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早春の詩 五編

春のうた

泥の季節がくる
春風が私の心に吹きすさぶとき
しづかに心の氷のはがれる音がする
ぱりぱり はらはら ぽたぽた

よろこびのうたは風の中でまぶしく響く
あぁ、新しき風!
だれも自分の居所なんてみつけられなくて
苦しみは絶えず 痛みは歩む

ひとりたちが地上へいずる
太陽を浴びて、その目が空の青さを映したとき
またひとり、季節の訪れを知って
薄桜はひらく

舞い上がる砂塵が道をふさいだ
冬の忘れものたち
天上へかえる雪を支えた彼らには
もう、かえる場所がないのだ


四月の雨

あわいゆきに うずまるあめ、にびいろのあめ
したへしたへとにげてゆくあめ
しろい吐息を思い出させる つめたいあいいろのあめ
足あとの波紋はひろく、かるく、
陽気をかかえてうごめく暗色のあめ
あかいひかりは遠くへ


やわらかに しとやかにひらく花が
だれのために咲くかなんて知ることもない
ひとつひとつ だれかのために花開くから
あなたに見とれるだろう だれもが

力強く咲けるなら好かれないかもしれない
美しさはかならず強いとは限らない
けれど強さを手に入れたならどんなに美しいか
あなたに見とれるだろう だれもが

いつか散るから今が美しいのか
永遠の美しさより今この時が大切なのか
それとも来年また咲くことを永遠と呼ぶのか
新たなつぼみに わたしは目を奪われる

今年もしづかにひらいた花が
だれにも知られず散ってゆく
そうして巡る季節のなかで
あなたに見とれるだろう だれもが


身勝手に罪を重ねた
夢の中で私たちを繋ぐただ一つの糸
罪は恋 恋多き少女は歩みを止めた
そのとき、本当に愛すべきものを知り
彼女は恋をやめた
愛は遠すぎることを知り
彼女はこれこそ愛だと信じることにした
愛することを信じること
かつて恋を重ねた分、道のりは遠い
贖罪と希望の足あと
愛こそ死


約束

あなたを信じていいですか?
まだすべてを許せないけれど
あなたの苦悩をすべては知らないけれど
わたしは、わたしの中にいるあなたのことを
信じて生きていたいのです
あなたと約束をしたことを
もう、あなたは覚えていないかもしれない
それでも 私の生きる意味たりえるのは
あなたと生きていくこと
いっときも 忘れたことはありません

あなたの蒔いた種が芽を息吹きました
それは小さく ひとりには耐えられないように見えます
あなたは大丈夫だと言ってくれますか?
わたしは心配性だから、ずっとその芽を見つめています
願っています この芽が絶えないよう
けれどいつか芽が枯れてしまって
わたしが悲しみすら忘れてしまったときに
きっとあなたはいちばんの悲しみを知って
あの時、傍にいればと思うでしょう
その後悔がわたしたちの約束だったのです

無理な金額は自重してね。貰ったお金は多分お昼ご飯になります。