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ミステリーの最高傑作!『火車』

宮部みゆきさんの『火車』は、私が日本の
ミステリー小説にはまるきっかけとなった作品。

1992年7月刊行(双葉社)、1998年1月新潮社で文庫化。
第108回直木賞候補、第6回山本周五郎賞を受賞。
「このミステリーがすごい!ベストオブベスト」第1位に
輝く。(賞創設から過去20年間で)

令和になった今でもこの作品の驚異的な面白さは変わらない・・・。

事故で休職中の本間刑事は、銀行に勤める遠縁の男性から
懇願され失踪した男性の婚約者・彰子を探すことになった。

本間は男性にどういう状況で失踪したのか問いただした。
男性が彰子にクレジットカード契約をすすめたところ、
審査の段階で彼女が自己破産経験者だと判明したのだ。
男性が彰子に理由を問いただした翌日から姿を消したというのだ。

本間は、雑誌記者と偽り彼女の身辺の調査を開始。
最初は彰子が勤務していた会社の社長に話を聞いた。
彰子の履歴書を見るとその容貌の美しさに驚く。
真面目で慎ましやか、とても清楚な雰囲気が漂っていた。

次に本間は彰子の自己破産の手続きをした弁護士に話を聞いた。
弁護士は、彰子の人となりとなぜ彼女が自己破産するに
至ったかを、当時の社会背景をふまえて淡々と説明していった。
本間は、弁護士の話を聞いて「彰子」に違和感を抱く。

まさか、遠縁の男性の婚約者は別人なのか・・・?

読み進めてゆくと、不気味な感覚がひたひと忍び寄ってくる・・・。
彰子とはいったい何者で、何が起こっているのか?

ミステリー小説としては究極の謎の展開に
先が気になって読まずにはいられなくなるのだ。

さらに弁護士が語った当時の社会背景に驚愕する。
巷にあふれる女性があこがれてやまない商品の数々。
欲しいものを手に入れるために安易にクレジットカードを使う。
クレジットカードの魔力に取りつかれ、社会から脱落し、
借金地獄にあえぐ若い女性たちの生態。

ただ、平凡な幸せを夢見て生きたいのに・・・。
歪な社会の犠牲になってしまった女性たちの悲哀が
リアルに描かれていて、切々と心に訴えかけてくる。

現代社会の病理とミステリーを見事に融合させた、
社会派ミステリーの最高傑作だと言っても過言では
ないと思う。

私がこの作品に出合った時、クレジットカードを
使い始めてまだ間もない頃だった。
この作品は私にクレジットカードの怖さと
身の程を知れと教えてくれた、教訓となった作品だ。

『火車』宮部みゆき 新潮文庫

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