見出し画像

『Singin' in the Rain』(L'Arc〜en〜Cielの楽曲をひたすら語っていくシリーズ)

今回はアルバム『HEART』の三曲目、『Singin' in the Rain』です。
この曲も初めて聴いた時は驚きました。
これまでにもジャジーなテイストの楽曲はありましたが、この曲に関してはもはやジャズじゃんと。
もちろん、ジャズを愛する方からすればジャズ風の楽曲という域を出ないのかもしれませんが、素人耳にはもうジャズというジャンルに纏めてしまいたくなる楽曲です。
それくらいの異質さを感じます。
『HEART』というアルバムは割とわかりやすい直球の楽曲が多いイメージがある中で、この曲は少し浮いた存在のような印象があるんですよね。
同じくhyde作曲の『Sell My Soul』には似た要素が感じられて、この2曲が30thでは日替わりで入れ替わっていたのも然もありなんというところ。

楽曲の中でまず耳に飛び込んでくるのはkenのフィンガーピッキングによる粘っこいタイム感のフレーズです。
そもそもこういったフレーズをサラッと弾けてしまうギタリストはそれほど多くないのではないでしょうか。
kenの守備範囲の広さを如実に感じることのできる演奏ですよね。
特に耳に残るのが時折差し込まれる6連で下降してくる高速のフレーズで、比較的ゆったりとした楽曲の中でハッとさせられるような緊張感を与えてくれます。
ギターソロの湿っぽいエフェクト全開のフレーズもこの曲の雨というテーマにピッタリで素晴らしい。
ちょっと細かいところで言うと、サビのラストで表に出てくるトレモロのエフェクトのかかったギターが儚さがあって好きなんですよね。

ベースは隙間を多く使ったフレーズで、他曲におけるtetsuyaのベースラインとは一線を画した印象があるのですが、kenのギターフレーズほど典型的なジャズ感がないのが興味深いところ。
コードのルートとルートの間を半音の経過音を使って繋げていくフレーズも割と珍しいような気がします。
ベースの音色は前曲の『winter fall』と同様に比較的ウォームなトーンになっていて、この音色もジャジーな雰囲気を演出するのに貢献しているのではないでしょうか。

ドラムはこのジャジーな雰囲気の中でもyukihiroの個性が際立っているように感じられます。
この曲をもしsakuraが叩いていたらもっと後ろ乗りなジャズ的な要素てんこ盛りのフレーズが採用されていたのではないかと思うのですが、yukihiroはそういったドラミングはせず、あくまでもシャープさを保ったキレのある音で組み立てているんですよね。
この辺りはどちらが良いとか悪いとかではなく、二人のドラマーの個性であり、掛け値のない魅力だと思います。

この曲の作曲者でもあるhydeのボーカルはやや気怠い雰囲気で、雨の中で物思いに耽っている姿を連想させます。
アルバムのジャケットとも絡めて、イギリスあたりの街並みの景色を想起してしまうんですよね。
また、歌詞の世界観でいうと『the Fourth Avenue Café』ともリンクするような。

30thライブで披露された時には度肝を抜かれたこの曲。
今日のような雨の日にはまさにうってつけではないでしょうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?