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事業化実現プログラムで夢だったカフェを始めることになった話

神奈川県出身、東京在住のサラリーマンのワタクシ「まつの」がMYSHの事業化実現プログラムに参加して福島県南相馬市に通った結果、夫婦で移住してカフェ開業始めることを決めたお話をしていきます。

①都内住みサラリーマンが福島県に移住してカフェを開業するに至った理由

私が今住んでいる東京は魅力的なマチだ。

東京都全路線図

まず交通網がスゴい。

どこに行くにしても電車と徒歩で殆ど事が足りる。
たまにバスや自転車なんかを併用すればどこに行くにも困ることはない。
遠出するにしても自宅から200m圏内にカーシェアリングは20台ほどあるし、羽田空港、成田空港、新幹線のある上野駅にも乗り継ぎ無しで接続することができる。

あと飲食店がめっちゃ多い。

競合が多いせいか、どこの飲食店も特色があり365日毎日外食でも飽きないかもしれない。ウーバーイーツで自宅でも楽しめるし。

さらに肉フェスとかのイベントや話題のスポットはだいたい東京ではじまる。

でも住んでみると分かるのが、

なぜか、飽きてくる。

理由はよくわからないけど、年齢のせいか刺激をたくさん受け、その魅力を消費することに疲れたというのか、つまらなくなったというのか、なんにせよ興味がなくなってしまった。

そうして自分が本当に求める生活や暮らしを重視するようになった。
日々の暮らしを豊かにする方法を考えた結果、家事に勤しむ、夫婦で料理を楽しむ、インテリアや器などからお気に入りの空間を作ることをはじめた。

自宅のお気に入りの場所、古道具と作家モノを少しづつ集めている

そんなことをしているうちに、すっかり東京にいる必要がなくなってしまった。
将来の子育てを考えても、自分たちの目指す豊かな生活を考えても、刺激的なコンクリートジャングルよりも自然豊かな場所が適切だと感じた。

そうやって地方への関心が高まったころ、僕は妻と結婚した。

僕の妻は福島県浜通りの出身。
2011年3月、当時高校1年生の僕は、世界中の人々がそうだったように、幼いなりに色々考えた。

現に凄く大変な思いをしている人がいるのに、普通の生活を送る自分はなんなのか。

世の中がだんだん風化していくように日常を歩み始めていることへの疑問。

そんな思いを持ち続けて同年8月に宮城県石巻市にボランティアに行った。

この時の現地での経験や思いから人を救う、役立つことをして生きていくことを決めた。

大学卒業後は陸上自衛隊に入隊したが、災害時だけでなく、日常的に人を助けられる仕事を求めて電力関係の会社に転職した。

そんなふうに思っていても、福島県、特に浜通りをしっかりと知ったのは結婚の話が進んでからだった。

浜通りは震災の影響が色濃い。
地震や津波はもちろん、原子力災害によって人が住めなくなった場所が存在する。

6号線の一部地域は12年間ずっと時が止まっている。
これは行った人にしか分からないのでぜひ一度は訪れてほしい。

現状を知れば知るほどに、ここで何かしたい。ここをどうにかしないといけない。勝手にそんな使命感が湧いてきた。

元々人に役立つ生き方をしたかった僕が、東京に住んで地方に関心を持ったタイミングで、浜通りと縁を持った時にこの地域に行くことが必然のような気がした。

そこからの行動はちょっぴり早かった。
東京で福島関係の移住セミナーにひたすら参加しまくった。(多分30回くらい)

参加していたセミナーのパンフレット

そこで浜通りは一部の人からはフロンティアと呼ばれ、面白いことをしよう、チャレンジしようとする人々がたくさんいて、思い思いのまちづくりを行おうとしていることを知った。

原子力災害とか震災とか復興とか、そういう文脈じゃなくて、
単純に地域で楽しむ、面白く生きたい人たちが集まっていることに衝撃を受けた。

その中で出会った1人がMYSHの後藤さんだ。
彼女は福島に興味があるが、何から手をつけていいか分からない僕に「事業化実現プログラム」を紹介してくれた。

事業化実現プログラムで現地訪問した際の朝日

▼事業化実現プログラムとは?
南相馬・仕事づくりセミナー(2021年〜現在継続中)

仕事を軸にした若者層への移住促進プログラム。地方で働くことに関心を持つ若者層を集め、現状把握(現地視察)により課題(ビジネスの種)を発見、自分自身がやりたい“仕事”で解決するワークを実施、ビジネスメンターサポートによるビジネス性検証を実施していきます。

