記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

『かぞくのわ』感想

半年ぶりのリベンジかつ道楽息子旗揚げ公演、おめでとうございます。座組の皆様お疲れ様でした。
札幌より空を飛んで、30日夜と31日昼の回を観劇してきました。

前提
・半年前公演時に全通を決めていたほどの期待値
・諸々において当事者である
・めちゃくちゃ長くなってしまいました、約一万字です
・蟹目当ての観劇

とっちらかったので目次を設けました、当たり前ですがネタバレを含むので配信勢はなんかうまいことアレしてください。
流れを考えて感想書ける人のことを尊敬しています。



大まかな感想と『わ』

表情作品を見るのは三度目。
前々作のクド女、前作のしごむれ、そして今作。
前回が物理的な地獄ならば今回は精神的な地獄、地獄続き。なんならクド女だってある種の地獄だったな……地獄の長表情豊。閻魔様じゃん。

演者陣も表情作品の常連が多く、その点ではわくわくと楽しみが強かったです。
中身は地獄だったけどな!本当に飛行機乗ってる間もまだちょっと行きたくなかったもんね、死ぬの分かってたから。

終わったあとにタールキツめの煙草が吸いたくなる作品でした。伝わる?伝わるかなぁ、伝わってほしい。
終演後席を立つ時に足が震えすぎて危なかった、手も震えたし頭の中は考えすぎてむしろモヤがかかっていたし、とにかく圧巻の一言。
舞台演出も素晴らしくて、途中休憩ありとはいえ150分、下手したら休憩のまま駅に向かってもおかしくないのに一切の中弛みもなく最後まで作品の虜でした。
本当に150分やりました?45分とかではなく?
あっという間だったけど、あれ以上やられると本格的に心が死んでいたと思うので丁度いい長さでした。
ちなみに最初のランタイム出た時点で150分までは想定していたので、個人的には範囲内でした。伸びるよそりゃ、伝えたいこと沢山ありそうだもん。表情さん。

オープニングムービーでタイトルが崩れる時、わの字が最初に落ちていった時にゾワッとしました。わが崩れる話なんだと突きつけられました。

そんな、感想の中でも多い『わ』に当てはまる漢字はどれなのかというアレ。
僕にとっては、かぞくの環。
複雑で面倒で、色んな人をものを巻き込んで、巡り続ける。そんな環。
みんな生きてるし、いつか死ぬし。
社会からは逃れられなくて、何かに依存しながら生きている。
血縁関係があろうがなかろうが、自分を案じてくれる人間はかぞくだし、誰かを案じた時に自分は誰かのかぞくだし。
僕のかぞくは、母と猫。父、それと血の繋がらない祖父たち。


刺さる人、刺さらない人

SNSで感想を見ていても、やっぱり当事者意識のあるなしで刺さり方が違うなと。当たり前だけどね。
僕の周りでも分かれてました。
注意書きの通り、虐待サバイバー/加害者・性別違和及び類似のマイノリティ、ここら辺がメインで心が死ぬんじゃないかな。
サバイバーに関しては本当にフラッシュバックの可能性もあるので正直見て見て!とは勧められないです。
ただショック療法にはなりそうなので、カウンセリングの段階としてかぞくのわを見るというのは適切かもしれない。
僕は後者の当事者でそれに起因する持病を抱えているため、頓服薬を服用しての観劇でした。ゲロ吐きそうだった。

みんなそんなもんなんだよね、カナメが言った通り。
本当にみんなそんなもんなんです、胸張って順風満帆と言える家庭の方がレアなんです。
類は友を呼ぶっていうくらいなので、僕の周りには諸々の当事者が多くそれなりに他人の人生史を聞かされてきました。近しい人間からも、そうでない人からも。
なので自分の物語として刺さる部分と、周りのあるあるとして共感する部分共にありました。

ともあれSNS時代です、たくさんの人生が画面の中に溢れています。
自分自身の話じゃなくても、身の回りの話じゃなくても、こういうことあるよなぁと共感出来る箇所はどこかしら見つかるんじゃないでしょうか。刺さらないけど、共感は出来る。あると思う。


