プーと大人になった僕

ここ数年、続いているディズニーアニメーションの実写作品。今回は「くまのプーさん」が題材。予告編を初めて見た時は、プーさんのビジュアルが「んん?」って感じだったんだけど、いろいろな予告編を見る中で、プーさん含め、他の100エーカーの森達の動物が可愛く見えてきて…。去年の美女と野獣もとってもよかったので、映画館に見に行く事に。

もともと、プーさんは小さい頃繰り返し繰り返し観たアニメ映画のひとつ。家にたくさんプーさん関連のビデオがあったし、生活の中にプーさんのグッズもたくさんあって、身近で大好きなキャラクターだった。中でも「プーさんとはちみつ」は本当に何回見たのかわからないくらいに観た。「プーさんとはちみつ」に出てくるシーンや歌のひとつひとつが脳内に刷り込まれてる、といえば大げさかもしれないけど、そんなレベルで観ていた。今でもプーさんは好きなキャラクターのひとつだし、ディズニーランドのアトラクションでもプーさんのハニーハントが一番好き。なので、期待半分、不安半分で映画館まで観に行きました。

ディズニー映画といえば冒頭のシンデレラ城のロゴが定番だけど、今回はいつものCGのシンデレラ城から次第にセピア色の絵本のようなシンデレラ城に変化していって、そこから一気にプーさんの世界観に引きずり込まれていった。この一瞬で気持ちをぎゅっと掴まれたような気がして、それだけでもすっごくワクワクしたし、絶対この映画は良い映画!って確信したな。100分間くらいの映画で、2/3は泣いていたような気がするんだけど、全然上手く文章に出来ないからとりあえず思いつくままトピックで書いて行く。

♦︎100エーカーの森の仲間達が可愛すぎた。
みんなアニメのままだった。アニメのまま実写化されていた。ピグレットもイーヨーもティガーもカンガとルーも。アニメのままっていうのは語弊があるかもしれないけど、二次元だったものが三次元になって(もとはクリストファー・ロビンが所有するぬいぐるみだという前提知識がある上で)「ああ、きっと、このキャラクターっていうのはこういう質感のぬいぐるみなんだろうなあ…」と素直に受け止めることができた。そして三次元になっても、動きはアニメーションそのままで、見ていて違和感がなかった。ほんとすごい…。あ、でも、ラビットが動物だったのだけが違和感だけど、原作じゃあぬいぐるみじゃなくて、動物らしい。ふーん。。。
そして、ぬいぐるみのプーがはちみつを食べるとああなるよね!!ですよね!!みたいなのが表現されていて笑えた。冒頭のシーンではちみつむしゃむしゃ食べてて、「うわあ、べとべとじゃん…」って思ってちょっと萎えてたら、その後の現代の場面ではちみつ食べてべとべとでうわあ…みたいなシーンがちゃんと用意されてて、観る側と物語側のギャップがなくてよかった。

♦︎アニメをきっちり踏襲してくれていた。
まず、プーさんのパジャマ姿。あの帽子姿がなんとも言えず可愛い…。そして歌も、有名なあのテーマ曲はもちろん、お腹をすかせる体操の歌やティガーの歌が出てきてテンションあがった…!あそこで「俺様はティガー♪」ってくるのかーってにやにやしちゃった。そして、100エーカーの森の風景の数々。みんなの家、橋、滝(滝があんなに浅いだなんて…!)、あの穴の空いた倒木。全部がそのままで、100エーカーの森ってほんとにあるような気がしちゃう。でもね、風船が赤いのだけはなんで???ってずっと思ってた。風船は水色であってほしかったな…。笑

