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衝撃度NO1のサスペンス!「火の粉」

もし、隣に過去に因縁のある相手が引っ越して
きたら、まず「なぜかな?」と思う。
偶然ではない、何か意図があって越してきたのでは
疑ってしまうだろう。
それは、「ちょっと嫌だな」と思うのか?
それとも「ちょっと怖い」と思って警戒するのか?
ざわざわとした不安感が募ってゆくだろう。

しかし、案に相違してその相手がとても
良い人だったら・・・?
その不安感は払拭されるだろうか?

雫井脩介さんの「火の粉」(幻冬舎文庫)は、
そんな不安を持ちながらも、のっぴきならない
状況に巻き込まれた人たちの恐怖を描いている。

二年前、殺人の罪で裁かれていた男に無罪判決を下した元裁判官。
その男が元裁判官の隣家に越してきた・・・。
驚きを隠せない元裁判官に、男は感謝の言葉を伝え、
あふれんばかりの善意を見せ、元裁判官家族に近づいてゆく。

優しく、愛嬌があり、良く気のつくこの男は
次第に元裁判官の家族のたちの心を掴んでゆくが、
彼が親しくなるにつれ、周囲で次々と不可解な事件が
起こり始める。

元裁判官は、男の本当の意図が読めないが、
なんとなく違和感だけは持った。
彼を無罪にしたことは、間違っていなかったのだと
自分に言い聞かせるが、何故彼を信用しきれないのか?
元裁判官自身も悩み、漠然とした不安感が募ってゆく。

この微妙な心理描写が読み手の心にじわじわとおぞましさを
植え付けてゆく。

中盤以降の怒涛の展開は衝撃的で、ほとんどいっき読み状態。
超自己中心的で狂気に満ち溢れた人間の恐ろしさが、
圧倒的な臨場感をもって描かれている。

読み進めるのは怖いけれど、いったいどういう
結末を迎えるのか?気になって止まらない!
怖いけど、面白い!そんな作品だ。

『火の粉』
著者:雫井脩介
出版社:幻冬舎(文庫)

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