佐藤夫妻

オレ、ヒトミ、キライ!!!!!!!
それくらい嫌悪感が強かったです、不倫してるとかはあんまり関係なくて、なんというか、 上手く言えないんですけど、これはきっと生理的に無理ってヤツ。

至る場面で、佐藤夫妻の結婚指輪に照明が当たってキラキラ光るのがめちゃくちゃ重たかった。
これは座る位置の問題で演出的な意図はなかったと思うんだけど、31日昼回の出張明けのハジメがヒトミを誘う(連れ込む)シーン、ハジメの指輪がギラギラ光っているのに対して、ヒトミの左薬指はずっと陰っていて。偶然の産物にしては都合が良すぎるほど、対照的な存在感でした。
「愛しているが、恨めしい。だから俺は」というハジメ
「家族でいたい、惨めでも。それでも私は」と縋るヒトミ
それぞれの思いが指輪に表れているようでとても印象的でした。

結婚は人生の墓場っていうのは有名な話だけど、この2人にとってはもう、墓場なんて生ぬるいものじゃないナニかになってしまっていて。それでも互いに繋ぎ止めあっていて。
ハジメはヒトミを愛しているし、ヒトミは家族に執着している。
一見両思いみたいだけど、そんな綺麗なもんじゃない。ヒトミが欲しいのは家族。自分が自分であるための、家族が欲しいだけ。愛はあると思う、自己愛の占める割合が大きいだけで。
ハジメが欲しいのもまた、家族なんだとは思う。男の子が欲しかったと繰り返す様子は自分の中で理想の家族像がガチガチに固まっていることの表れだし、娘しか存在していない今もそれはずっと腹の底に溜まっていて、ヒトミの不倫によってそれは願いから呪いに変わって。

思えば初っ端から出てるんだよね、男の子欲しかったムーブは。
男子校時代の楽しさを語る姿は、ニアイコール息子とのじゃれ合いへの憧れ・堕ろしたヒトミへの当てつけだったんだろうな。
カナメとの会話でもそう、5時間あればなんでも出来るのくだり。
ヒトミに対しての悪意はもちろんなんだけど、そういった下ネタをあけすけに話せる間柄って娘より息子の方が築きやすいだろうから、そういった憧れが無意識に出てるのかなとも。
最後のセリフも、息子がいれば俺を止めるなり味方につくなりしてくれたのに、女しかいないせいでお前らがまとまって、俺一人が加害者になる。俺一人が除け者になる。っていう、叫びだったね。

互いが互いに依存して、憎んで、いいことなんかただの1つもないのに一緒にいて。正直気持ち悪いし、気味が悪い夫婦。僕は2人とも好きになれないけど、可哀想だと同情はする。
子はかすがい、勝手にかすがいにされた方の気持ち考えろよな。


マルチバース、ユウキ🦀

蟹〜!!!!!お前の背中を押して良かったと本当に心から思う、舞台に立つ勇気を出してくれてありがとう。
オーディションの話が上がった時、いやいやでもでもうだうだ口から泡吹いてましたけれども、僕は絶対にやるべきだと思ったからやれるだけやれと口うるさくしましたごめんね。見たかったしね、舞台の上の蟹さん好きだから。
あとはほんの少し、君が舞台を諦めた世界線の僕からのエゴ。ifの夢を叶えてくれてありがとう。
終わった今どう思ってるかは分からないけど、受けて良かったと思ってくれているなら犬の写真でも送っといてよ。一枚だけね。一枚だけだからな。
僕は蟹さんが大好きだよ。
私信は以上です、以下隙自語を含みます。


僕の人生は表情さんによって作られたトゥルーマン・ショーだったのではと思うほどユウキには共感しっぱなしでした。
本当にね、何から話そうかってくらい分かるんですよ。ユウキの言動全て。小中の自分を見てるみたい。
穿った見方、早熟せざるを得なかった環境。
疲れるよね、よく生きたよと抱きしめてあげたい。僕がそうして欲しかったから。

