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安西慎太郎一人芝居、カプティウスに寄せて



想像を裏切ります。


たったこれだけで、この一言だけで血が沸くような言葉に出来ない、簡単に言葉にしたくない様な気持ちになった。
好きな人の想像を裏切りますという言葉ほど期待値を上げ、信頼出来るものはないのではなかろうかと思ってしまう。
そしてその期待すら軽々と超えて来るのだろうと口元が緩んだ。


2019年9月27日、夏もとうに終わるというのに秋の気配が感じられない正午【大事なお知らせ】と共に白黒の動画が上がっていた。



大事なお知らせ。



これはなかなかに嫌な言葉である。畏まってされる大事なお知らせなんかロクなものがない。(偏見)恐る恐る動画を再生して、まぁ途中で面白い顔してたので悪い話ではないんだなって思ったけど。なんか最初から笑ってたし。大事なお知らせって言いながら悪い顔してたし。


2020年、2月、安西慎太郎が………


\一人芝居をやりま〜す!/パチパチパチパチ!




お ま え 〜〜〜!!



吃驚させるなよ!うれしすぎて携帯落としたよ!ベッドの上でよかったよ!(え?寝てたん?)

うれしすぎてすぐに予定を書き込みました。ド繁忙期なのは気付かないふりをして。
いやもう楽しみ。楽しみすぎて考えるだけでにやにやしちゃう。なんかこう、地面から3cmくらい浮いてる気分。帰り道に踊り出しそう。まぁ通勤自転車なんですけど。


なんだろうな、期待を押し付けてるというか今一番信頼してる役者なんですよね。私の中で。作品を、芝居を観て絶対に何かを残してくれるなっていう。
それは面白い面白くないの話ではなくて。
面白いかなんて分からないし何を見せられるのか、魅せられるのか。彼の、26歳の安西慎太郎の本気をぶつけられるのが嬉しくて楽しみすぎてなんとこの下書き2019年10月6日に書いてます!!嘘みたいだろ、まだ派やってるんだぜ!!



というわけで安西慎太郎一人芝居カプティウス始まってます。むしろ終わりました。千穐楽おめでとうございました。お疲れ様でした。
いやもう発表あった日から楽しみすぎて浮き足立っていたのですよ。
行ける限り行きたいっつって。まぁでも私も人生かけてる仕事があるので全部は無理なんですけどまーーーーーね。調整しちゃうよね、休み。有給使えないから(はいブラックですよ!業界がね!)月の休みを調整しまくってこの1週間上手い事やりましたよ!だってチケット取れたんだもん!!呼ばれてるじゃん!行くわ!君の事が好きだから!


限界を超え、超越した状態で劇場でお待ちしてます。
なんて言われたら行くしかないじゃん。

本気で生きている人が好きなんですよね。
どうしようもなく。
自分の生きる世界で命を、人生をかけて生きている人が。

技術がどうとかそういう事じゃなくて。

今の自分に満足しない、出来ない人が。

常に上を目指す人が。




カプティウス

解釈は人それぞれだと仰っていたので私が見えた景色を。
まさかのラストから行くんですけど、私は男は死んだと思っているんですよね。少数派っぽいですけどね。お前は発想と言動がイカれてるって言われるからな。まぁいつもの事。

誰の目にも留まらない私がいます
私がずっと先で待っています
私は生き続けますよ

この台詞を聞いて(順番違うけど。間違ってたらごめん。ニュアンスでどうぞ。まだ戯曲全て読んでいないので)あの薬は明日を生きる為の薬ではなく終わらせる為のもの。というか生き続ける為の死、なのかなと。
空虚な心を包む殻。自死ではなく肉体という器からの魂の解放。そして概念として、精神だけが永遠に生き続ける。男が囚われていたのは肉体という器なのかなって。まぁちげーよって思ったら心の中でトマトでも投げてください。
空虚な心を隠す為にに言葉を使って取り繕う。嘲笑われ呆れ幻滅される前に言葉を吐き突き放す。その言葉に想いなどないのに。
御託並べの歌詞にあったように

