう。

それほど1つ1つが重いからこそ、1試合が非常にスリリングで素晴らしいものになる。

それゆえにとても面白いので、ボクシング観てみてください。
僕もこの試合をきっかけに、また色んな試合を観てみようと思いました。

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