ユウキと違うのは、僕は早々に制服から逃げたところ。
僕が中学校に入学するタイミングで女子用スラックスが導入されたので、学校生活のほとんどはスラックスで生活してました。ただ式典だったり合唱コンクールだったりはスカートで、なんていう訳のわからん決まりがあって、そのうちなんやかんやで学校にも行かなくなり、高校は通信制で私服登校に。
ユウキはきっと、少なくとも3年の間耐え抜いて、耐えたと思ったらまたセーラー服なんて分かりやすいアイコンに身を包む覚悟を決めたんですよ。凄いですよ本当に。
高校の入学式用にフリーのスラックスを買って制服ごっこはしましたけど、結局はごっこですからね。僕はずっと逃げたんです。
でもユウキは逃げなかったね。偉いよお前。
嫌でもセーラー服着て、耐えて、それでも最後には学ランに袖を通して。
ラストシーンの学ランユウキは、もしかしたら自分のためじゃないのかもしれない。ヒトミと向き合うための武装だったかもしれない。あれが最初で最後で、その後再びセーラー服を選んだとしても。
一歩踏み出す決断をしたユウキを、僕は肯定したい。
中性的な名前を付けられたところは、死ぬほど羨ましいけどね。理由はなんであれ、結果として名前で悩むことは少なそうだから。

どっちが正しいとかじゃないんです、性差から逃げて都合よく迎合して生きている僕も、向き合ってもがいて乗り越えようと生きているユウキも。
みんなそれぞれ、数多の分岐ルートを行ったり来たり。人生なんてそんなもんです。


松前、前松

アキラのツヨシに対する感情はブロマンス以上ロマンス未満っぽくて、性愛ぶっ飛ばして家族愛なんだと思う。二人の間にセックスは不要というか。
アキラがツヨシに対して愛情を抱いているのは事実だけど、じゃあ抱いたり抱かれたりしたいのかと問えばそうではない気がする。
ツヨシが漫画描けてて、アユミちゃんが笑っていて、ハルと漫才が続けられて。アキラはそれだけで幸せなんじゃなかろうか。
本当はそれだけで幸せなんだけど、やれ好きだから付き合いたいヤリたいだの、やれ子供作れだ養子だなんだって世間が幸せの形を強要してくるから、自分のことを何にもなれないと評価してしまっているんだと思う。
なれてるよ、アキラは。というか、生きてたらみんな何かにはなってるよ。なりたくてもなりたくなくても。
それを受け入れて生きていけるかどうかって話で。

中盤の大喧嘩シーン、なんだかんだ「いってきます」を言うアキラはツヨシのこと好きなんだなぁって場面に似合わずほっこりしました。
いってきますって、帰ってくる意思がないと出てこない言葉だと思っているので。アユミちゃんが一緒だったとしても、自分まで言う必要は無いはずだからね。
それでもいってきますを言いたかったんだから、アキラは大丈夫だよ。ツヨシはまあ、いろいろ問題を乗り越えなきゃならないと思うけど。
なんとかなるよってアキラの背中叩いてあげたい。

ツヨシはなぁ……いいヤツ、では無いんだよなぁ……。
だからと言って悪いヤツ、と断定するにはあまりにも事情がありすぎるし。
あんまり、コイツについて語りたくないかも〜!!!!って心が言ってる。でも書く。考える。

う〜ん!!!!言葉を選べませんごめんなさい、カスみてえな女がハマりそうなカスみてえな男だなあ!!!!!!
ツヨシは90分有料オプション付き赤ちゃんプレイって感じ。ばぶぅ。何がばぶぅだよシバくぞ。
でも娘を引き取り(アキラのサポートはあれど)しっかり育てて漫画も軌道に乗って頑張ってて、ちゃんと生きてる。
そう、ちゃんと生きてんの。ただクズなだけで。
嫁さん亡くしてからそうなったのか、素質かは知らんけど。フラフラしないで近くの大切な存在を大事に扱ってほしい。

エピローグで仕事ガン詰めしてるのは、学費以外にも慰謝料か何かであってほしい。
アキラに対してもこっそり金を渡すくらいきっちりしてるなら、恐らく慰謝料を払う意思はある。そしてそれがヒーローとしての責務だとも思っていそうなのが腹立つ。
やってしまったことへの償いはするべきだっていう至極真っ当な考えなのに、してきたことがあまりにもなことなので素直に捉えられない。
日頃の行いって、こういうことだね。