「悩み」演じ、「悔やみ」演じ、「悦び」演じてる

ってカプティウスを観る前は演じる事に悩み、悔やみ、悦びを覚えているのかな。まるで安西慎太郎そのものみたいだな。って思ってたんですけど違うんですよね。
これはあの男そのもの。

《ここには何も無い》に対し

心が空洞な男がそれを取り繕う為に悩んでいるように、悔やんでいるように、悦びを感じているように演じている。自我のない空虚な心を悟られない為に。人間ではない、そう思われないように。



私は今まで生きてきて死にたいと強く思ったりした事もないですし喚び起さなくても嫌な記憶はすぐ出てきますし(すぐ出るからこそ特になんとも思わない)正直男に共感できる部分は殆ど無かったんですよね。むしろこいついつも裏切られたとか失望したとか幻滅したとか期待しすぎる私が悪いのですとか被害者面してるな…って思ってましたすまん。ごめんて。
でもあの最後演説は安西くんにあの熱で言われて救われる人沢山いるんだろうねって言われてなるほどそうかもなぁとは思いました。私は、どうでしょうね。あそこにいたのは安西慎太郎であって安西慎太郎ではない別の男から発せられた言葉だと思っているので救われたとかは特にないです。
人間生きていると色んな体験や感情を持つもので、今まで登場人物の誰かしらに共感したり感動したりしていたように思うけれど今回それが無かったので逆にフラットに1つの演劇作品として観れたような気がします。
でもたぶん観るタイミングにも寄るのかもしれないですね。私のメンタルがボロボロだったら嗚咽をあげて泣いていたかもしれないし。戯曲全部読んだらまた見え方が変わるのかもしれないし。共感できる部分が少ないからこんなに言葉が出てこないのかもしれないです。



なんか1、2公演目までは安西慎太郎に男っていう別の紙でフィルターかけたみたいな微妙に台詞が上滑りしてる感覚があったんですけど3公演目から最初から1枚の紙に描いてあったみたいになっててうわ、凄いなってゾクゾクしました。(浅い感想)でも逆にその上滑り感が男の空っぽさを表しているようにも感じられるよね。
正直話自体は好きでも嫌いでもないかな。ほぉん…みたいな。安西くんが人間失格を読んだ感想が特になんとも思わなかったのと同じようにこんな人もいるんだなって。演劇としてはとても面白かったですが。まだ咀嚼出来てないからなのかもしれません。



植ちゃんが初日のアフトで男が喋っている場所は何処なのかみたいなことを言ってたんですけど私は監視された閉鎖病棟か小さな島にある療養所から喋りながら出て行くのイメージしました。(どっちも病院〜!)閉鎖病棟の方は窓もドアもない真っ白な部屋で監視カメラが四方八方にある(そんな目で〜はカメラ)バースツールと白い丸テーブル、壁に掛けられたシャツとジャケット。毎日毎日ああやって御託を並べ続けていていつも語り終わる前に意識を手放してしまい薬まで辿り着けない。そして私たちが目撃したあれが最期の演説。
後者はあの男とは真逆の、出来る限り穏やかな景色で。晴れ渡る青空と海辺に咲く蒲公英。色彩も風景も柔らかく穏やかな方が絶望感増すんですよねぇ個人的に。救いようのない話が圧倒的に綺麗に描かれているのを見ると吐きそうになる…空気人形とかほんとに無理だった。あの映画11年も昔のなんだね。ミッドサマーも絶対具合悪くなるから観れない。あ、ギャラリーのいない(男に見えている聴衆は幻覚)海辺の草原で話し終えた男は薬を飲み腕を広げて海に落ちます。(まさかの崖だよ)とても幸せそうな顔で。うーむ、もはやただの2次創作。




