【詩】言葉をゆっくり読めない
近頃は文章をゆっくり読めない
答えを直ぐに知りたいから
足早に不要な箇所は飛び越えて
立ち止まって深く考える間も無く
次から次へと情報を頭に詰め込む
足りない足りない全然足りない
時間が知識が金が能力が
たわわに実った成果だけ直ぐに欲しい
追うと言うよりは追われているような
ろくに咀嚼もせず呑み込むから味がしない
だから感動もしない
なんで読んでいるんだっけ
いつかの純粋な楽しみや感動は 勉強しなくてはという義務や強迫に変わっていないか
この知識が必要だと植え付けられては必死に貪っていないか
詩集が無駄にすら思えていないか
物語への没入が贅沢品に変わっていないか
最後に時間など気にせず夢中になったのはいつだ
読むということはお前にとってなんだ
情報でパンパンに膨らんだ頭が重く動けない
何かを訊かれれば辞書のような事実を無表情で棒読みに伝える
これじゃまるでAIじゃないか
口にする言葉は全て他人のもので 自分の思想はどこに行った
先人の知恵と対話して遊ぶ空白は 金勘定や労働のストレスに奪われてしまった
取り返せ思い出せ自由な遊びを
読むと言うことは時間と空間を超えた旅だ
持ち帰る思い出は水々しい果物を齧る喜びだ
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