今井兄弟、それからカナメ

毒親から逃げられたリョータ、逃げられなかったマサヒロ。分かりやすく対。
マサヒロの箸の持ち方がきったなくて、よくあるよく当たる偏見として、ああこの人はまともな教育を受けられなかったんだなと。
リョータはリョータで、人との距離感が掴めない感じが愛着障害に似た何かを思わせるし。
この兄弟、本当にギリギリのバランスで保たれてるんだろうな。
そんなギリギリ綱渡りの状態で繰り広げられる
「俺は弟だよ」
「犯罪者のな」
「兄ちゃんのだよ!」
の応酬、しんどすぎ。マサヒロの兄として何も出来なかった自分、みたいなのが透けて見えた。
リョータはマサヒロが思ってるよりももっと、にいちゃんのことをヒーローだと思ってるはずだよ。気づいてあげて、自分のためにも。

リョータと付き合って、ゆくゆく結婚するとなればカナメにとってマサヒロも家族になるわけで。なってしまうわけで。だからこそマサヒロは食い気味で別れろと迫ってしまったんだろうなと。

カナメとしては、リョータはリョータなんだからアンタの家がどうだろうと気にしないよって気持ちなんだろうけど、家族って一筋縄じゃいかないよね。
きっと、きっとね、同棲する時に「うちのお母さん不倫してた、ホントに気持ち悪い。もう私家出る」みたいなことをリョータに言ってると思うんです、それで同棲の流れになったと思うんです。
その時に、リョータはカナメに対して過去に「大事にしてもらったんだね」と言ったことを全力で謝るんですよ。
無神経なこと言ってごめん俺全然知らなくて、いやカナメちゃんも知らなかったことだから俺が知るわけないんだけどでも言っちゃいけなかったよね、あでもカナメちゃんが大事にされてなかったとかそういうことを言いたいわけでもなくて大事にされてたけど大事じゃなくなったみたいなってこれも失礼だねごめん!!!!!!みたいに慌てふためくんです。
そしてカナメが、「気にしなくていいよ」って。
いろいろあるけど、私は私で、リョータはリョータだから気にしなくていいよって。言っていたら、嬉しいなぁ。

二度と連絡するなと言い放ってしまったマサヒロだけど、少なくともエピローグではハルトの手を握りしっかりとハルトを見られるようになっているから、リョータとも程よい距離感で兄弟付き合いを続けられるようになると思う。リョータとカナメと、節目節目で一緒に飯食っててほしいな。そこにカオリとハルトもいてくれたら何も言うことはないよ。

それはそれとして二次創作として今井兄弟の破滅の物語は見たいですね。最終的に母親殺して心中してくんねえかな。


マリとリナ

マリとリナってぐりとぐらみたいですね(現実逃避)

マリの彼女はリナでしょうね。(SNSを拝見する限り確定で付き合っています拍手喝采)
マリとリナは知り合いで、マリの目標である海外移住のち結婚とリナの退店理由は海外に行くから結婚の示唆。充分過ぎるほどにこの2人はデキている。うれしい。
チャトレは嫌なのに風俗は許してるの謎だけど、それはどこのカップルにも起こり得ることだから特別深追いはしない。
あ、ビアンが風俗勤務はあるあるです。ヘテロでウリ専だってたくさんいるしね。

この2人に関しては当事者としての感想が強い。
僕は全てをオープンにして生きていて、幸いなことに母親からも周りの人間からも、特別糾弾されたことのない四半世紀を過ごしてきているので、父親に勘当を言い渡され母親がノイローゼになってしまったマリを見て、「ああ良かった、僕はこうならなくて」とほっとしてしまいました。
きっとこれは当たり前の感情なんだろうけど、下を見て安心する醜さが出てきて少しだけ気持ち悪くなった。

一歩間違えたら、別の世界線だったら、マリが僕でもおかしくないのに。運良く否定されてこなかっただけでこれから先似たようなことが起こるかもしれないのに。
そうなった時、僕はマリみたいに強く前を向ける自信が無い。
マリだって最初からああなれたわけではないと思う、凹んで落ち込んで泣いて。それでもリナが好きだから、好きな人をファンタジーにしたくなくて、一緒にいたくて強くなることを選んだ結果今のマリがあるのだと思う。
愛ってすげえな。