あと、おたのしみの時間っていう見せ場、客席の感情が盛り上がる場所が演劇にはあるらしいんですけど私のおたのしみの時間はキックボクシングと着替えシーンでしたね(意味合いが違う)だってなんかだんだん蹴るのうまくなってったんだもん〜!拳は嘘ですのとこさ〜毎回にやにやしちゃうよ〜着替えもボタン外れない留められないネクタイ結べない探せないで1回もスムーズに着替えられないんだもん〜あれも演出なの???でもあの変なジャケットの着方はわざとだよね。ネクタイの後普通に着てたし。22のソワレかなぁネクタイをもはや諦めジャケットの襟は捲れシャツの襟も出るみたいになってしまっててちょっと面白くなっちゃったんですけど。諦めないでちゃんと着てよ。(神経質か)(集中しろ)




初日ただただ圧倒されて終わってしまったんだけど回を追う毎に安西くんの言葉に感情が乗って押し負けてしまうというか圧倒されて削がれる感じから徐々に対峙出来ていった気がする。安西慎太郎によって削られた魂が安西慎太郎によって戻ってきた。
やっぱり安西くんのお芝居好きだなぁって実感した6日間だった。
あの躁鬱ジェットコースター(言い方)を生命削って演じる安西くんのせいで私は公演中眠れなくなってしまったんですけど。遠足の前日の小学生か!



考察しようにもまともに向き合ったら命が削られそうでまだ気持ちの整理が出来てないっていうのか正直な感想。なのでいつも以上に取り留めなく思った事を適当に書いていっているのですが最愛の人って誰の事なのでしょうね。私は最初母親の事なのかなって思ったんですけどでもよくよく考えるとなんかいまいちしっくりこないなぁと。となるとやはり彼女の事なのかな?

最愛の人を死に至らしめた

というのはどういう事なのか。
彼女の内側を傷付け精神を殺してしまった事なのか
それとも彼女がホテルから出て行った後に自ら命を絶ってしまったのか
自死したってことは無いと思うんだよなぁ。殺すなら自分を殺してって言葉を男は額面通り受け取って自分の顔を殴り続けるけどあれはきっと彼女自身の事だよね?もう終わりにして欲しかったんじゃないかなぁ。だから愛していた男に殺されるのは受け入れそうだけど自分でっていうのはいまいち考えられないんだよなぁ。うーむ。まぁ余白の美という事で。思考させる意図があるかはわからないけど思考出来る部分が多いというのは面白いね。



始まる前に迷路の中で迷っている事に迷うと言っていたけど迷えるというのはとても良い事だなぁとその言葉を見て思った。私はどうしても無駄な時間が嫌で(特に仕事で)最短距離を選びがちなんですけどたまには迷ってみようかなぁと思えた。まぁどうせすぐ嫌になって迷路の壁を登って上からゴールまで行くか壁をぶち壊して新たな道と出口を作ってしまうのだろうけど。



全公演アフタートークがあったのだけど安西慎太郎が大好きな人達を呼んで、安西慎太郎の事を大好きな人達が来てトークをするというなんとも控えめに言っても最高な時間だったんですが全員一人芝居どうです?って言われてやりたくないって言うの面白かったね。あんなの見せつけられたらね。みんな命を燃やして生きている人だけど彼のあんな姿見せられたら更に燃えるよねぇ。お前こんなのやっちゃってどうすんの!?の答えが\楽しく生きたい/だったのは本当にこいつ凄いな…ってなったよみんな思ったでしょ!?あんな姿見せといてファンイベントで缶蹴りやりたいとかまじで何???やろうよ(やんのかーい)
フリーになったっていうのもあるのかもしれないけど割と冷静に商業的にも考えていたり理性的に芝居をしていたり今まであまり語る事がない所の話も聞けてとても良かったです。スズカツさんの言葉で泣きそうになっていて本当に嬉しいんだろうなぁとこっちまで嬉しくなってしまった。
どのアフタートークも笑ったりじんわり来たりと穏やかな気持ちでいたけれど千穐楽のアフタートークよ。顔の圧がすごいからちょっと椅子離してって言われたあの回よ。


下平慶祐イカれてんな〜〜〜!?

