【先輩インタビュー/半導体(洗浄装置メーカー)×プロセス評価】化学の知識を活かし、最先端技術に貢献!半導体の製造現場を支える"プロセス評価"とは?
今や私たちの生活に欠かせない存在となっている半導体。
その製造において、全工程の30%を占める重要な役割を担うのが、シリコンウェハー(※半導体の原材料、薄い円板の形をしている)に付着した目には見えない細かな汚れを除去する洗浄プロセスです。
今回は、半導体洗浄に使われる装置の性能や品質の評価業務に携わるTさんに、仕事の魅力やご自身の成長についてお話を聞きました。
Tさん / 半導体洗浄装置×プロセス評価
これまで学んだ知識を活かせる仕事に魅力を感じ、入社
ーーまずは簡単な自己紹介をお願いいたします。
プロセス評価職のTと申します。子どもの頃から自然科学や理科の分野が大好きで、高校時代には特に化学に興味を持ち、化学コースを選択しました。
大学時代は、九州にある大学の工学部で工業化学や材料科学など、化学分野のさまざまな領域を学びました。卒業研究では、燃料電池への活用が期待されている酵素の性質を電気化学的な手法で調べるという内容に取り組みました。
大学卒業後、1社目では非破壊検査員として設備保全の業務に2年ほど携わりました。MEに転職した現在は、半導体製造装置メーカーに常駐し、洗浄装置のプロセス評価を担当しています。
ーー転職時にMEを選んだ決め手はありますか?
元々、半導体分野のメーカーやプラントのフィールドエンジニアリングを軸にし、転職活動をしていました。
そんななか、MEのフィールドエンジニアリングの職種に応募したところ、面接で今の部長からプロセス評価という業務があることを教えていただいたんです。
当時の私はプロセス評価がどんな仕事なのかを知りませんでした。しかし仕事内容を聞いてみると、装置の性能や洗浄のプロセスを改善する検証・分析に、大学で学んだ化学の知識を直接活かせることがわかって。すぐに「この仕事に挑戦したい」と思い、MEのプロセス評価職を志望しました。
ーー現在はどのような業務を担当していますか?
主に半導体メーカーからご依頼をいただき、要望に応じて装置の評価を進めるのが私の仕事です。
現在は、決められた条件に基づいて装置や薬液を準備した後、処理したウェハーを計測し、そのデータをまとめるまでの一連の業務を担当しています。
この工程を通じて収集したデータは、処理プロセスの改善点や、製造の最適化に向けた条件や装置のバージョンを検討するための参考資料として使用されます。
ーー基本的な1日のスケジュールを教えてください。
朝一番に、作業リストを作成することからその日の仕事が始まります。リストの内容について、作業実施許可を得た後は、クリーンルームに入室して処理と計測に移ります。
まず処理するウェハーを準備し、前検査のための計測を実施します。この工程では、必要に応じて装置の薬液準備や前処理を行うこともあります。
前検査が終わったら、本検査に向けたウェハー処理を行い、再度計測します。この処理と計測のサイクルを1日に2、3回繰り返すこともあります。
最後に、計測して得られたデータをまとめて社内に提出し、1日の業務が完了します。
ーー残業が発生することはありますか?
基本的には定時で退社していますが、検査がうまくいかない時や、その日のうちに急ぎでウェハー処理を完了させる必要がある場合は、残業することもあります。
残業時間については、一月あたり大体10時間から15時間程度です。
座学とOJTを通じて一連の業務を学ぶ
ーーMEに入社する以前、プロセス評価の業務は未経験だったとのことでしたが、入社後はどのように仕事を覚えていきましたか?
入社してから正式配属されるまでの2週間、社内で座学研修を受けました。研修では、製品に関する知識、使用する薬液に関する知識を学んだり、危険予知などの安全教育を受けました。仕事に必要な基礎知識を体系的に学んだことで、安心して配属の日を迎えられました。
本配属後は、常駐先の社員の方とのOJTを通じて計測やウェハー処理の作業工程を学びました。先輩の作業を何度か近くで見学した後、今度は私が作業を担当するところをチェックいただく。各工程についてこのようなトレーニングを重ねていきました。
ある程度経験を積むと、ウェハー処理と計測の一連の流れを1人で担当できるようになりました。ただし、薬液調合などの危険を伴う作業については、現在も常駐先の社員の方や他の協力企業の方とペアで作業を進めています。
ーー職場の環境や雰囲気はいかがですか?
