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高橋克彦作品紹介(「鬼」シリーズ)

 私が陰陽師という職業を知ったのは、中二病まっさかりの頃。漫画のキャラクターがきっかけで、その後は主に小説で架空・実在問わず陰陽師について知りました。
 歴史上に記録の残る陰陽師の中では、やはり安倍晴明がすごいなぁと思っていましたが、高橋克彦氏の短編集「鬼」を読んだら、私の中の陰陽師界のセンターは入れ替わりました。

 「鬼」では安倍晴明の他、滋丘川人、弓削是雄といった陰陽師が各話の主人公となって、鬼にまつわる怪異に対応する様子が描かれます。
 中でも弓削是雄のカッコよさは群を抜いています。
 師匠の滋丘川人への敬意、鬼と対峙することへの献身の決意、術の冴え、術に頼り切らない探偵力、どれをとってもカッコいい!
 是雄を主人公とするシリーズが「白妖鬼」「長人鬼」「空中鬼」「妄執鬼」と続いていくにつれ、脇を固めるキャラクターも増えるのですが、こちらもまた魅力的。
 まつろわぬ民の剣の使い手・芙蓉、蝦夷の少年・淡麻呂、死後に骨が苦痛を受け鬼となった髑髏鬼もいい味を出しています。

 高橋克彦氏の作品の多くには、知的で冷静な探偵役と、多少口が悪くても芯の一本通った、ある意味素直な助手役を担うキャラクターが登場します。髑髏鬼は後者のタイプで、頭蓋骨と舌しか残っていないという造形のインパクトだけに留まらず、酒が欲しいといった欲望も感情も正直に訴えてきます。ストイックで時として視野が狭くなる是雄の肩をぽんと叩いて目を開かせてくれる、そんな美味しい役回りです。
 人も人ならざるものも生き生きと描かれる「鬼」シリーズ。人間の業の深さも感じますが、大好きな作品です。

 とにかく。
 高橋克彦作品は面白いのです。

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