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癒しのイルカ

娘の幼馴染が、千葉から鹿児島まで会いに来てくれた。
GWの真っ只中に、突然、バイト代をはたいて鹿児島までくるというには、何らかの悩みがあってのことだろうという察しはついた。

高校3年生の彼女は、これから児童福祉の道に進みたいという強い希望があり、それに向かって色んな情報を調べていた。しかし、家族をはじめ周りの大人が口を揃えて「そんな大変な仕事、あなたには無理だから、その道に進むのならば学費も出さない!」とまで言われて途方にくれていたのだそうだ。

よくよく話を聞くと、反対している誰もが児童福祉の仕事をしたことはなく、大変な仕事だと聞いたからという理由で反対しているというのだから驚いてしまった。
その夜は、溜まっていた怒りや不安、哀しみを吐き出すように、夜遅くまで話し続けた。
わたしには、話を聞くことくらいしかできなかったのだが、彼女が鹿児島で過ごす時間の中で、何かの気づきを持って帰ってくれたら嬉しいなぁと思い、とっておきの場所につれていってあげることにした。

翌朝、フェリーに乗って桜島までいき、そこからまたそのまた先の海まで向かった。
少し冷たい海風に当たりながら、彼女は、まだほんのり温かいおにぎりを頬張りつつ、海と山と青空の絶妙なコントラストに目を細めて微笑んでいた。

目的地に着いてから、
「今からイルカと泳ぎます!」と彼女に告げると、「はぁ〜マジで〜?わけわから〜ん」と笑っていたが、ウェットスーツに着替えた後は、まんざらでもない感じだった。
イルカの背びれに捕まると、彼女をスーッとエスコートして泳いでくれる。
慣れてくると、ビュンビュン早いスピードで泳いでくれて、いつのまにか、彼女からは満面の笑みが溢れていた。

「イルカと泳ぐの楽しかった?」と聞くと
「なんか、楽しくて、イルカと泳いでたら、昨日まで考えた心配とか、どうでもよくなって、先のこととかなんとかなるって思えた!大学とかいかないとやりたい仕事できないわけじゃないし、やりたいことやろうと思った!!」と話してくれた。

イルカは人の心を癒してくれると聞いたことはあるが、イルカと泳ぐ前と後での彼女の未来が、こんなにも景色がかわるとは想像もしていなかった。
これから先、きっと何をしても、大変なことはあるけれど、自分の心がワクワクすることに触れていられるのならば、大変なことさえも糧にしていけるのだろうと感じた。

彼女たちの未来が、素晴らしいものとなりますように……。また、何かあったら会いにおいでね。

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