♦︎泣けるストーリーだった。
泣けるって言ったら軽い感じがするのなんででしょうね。この映画を見た時の気持ちって、はじめてトイストーリー3を見たときの気持ちに似てるなって思うんだけど。幼い頃に大好きだったもの、大事だったもの、でも、それがいつしか無意識的に大事じゃなくなっていっていて、その存在すらも忘れていて、でも、本当はずっとずっと大事で…っていうそういうお話にわたしは弱い。それが、しかもプーさんだからなお自分の幼少期がリアルにフラッシュバックするんだろうなあ。
トイストーリーとの大きな違いは、トイストーリーはおもちゃ側からの視点の話なんだけど、今回の映画はクリストファー・ロビン側の話なんだよね。タイトルもさ、邦題は「プーと―大人になった僕」なんだけど、本当のタイトルは「クリストファー・ロビン」で。そう、これはクリストファー・ロビンの物語なんだよ。クリストファー・ロビンが自分を取り戻す話だって、わたしは観てて思ったな。日々の仕事に忙殺されるクリストファー・ロビンにはアニメの面影はないし、なんかいつもカリカリしてるし、ぱっと見はただの老け込んだ働くおじさん。このビジュアルも最初、わたしの慣れ親しんだクリストファー・ロビンだと思って観られるか不安で、うーん…って感じだった。物語の序盤でも、クリストファー・ロビンはプーにすごく冷たくあたるし、迷惑そうにするし、なんかそのシーンも見てて寂しくて。ああ、こんなふうになってしまうんだなあって。でも、「プーのおばかさん」って優しく言ったり、なんだかんだプーのことを見捨てなかったりして、うああ…そうだよね…ってなった。語彙力たりない。そして、物語が進んでいって、プーや100エーカーの森の動物たちと触れ合っている姿を観ているうちに、だんだんとクリストファー・ロビンだなあって思えるようになった。そうそう、アニメでもこうだったよなあって。いつもみんなの味方で、頼りになって、しっかりもので、優しくて。自然と、あのクリストファー・ロビンが大人になってこうなったんだなあって思えるようになったからすごい。きっと、物語を通して、クリストファー・ロビンがクリストファー・ロビンらしさを取り戻したんじゃないかなって。
あと、プーに冷たくあたるっていう部分では、物語の中盤でクリストファー・ロビンがプーに「(プーのことは)捨てたんだ」って言ったり「君は本当に頭が足りない!」ってキツく怒鳴ったり、プーのことを拒絶して接するシーンがあって。そこで、プーが「ほんとにごめんね。僕考えるのが苦手で」って謝ってさ。見ててめちゃくちゃ苦しくて、寂しくて、悲しくて、胸がぎゅうううってなった。今でもあのシーン思い出すと涙出そうになるんだけど。いったいこの気持ちはなんなんだろう。プーに感情移入したからなのかなって最初は考えて、もちろんその気持ちもあるんだけど、でも、自分も無意識のうちに大切だった物を大事にできなくなって、捨てたつもりないけど実質そうなってしまっているなって思って悲しくなったって感じかなあ。別にはっきりと「もういらない」って拒絶してきたわけじゃないんだけど、無意識でそうしてることって人生の中でたくさんあるよなあって思って、なんで大事にし続けられないんだろうって寂しくなった、のかな。うまく整理がつかないけど。ちゃんと一個一個、大事にできたらいいのになあ。ね。したいよね。

♦︎物語の構成が好き。
プーさんと大人になったクリストファー・ロビンの物語をどう組み立てるのかなって思ってたけど、原作の最終章のシーンを上手く軸にして展開していたので、なるほど…!と関心した。「何もしないをする」っていう原作のエピソードを上手くスパイスとして組み込んで物語を構成しているのが素晴らしい。くまのプーさん完全版を見ていなかった事だけが悔やまれる…。この「何もしないをする」っていうことが最近よくSNSでプーさんの名言だ、哲学だ、みたいに言われているけど、これは原作の最終章で交わしたクリストファー・ロビンとプーの約束なんだよね。そこから引っ張ってきてるのがセンスあると思う。あと、プーさんの世界では、やっぱり悪はズオウとヒイタチなんだよね。基本的に100エーカーの森の中には悪者はいなくて、トラブルメーカーはたくさんいるけど、でもみんな友達。その中で、想像のズオウとヒイタチだけが恐怖の存在としてみんなの中にあって。今回の実写でも、やっぱり悪者の象徴はズオウとヒイタチなんだなあ、と。そして、最後の落としどころもわたしは好きだった。この原作インスパイアの二つの軸があるからこそ、実写版だとしても、”大人になった僕”であっても、ちゃんとストーリーはプーさん的なものが出来上がっていて、プーさんがもともと好きな人でもちゃんと安心して楽しめるストーリーだった。むしろ、プーさんのことをよく知らない人が見たら多分楽しさ半減な映画。知らなくてももちろんわかるんだけどね。

有名アニメのリメイクでここまで満足できるものが作れるって純粋にすごいと思う。ディズニーの製作チームの作品への熱量や愛情や原作へのリスペクト精神、ほんとうにほんとうにいつも恐れ入ります。日本もよく漫画やアニメを実写化しているけど、実写化するならやっぱりこういう制作者の熱い気持ちを感じられるものを作ってほしいよなあああ。そして、この作品のマーク・フォースター監督の作風がもしかしたら好きなのかもしれないな。昔観た「ネバーランド」もとてもよかった記憶がある。監督繋がりで作品を辿っていくっていうのもやってみたいな。

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