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『夏の憂鬱』(L'Arc〜en〜Cielの楽曲をひたすら語っていくシリーズ)

続いては『heavenly』7曲目、『夏の憂鬱』です。
これはTHE歌謡曲!といったテイストの曲ですよね。
前作『Tierra』でいうと『風の行方』と同じような立ち位置でしょうか。
ただ、その2曲を比較すると『夏の憂鬱』の方が歌謡曲的要素を濃く感じるような気がします。
ご存知の通り、この曲は後にリアレンジされてシングル曲として再登場します。
そちらのシングル版はまた別の機会に取り上げるつもりです。
まずはアルバム収録のバージョンについて触れていきます。

この曲も作曲はkenで、『風の行方』と同じです。
まさにkenが作る歌謡曲みを深く感じる楽曲の代表例ですよね。
この後もkenはメロディだけ見れば歌謡曲的風味の強い楽曲をいくつか作っていますが、アレンジはこの2曲と比べると歌謡曲らしくはなくなっていくような印象がありまして。
その辺りの変遷についてもまた考えてみたいと思っています。

『夏の憂鬱』といえばやっぱり歌詞。
この歌詞良いですよね。
歌詞にも歌謡曲感が込められていて、歌詞だけ往年の作詞家の先生に外注したと言われても違和感がないくらいの内容になっています。
「あぁもう行かなくちゃ秋が来るから」なんて、趣が深過ぎです。
hydeの季節をテーマにしたような歌詞はどれも味わい深くて好きなんですよ。
最たる例は『winter fall』ですよね。
季節の移り変わりと別れを描いているという意味では『夏の憂鬱』と『winter fall』のテーマは少し似ているような気もしますね。
夏から秋、冬から春ということで、描かれている季節は全く違うんですけどね。

この曲の肝は個人的にはタンバリンだと思っています。
タンバリン凄く良い仕事をしていませんか?
sakuraが演奏しているのか、他のメンバーか、はたまたタンバリン奏者の方が招かれているんでしょうか。
いずれにしても、このタンバリンが歌謡曲感に拍車をかけているように感じられます。
シャカシャカとどこか楽しげな雰囲気のある楽器ですが、この楽曲で聴くとどこか物悲しさがあるというか。
夏の夕暮れ感が出てきますよね。
ドラムはちょっと忙しない印象の前へ前へと向かっていくようなビートが印象的で、そこからは焦燥感のようなものが感じられます。

ベースは比較的シンプルなプレーに徹していて、この楽曲では黒子のポジションを担っているような印象です。
ただそんな中でもところどころで印象的なグリスを挟んで開放弦に移るような代名詞的フレーズや、ブレイクの部分でのハンマリングフレーズ等持ち味はしっかりと出しており、その辺りは流石だなと思わされました。

ギターはエレキも良いんですが、この曲はやはりアコギの音が印象深いです。
アコギがある程度の速さでストロークしていると、それはそれで夏らしさが感じられますよね。
お気に入りは終盤の方で出てくる、アコギの低音弦でペンタ的なリピートするフレーズを奏でる箇所です。
盛り上がるボーカルを下から押し支えるのに一役買っていると思います。

前述したリアレンジバージョンはライブで演奏されていますが、この旧バージョンの方は相当ご無沙汰ですよね。
たまには原曲バージョンの方もどうでしょうか?

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