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『fate』(L'Arc〜en〜Cielの楽曲をひたすら語っていくシリーズ)

『HEART』も残り3曲!
今回はアルバム8曲目の『fate』です。
『fate』も非常に人気の高い楽曲の1つですよね。
ファンからの人気が高いのはもちろんのこと、ライブで演奏される機会がアルバム曲としては多いことから、メンバーにも特別な思い入れのある楽曲だということが伺えます。
また、なんの雑誌かは忘れてしまったのですが、tetsuyaが過去にライブで演奏していて楽しい(気持ち良い?)曲としてこの『fate』を上げたこともありましたね。

筆者としても、この曲は特別な世界観を備えた楽曲だと思っています。
『HEART』の中でも、この『fate』と『LORELEY』はドイツ滞在時に楽曲の素案となるイメージを生み出したということで、どこか似た空気を感じますよね。
ただその2曲を比較すると、『LORELEY』はリズム隊の演奏に熱量を感じる一方、ギターは少し俯瞰したところから全体を捉えているイメージ。
『fate』はリズム隊の演奏に少し淡々とした無機質さが感じられる一方で、ギターは熱量を爆発させているイメージがありまして、リズム隊とギターから感じられる印象が見事に正反対なんですよね。
このあたりの捉え方は個人差ありますし、『fate』もライブ版ではバンド全体の熱量が凄まじくて圧倒されます。

『fate』のリズム隊のバランス、良いですよね‥
yukihiro、tetsuyaが二人ともこういった打ち込み的、無機質よりな演奏をしてる曲ってあまりない気がします。
パッと思いつくのは『metropolis』くらいでしょうか。
tetsuyaのベースラインはペンタを基調とした音使いで、ゆらゆらと揺れるようなフレーズを奏でていたかと思いきや、音を細かく切った歯切れの良いフレーズに展開する流れが印象的です。
ループする、打ち込みのような風味も感じられるフレーズですが、ところどころに入るグリスのニュアンスや、ペンタを外れた歌心のあるフレーズが織り交ぜられるところなど、tetsuyaらしさもしっかりと感じられる仕上がりになっています。
yukihiroのドラムは本当に淡々としていて、この無機質さの中にyukihiroの魅力を感じてしまうんですね。
これは良し悪しではなく、もしsakuraが『fate』のドラムをこの時期に叩いていたとしたら、フィジカルな要素がもう少し表に出た演奏をしていただろうなと想像してしまいます。
『fate』の世界観はyukihiroのこのドラムで成り立っているようにも感じられる一方で、sakuraのドラムだった場合またtetsuyaのベースラインにも変化が現れそうだな‥なんてことをつらつら考えるのは楽しい。

リズム隊がしっかりと下支えしている上で、楽曲の舵取りをしているのはkenのギターです。
イントロの霧を切り裂いていくようなリード、Aメロの警告音的なサウンド、Bメロの叙情的音使いのアルペジオ、サビの熱いパワーコードの刻みと、この曲に関してはギターが曲の展開を司っているように強く感じます。
個人的にすごく好きなブリッジのフレーズを経て到達するギターソロでは、リードのフレーズを崩した形でのギターソロが展開されていきます。
改めて聴くと、この曲は船のイメージが強く想起されますよね。
kenもそのイメージを元に作曲したという話もあるようです。
船が進んで行く中で、ギターのサウンドがその海路の移り変わりを表現しているようで、何だか空想が進みます。

そうした空想を元に歌詞を解釈すると、船に乗って戦地に向かう兵士のことを表現しているような気がしてきます。
ただ、大志を抱いて戦地に赴くのではなく、戦いの意義に疑問を持っているかのような、迷いも多く感じられるような歌詞ですよね。
そんな歌詞を感情を乗せて表現しているボーカルはやはり素晴らしいです。
低めの音から入るAメロ、抑えていた思いが漏れ出てくるようなBメロ、感情を解き放つサビというように、徐々に開けていく歌い方にドラマ性を強く感じてしまいます。

隠れた名曲というには表に出すぎているこの曲。
この機会にぜひ聴いてみてください。


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