とても良い環境だと感じています。周りの方々が優しく接してくださるので、自然体でいられます。
質問しやすい雰囲気もあり、わからないことがあって困ったときにも、周囲の方が親身になって教えてくださいます。
コミュニケーションが取りやすい環境ですね。
「やってみないとわからない」不確実性が評価業務の奥深さ
ーー仕事中、どんな瞬間にやりがいを感じますか?
自分なりに工夫しながらウェハー処理をした後、計測時に理想的なデータを得られた時には、やはりとてもやりがいを感じます。特に、パーティクル(不具合の原因となる非常に細かな埃やゴミ)がまったくない綺麗な計測結果が出た時は嬉しくなりますね。
また、案件が無事に終了し、お客様にデータを提出できた時にも大きなやりがいを感じます。
ーー反対に、評価業務で大変だと思うのはどんなポイントですか?
大きく2点あります。まず1つ目は、薬液調合の作業です。場合によっては20リットルのポリタンクを使って合計300リットルほどの薬液を調合することもあり、予想以上に肉体労働の要素があると感じます。
2点目は、検査結果の予測が難しい点です。処理中は問題なく進んでいるように見えても、計測してみると予想外の結果が出ることがあります。何が原因なのか、作業中には分からないことがほとんどなので、狙った結果につながらなかった時には「やってみないとわからない」評価業務の難しさと奥深さを感じます。
ーーこの仕事を通じて身についたスキルや技術はありますか?
自分で装置を操作しながら処理と計測の経験を重ねていくなかで、入社当時の座学研修後よりもさらに洗浄装置に関する専門知識が身についたと感じています。また、安全に作業をする上で必要となる有機則や特化則といった、法令知識も習得しました。
専門知識以外に関していえば、一連の作業の流れを考え、優先順位をつけて効率的に進める能力も身についたと思います。これは日々の業務を通じて培われたスキルの一つですね。
好奇心と学び続ける姿勢が日々の成長につながる
ーー将来の目標や、なりたいエンジニア像はありますか。
現在、取り扱う機会が増えている枚葉洗浄装置(※)に関する知識をさらに深め、どんな処理でも1人で行える人材になりたいと考えています。
また、私が今まで多くの方々から仕事を教えていただいたように、将来は新しくメンバーに加わる方々を手助けできるような立場になりたいと思っています。
※洗浄装置の一種。複数枚のウェハーを同時に洗浄する従来の「バッチ型洗浄装置」に対して、枚葉洗浄装置では1枚ずつ洗浄を行う。これにより、清浄度を高めることができる。半導体デバイスの微細化が進むなか、近年主流となりつつある
ーーどのような方がこの分野で活躍できるでしょうか?
この仕事は、1人で黙々と作業するイメージを持たれることも多いのですが、実は日常的にさまざまな方との関わりやコミュニケーションが発生します。
常駐先の社員の方や、お客様とやりとりをしたり、他の協力企業の方々と一緒に作業することも多く、日々のコミュニケーションや報告・連絡・相談がとても重要です。
そのため、特に人とのやりとりを大切にできる方が活躍できると考えています。
ーー 最後に、就職・転職活動中の方へメッセージをお願いします。
プロセス評価、特に洗浄作業は、半導体製造ではどのメーカーでも行われている重要な工程です。この分野の知識を深めることで、ほぼ全ての半導体案件に携わることができ、幅広い知識が身につきます。
化学分野の知識がある方であれば、もちろん学んだ知識を仕事に活かせますが、現時点で知識を持ち合わせていない場合でも、入社後の研修や、現場での経験を通じて必要な知識を学べますので心配はいりません。
半導体産業は日々進化しており、常に新しい技術や課題に直面します。好奇心を持ち、学び続ける姿勢があれば、きっと充実感を得られる仕事だと思いますので、半導体分野に興味のある方はぜひチャレンジしてみてください。
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