リナはリナでそれを受けとめて包み込める愛があったはずだし、2人はお似合いのカップルだよ。
バラエティ配信見てる時のリナが、マリのことを"知り合い"と紹介したの、めちゃくちゃあるあるだなって共感した。そこまで踏み込まれたくない、互いに踏み込んでいない関係性だと、根掘り葉掘り聞かれる手間を考えて知り合いと称してしまうんだよね。
きっとリナは、いつかどこかの話の流れで、マリのことを"彼氏"として恋愛話をしたことがあるはず。もしくは彼氏とも彼女とも言わずに。
でもリナはエピローグで、モモカに対して自己開示しているので、これから先店を辞めたとしても、モモカがリナの良き話し相手になってくれると思うし、そうであれと願っている。
マリと喧嘩したらモモカと酒を飲んでほしいし、結婚式には風俗組を呼んでほしい。


JKモラトリアム

スズ、ユウキのこと好きだよね。でもスズの好きは恋愛ではなく、かといって友愛だけでもないと思う。
あれは遅めのチャムです、チャムシップというにはユウキからの矢印が薄いので一方的なチャム。
説明は面倒なので各自[ チャム 思春期 ]とかでググッてください。

スズはとても考えて生きている子だと思う反面、無意識に他者を拠り所にしてしまうクセがあるとも思う。
だからユウキに虐待を打ち明けたし賄賂も渡す。エゴだけど、そのエゴで生かされている。
そして「幸せになる」宣言。
スズは家を出ると言っていたけど、僕としてはあのまま父親を殺しかねない危うさを感じた。変に吹っ切れそうな、石橋渡るの怖くて存在ごと消しかねない、そんな感じ。
家を出たら果たして幸せになれるのか、現実はそう甘くないからきっとどこかで大きく傷付くことがあると思う。そんな時のための、賄賂。
傷付いてボロボロになって死にたくなっても、ユウキが漫画を描いていてくれれば、それが死なない理由になると思っての、賄賂。
重たいねぇ、クソほど重たい。でも本人自覚してないと思う。
必死だからね、生きるのに。

ユウキは頷くだけで、肯定も否定もしない。
相談を責任の押し付けと捉えるユウキにとっては肯定もある種の押し付けで、もしかしたらより重たい呪いみたいなものだから、何も言わない。言えない。
言わないことが、スズへの愛だと。

ヒカリ、作中でも皆さんの感想でもド真ん中陽キャ・作品の光として扱われている子。
でも僕は、あのままいくと数年後にヒカリは壊れると思っている。元の天真爛漫さはあれど、あの道化っぷりは心からのものではないと。
葛城家は本家だと解釈しています。だからこその跡継ぎ問題で、養子の世間体を気にしている。本家なら、マリが過剰に否定された理由も納得いくしね。納得したくないけど。
本家という伝統的な束縛の中で、あーしくらいは明るくいた方が良くね?その方がなんか多分全部上手くいくんじゃね?というヒカリなりの計算と配慮。の、賜物があの姿だと思う。
部室にスマホ取りに来た時も、ただの考えなしなら中の様子なんて気にしないでズケズケと入ってるだろうに、入り口で2人の様子を確かめていい塩梅のタイミングでテンション上げて入ってる。考えて動いてるよ。
本質的な意味で、気の抜き方を知ってほしい。じゃなきゃ破裂して壊れちゃうから。

リンコもミズキも、正直2人とも仲良くはなれないタイプ。でも2人とも素直ないい子。
リンコのイチイチ棘を持たせた言葉は、そこでしか毒を消費出来ないからなんだろうな。家に帰れば母親の機嫌をうかがって、学校だけが自分を撒き散らせる場所だったんじゃないかなと。
認めてほしかったんだよね、きっと。キツイことを言う自分を受け止めてほしかったんだよ、試し行動だね。
ミズキも似たようなもんだと思う。金はあるけど家族円満ではなくて、拠り所が金になってしまっている。
推し活に重きを置いていそうにみえるけど、あれは実のところ"自由に金を使える万能感"に縋っていたのかなと。同年代で自分ほど使える人間はそういなくて、唯一無二と思い込んで、そういられるのは父のおかげなのだから、今の自分は幸せなのだと。そういう縋り方。