令和3年度に開催したセミナーでは、⾸都圏に住む20代の学⽣や社会⼈で、地⽅での事業づくりに関⼼のある⽅17名が南相⾺を訪れ、まちの課題を⾒つけ、課題の解決につながり・かつ⾃分が取り組みたいと思う事業アイデアを検討。農業・⾷・⼦育て・コミュニティづくり・PRなど幅広い領域にて、15事業アイデアが⽣まれ、南相⾺市⻑に向け発表会も実施しました。
令和4年度も17⼈全員が参加を継続。それぞれが提案した事業の将来的な実現と、南相⾺がより⾯⽩いまちになることを⽬指し、現地調査・ヒアリング、事業のブラッシュアップ、検証に取り組んでいます。

事業化実現プログラムは、私と同じような首都圏に住む20代の若者が南相馬市で事業を考えるプログラムだ。
各自には、自分の事業や企業などで活躍している大先輩(メンター)が相談役としてメンバー一人ひとりを担当する。
月に一度は様々なメンターから起業家に必要な考え方などの研修を受講することができる。さらに担当メンターとは毎月進捗報告や今後の活動相談を行うなど、良きアドバイザーとして起業を伴走してもらえる。

しかし、良い意味でこのメンターたちが曲者である。

いや、曲者というと語弊があるが、公務員やサラリーマンを歩んできた僕からすると物凄く突き抜けて自分を持っているし、自由に生きているように見えるのだ。

そんなメンターたちと一緒に、自分の人生をどう生きたいのか、何をしたいのか、それはなぜなのかを突き詰めることからはじまった。

当然ではあるが、公務員とサラリーマンだけを経験してきた僕と起業家の方々とでは考え方が合うわけがなく…。

当時の僕は、リスクが…、家族が…、将来の生活が…、などと往々にしてやらない理由を並べて、確実に成功する保証がある道を探してから始めようとしていた。
当然そんな道はないし、自分で失敗しながら切り開くしかないのだが、それを理解するまでに相当な時間を要した。

そうしてメンターやプログラムの仲間と何度も、何時間も語り合った結果、

ただ、自分が住む町を楽しくして、自分が楽しく生きたい

ということに行き着いた。

油断するとすぐに復興とか大義名分を持ち出して、カッコつけそうになるのだが、自分が事業を行う根源は自分が楽しく生きたいからである。

今は自分が住むマチで楽しく生きて、いつの間にかそれに共感した人たちが集まってきて、より魅力的なマチになればいいんだと思う。

メンター・仲間と語り合うワタクシの図

だから、僕は夫婦が出会う前からそれぞれの夢だった「カフェ」をやって楽しく生きることに決めた。

夢ならすぐにそれに向かってやればいいのに、
なぜか今まで一生懸命やらない理由を探していたことに気がついた。

そこに気づかせてくれたメンターや仲間に感謝したい。

こうして事業化プログラムを通じて真剣に事業を考えることとなった。

②南相馬で始めるカフェとは

ということで、私は自分が楽しく生きるためにカフェを開業することになったのだが、僕は自分が楽しく生きるには、色々な人がいたほうがいいに決まってるじゃん!というタイプだった。

だから僕は、

このお店を目的地に南相馬に来てもらえる

そんなカフェをつくることを決めた。

自分が住みたいマチを想像したときに、散歩や通勤途中にあるセンスのいいカフェがあると嬉しいのはもちろんだけど、全国からこの「このカフェに行ってみたい!」と思ってもらえるような場所をつくり、同じようにマチで楽しもうとする人が増えていったら凄く幸せだと思う。

妻は焼菓子屋さんで数年修行しており、技術とノウハウを身につけているため、菓子の製造は妻が担う予定だ。
あと裏方の仕事や接客、ランチの料理などは二人で担うとして、カフェに欠かせないコーヒーは、自称コーヒー好きな僕が担当することとなった。

妻と作ったキャラメルとイチジクのバウンドケーキ

ところが僕は妻のように修行して焙煎やバリスタの技術を習ったことはない。
3年間毎朝、趣味として手挽きでコーヒーを淹れて夫婦で満足する程度であった。

そこで、私の淹れるコーヒーが本当に顧客に提供できる価値があるか、レベルにあるのかどうかをテストすることにした。
また、個人的にはコーヒーは豆の味はもちろんであるが、コーヒーと向き合う自身の気持ちや空間で味が変わると考えている。
そのため、飲む場所・空間で感じる価値が変わるかどうかをテストマーケティングすることとした。

③東京にいながら南相馬で楽しいことをした話

テストマーケティングでは、

  1. 住宅で飲むコーヒー(日常)

  2. 喫茶で飲むコーヒー(日常の延長)

