見出し画像

『サラブレッドに「こころ」はあるか』読了

『サラブレッドに「こころ」はあるか』楠瀬良著 読了。
・馬は視覚の動物。350度見える。黄色をもっともよく区別でき、次にわかるのが緑。人間ほどは色の識別できない。
・聴力はコウモリなみ。可聴域は人間に近い。蹄の音や鼻をならす音でエコロケーションも行っている。
・嗅覚は子づくり子育てに使われる。母馬は仔馬を匂いでわが子と判断し、牡馬は雌馬が発情しているかどうか尿をかぎ分ける。
・歯の構造は摩耗することが前提で、歯冠が高く、すり減っても伸びてくる。
・草食動物はセルロースを微生物によってエネルギーに変えることができるため、草だけで十分生きることができる。しかし、競技馬や乳牛はカロリー消費が激しいため、燕麦やフスマなどの穀物を主体とした濃厚飼料が与えられている。
・馬は全身で体温調節する。馬の汗には石鹸と同じラウリンが含まれているため、汗が全身に広がり、体表からの放熱効果が高まる。
・馬、ゾウ、ヒツジ、牛は横になるのは1日3時間。15分横になって起き上がるを繰り返す。体の構造から立ったまま休息も取れる。これらは比較的大型の草食動物に多い。隠れる場所もなく、睡眠時間も削って草のカロリーをとる必要があるため。
・サク癖などの常同行動は自由が奪われているストレスによるもの。乾草と濃厚飼料を与える別々に与える実験をしたところ、馬のストレスは濃厚飼料をあげた瞬間がもっとも高かった。好きな食べ物であるが、咀嚼が少ないという不満が関与している可能性が高い。
・馬の行動特性には遺伝が関係している。
・パドックやレース前にボロをするのは、過敏性腸症候群に近い状況。
・サラブレッドの能力のピークは4歳秋。
・アドレナリンは「闘争か逃走か」のホルモン。
・馬同士の咬むという行為は、個体間の優劣関係を決めるもの。威嚇行為に勢いがあり、しつこい個体が優位に立つことが多い。
・母胎内にいるとき、胎児は母胎を傷つけないように、蹄餅(ていぺい)が蹄を覆っている。生まれて立つ瞬間に剥がれ落ちる。
・牧場での出産の際、カラスやキツネが走り回っていることでお産があったことを知る時がある。動物たちは胎盤を食べようと集まってくる。
・女馬のほうが恐怖感を持ちやすい。6か月齢から同性同士が遊ぶようになる。
・放牧地の利用度、駈歩の平均完歩数、放牧地面積との関係から、育成期のサラブレッドには2haの広さがあればOKとわかった。安全面から正方形がベスト。
・敷料は稲、麦わら、ウッドシェープ、どれでも快適性は変わらない。稲ワラは食べてしまう馬もいる。経済性とリサイクルの効率(堆肥化)を考えると、ワラがベスト。
・ブレーキングは毎日実施したほうが成果が出る。
・より落ち着いた馬に育てるためには、新しい刺激に日々慣らしたほうがいい。
・サラブレッド三大始祖。ダーレイアラビアン、ゴルドフィンアラビアン、バイアリータークが根幹種牡馬。サラブレッドの95%はダーレイアラビアン。
・世界で最も古いハミは紀元前4000年ごろの鹿のツノ。基本構造は現代とさほど変わらない。
・日本で馬の利用が始まったのは4世紀後半から。蹄を焼いたり、ワラでつくった草鞋、みょうがと麻や人毛を編み込んだものを蹄鉄のかわりに使っていた。蹄鉄の技術は2600年前から。
・群れの構造は、牝馬同士の絆が強く家族を構成し、牡馬が弱れば牝馬同士は家族のまま、新しい牡馬を迎え入れる。
・クレバーハンス現象。仮説を検証したい研究者の無意識化の行動が、被験対象の行動をゆがめて誤った結論をもたらすこと。
・馬が交流のあった人との記憶を保持している可能性は低いが、音に対する記憶は長期間保持されている。
・人との絆と馬の落ち着きを調べてみたところ、普段から愛情深く接してくれている人がいるほうが落ち着いていた。
・馬は馬運車に乗る際、後ろ向きを好む。
・ギネスブックによると、馬の最高齢は62歳。中間種。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?