属性だけ見ると相性悪いねこの2人。でもだからこそ仲良く出来てんだろうな。まあ結果2人で大喧嘩するはめになったけど、あれはいいきっかけだったと思う。
お互いが大事だから起こった喧嘩で、最終的にはいい方向に向かっていきそうだったし。
あの仲直りの仕方は青春だったねえ。なんか、爽やかで浄化されそう。あの瞬間だけ青春キラキラストーリー。
ずっとずっと2人でバカやっていてほしい。


ベタだなぁ

カオリのターニングポイントであろう、中華屋でのご飯会。
エミの「ベタだなぁ」はカオリを通り越して全登場人物に向けられたものだと思います。
モモカが待機所で泣いてしまうシーンも、カナメがリョータの浮気を疑うシーンも、今作通して全て、ベタなんです。全部よくある話なんです。ただそう言ってくれる人が、言ってもらえる人がエミとカオリしかいなかっただけで。

エミ自身だってベタなはずなんですよ。父親の有無は分からないけど子供一人抱えて風俗で働いて、お迎えがあるからって知らん男のチンコしゃぶった後に母親の顔をする。ほら、ベタでしょう。
エミはそれが分かってる、自分がベタだって。だからカオリにも言える。
ベタだから、アンタだけじゃないから。だから人に頼りなよ、救いを求めなよ。今話せただけで充分偉いよ頑張ってるよって。
カオリ、多分ハルト家に置きっぱなしだよ。預ける場所なんてないんだよ。エミはきっと察したと思う、それでも深追いせず、自分から話してくれるのを待った。
まさに強い母親像そのものだと思う。

アベマのクソおもんな配信でのハルもそう、現実じゃみんな言えないだけであんなシーンごまんとある。
あそこで言えちゃうのがハルの良さであり、悪いところで。
その後の楽屋でのシーンも、ハル自身はアキラがそうだって、思ってないんですよ。だから「笑えない」って言える。
芸人にとって笑えないって最大級のディスじゃないですか、それを言えてしまうってことは、そうじゃないから安心してねってことだと思うんです。
例え真意がセクシュアリティについて笑っちゃいけないってことだとしても。だとしたら言い方が悪すぎるもんな。
アキラのこと考えて大切に思ってるのはよく分かるんだけど、もう少し方向を考えてあげてほしいな。
最後には仲良く(?)漫才してるからなんとかなってるんだろうけどね。

あ、もしかしたらアキラのこと好きなのかなって思ったけど、にしてはなぁって感じ。あんまりしっくりこない。
ただ、アキラに誰と飲んだのか聞かれた時のハルが一瞬"女"になった気がしてならないんですよね。
それはそれでベタだなぁ……相方のこと好きになっちゃう芸人。ベタですねぇ。


最後の絵画

各々の理想の家族像なんだろうな。

男の子が欲しかったハジメの理想
男の子として生まれたかったユウキの理想
"普通"の家族でいたいカナメの理想
ただただ家族でありたいヒトミの理想

その全てが詰まった絵、重てえ〜!!!
それを持ってきたユウキが笑って終わるのも、重てえよ……なんだよあの笑顔……しんどいよ……。
持ってくる前のヒトミの幻覚シーンからの繋ぎでよりしんどいよ……。

そうそう、ラストの談笑シーン全部ヒトミの幻覚妄想だと思っています。あんなことがあって笑い合えるわけがないので。
まあそうなってくると果たしてラストのユウキは本当に学ランだったのか?ヒトミの妄想の続きなのでは?みたいなことも考えられるわけですが、息子を望んだのはハジメなのでこの線は薄いなと。
そんなヒトミの理想の家族を見せられた後にあの絵ですよ、演出つけた人性格悪いよ。誰だよ、表情さんだよ……。


長々と感想解釈を述べましたが、言いたいことはただ一言です。

見にいってよかった〜!