(言葉が過ぎましたねすみません)

いやでもあの場にいた全員が思ったはずだよ。Q&Aのコーナーがあって色んな質問に答えてくれてたんだけど(私が入れた目線の質問も答えていただけた)(全然合わなかった目線が急に合うタイミングがあったから絶対そうだと思ったんだよなぁ)
この空間どうでした?すごい窮屈じゃなかったですか?息をするのも足を組み替えるのも座り直すのもやり辛くなかったですか?でも人間どうしても動きたくなるんですよ。だからそれができるタイミングを今回作ったんです。
って下平さんが言った時のどよめき。怖すぎて息出来なかった。この人本当にやばいでしょ?って安西くん言ってたけど。芝居も客席も全ての空間のイニシアチブを取る下平慶祐とぅるーおぶゔぁんぷか???人身掌握をし、生殺与奪の権を握るあの演出家怖いよ〜〜!すげー面白いじゃん!!あんな狂った事しといてLOVE&PEACE掲げて世界を変えるって言ってしかもめちゃくちゃ冷静に理論的に商業を、演劇界を見ているなんて最高にイカれてるじゃん。めちゃくちゃ頭いいしめちゃくちゃ頭おかしいんだろうな。1回喋ってみたい。ていうか永遠に喋ってるの聞きたい。すげー話長いって言われてたもんなぁ。こんだけ文字書いてる私も人の事言えないけど。


音が集音出来ないからDVDにはならないそうですね。ずっと空気が揺れる不思議な感覚があったんだけどやっぱり音鳴ってたんですね。耳鳴りか頭おかしくなったのかと思った。そりゃあ空調点けれないわなぁ。
残せるものなら残して欲しいけどあれはあの空間でしか体験出来ない熱だったもんね。あのヒリヒリした空気は画面からは伝わらないもんね。本当に行けて良かったなぁ。
今回沢山行けて芝居が変わっていくのを目の当たりにしてすごい面白かったです。
あのラストに向けて言葉と熱を積み上げていく安西慎太郎の美しさに圧倒される85分だった。
東に1回だけ入ったんだけど薬を飲む時のあの顔怖すぎて心臓止まるかと思ったしその時だけ暗転中に何がが倒れるような音がしてあの1分にも満たない時間が永遠に感じられて本当に死んでしまうかと思った。安西くん倒れたのかと思ったんだけど誰も何も言ってなかったから私だけ異空間にいたのかもしれない。誰か何か落としました?でもそれにしては床に当たる面積が広い感じがしたんだよなぁ。カテコでいつもと違う顔してたし。まぁ見当違いだと思うので気にしないでください。


だらだらと書いていたらもう終わってから4日経つしなんならこれ書き始めたの去年の10月なので私はカプティウスという作品に4ヶ月半も囚われていたという事ですね。今回こちらのコンディションが引くくらい悪くて正直行くのしんどすぎるみたいな時もあったんですけど(精神は病んでないです)行けて良かった。寝られなくなったけど。
スズカツさんがこの作品を選んでこの場所に来た事は奇跡なんだからみんなそれを誇っていいって仰っていたけどまさにその通りで。あの一度として同じものがない、今の安西慎太郎の全てを尽くした時間に出会えた事がとても嬉しく誇らしい。
私は10年後にもう一度観たい作品だなと思いました。もしその時が来たら開けていないパンフレット開けるね。(ふたつ買ったの)
面白いくらい結びの言葉もポエムも出てこないのでパンフの最後にあった一問一答みたいなの私もやって終わりにします。(いらん)なんか思い出したら追記しときます。


安西慎太郎一人芝居 カプティウス
全10公演本当にお疲れ様でした。
6日間満ち足りた日々でした。






-あなたの仕事を教えてください。
お客様の笑顔のお手伝いをする仕事。

-仕事をする上での姿勢を教えてください。
自分の仕事に満足しない。常に自分を疑う。
本質を見失わない。

-気に入ってる道具について教えてください。
特には

-これからを教えてください。
私にもまだ分かりません






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