  3. 蔵で飲むコーヒー(非日常)

の3か所で体験者が感じる味に変化があるかどうかを実証することにした。

テストマーケティングの詳細は、参加いただいた方の記事をご確認いただければ幸いです。

テストマーケティングを実施するにあたり、起案した企画書の内容について1~2か月前から何度もメンターと打ち合わせを行い、修正を繰り返した。

自分の目線では不足していた観点をアドバイスいただいたり、テスト後に明確にしたいことの設定や企画後の振り返りなど企画書の中核部分についても、どのように組み立てるとベターかを教えていただいた。

また、MYSHの現地サポートも手厚かった。
通常であれば、人脈のない中で東京という遠隔地にいながら南相馬市でテストマーケティングを企画することは、現地調整が難しいことは容易に想像がつく。

現地でテストの実施場所の調整から集客まで一手に引き受けてもらっただけではなく、南相馬現地での宿泊やイベント支援はもちろん、現地の方との関係構築でサポートをいただいた。

3か所のテストマーケティングの後に、
南相馬市小高区の黄金色に輝く田んぼの中でもテストマーケティングを実証

このテストマーケティングでは以下のような成果があった。

  1. テストマーケティングで検証したいことが確認できた

  2. 地元との繋がりができて、そこからどんどん輪が繋がった

特に重要なのは後者だ。
テストマーケティング中にたまたま通りかかった地元の方が声をかけてくれたり、連絡をくれた。

「今度、朝市(マルシェ)をやるからコーヒーを出してくれないか」
「今度地元でイベントがあるのでコーヒーを出しませんか」

一気に地元でのイベントのお誘いを2件もいただいた。
東京からふらっとコーヒーのテストマーケティングをしに来た私に、そっと応援の手を差し伸べてくれる。そんなマチがどこにあるだろうか。

そのイベントのお誘いをきっかけに、さらに南相馬での活動は進み出した。
平日は本職の仕事を行うが、平日夜や土日はテストマーケティングの振り返り、次回の企画、イベント参加にあたって企画書作成・準備を行う日々であった。
その際は恥ずかしながらあまり余裕がなく、メンターには中途半端な資料を送ってしまうこともあった。にもかかわらずいつも丁寧にフィードバックをいただいたおかげで何とか当日を迎えることができた。

結果として人生初めてのイベント出店は大成功。
イベントを通じてなるべく多くの地元の方とお話することを目標としていたが、結果的にはイベント時間中ずっとコーヒーを淹れ続けてお話しできるくらいにたくさんの人と触れ合えた。
その中にはInstagramなどで応援メッセージをくれる人もおり、

「コーヒーとても美味しかったです」
「カフェ開業を楽しみにしています」

などと連絡を貰えると大変嬉しく、「やってよかった」心からそう思った。

イベント後の打ち上げで突如現れた生ハム原木

イベントで運営側になっても、東京から来ている僕にとっては当然「初めまして」の人が多い。でも気がついたらイベント終了後に、いつの間にか打ち上げのBBQに参加していたり、深夜まで一緒に語り合ったりしていた。

何度も言うが、こんなに容易く人を受け入れてくれるマチは他にない。
今、振り返ってみるとその受け入れ方が僕の移住と開業を大きく後押ししたように思う。

南相馬の最大の魅力は、人だと思う。

④この1年間を振り返って

この1年間で僕の人生は大きく変わった。
東京での暮らしを辞めて、サラリーマンを辞めて福島県で起業することになった。

それもこれも、

自分で事業を行うことはどういうことか

についてこの事業化実現プログラムで学べたことが大きい。

毎月の研修で起業家に必要な考え方を学び、毎月の面談で自分の事業進捗を報告・フィードバックをいただく。
そうやって少しづつアイデアを行動にして、事業にしていく。

行動が次の行動の種となり、色々な人と出会いながらどんどん進んでいく。

そんなチャレンジを経験したからこそ、大きな決断ができたのかも知れない。

この先のことは正直全然分からない。未来は予測できないし、もしかしたら数年経って事業がうまく行かずに東京に出稼ぎに戻るかもしれない(笑)

でもそんなことは99%ないし、僕たち夫婦ならきっと上手くいくと信じている。

事業化実現プログラムを通して、メンターから的確なアドバイスをいただける環境があるし、地元の人との繋がりもできて応援してくれる人がたくさんいる。

これからのことを考えるとワクワクした未来しか待っていない。

夫婦で考えたお店のロゴを付したショップカード

最後に…、
ぜひ僕たち夫婦のこれからを温かく見守っていただければ幸いです。
みなさま、改めまして今後ともよろしくお願いいたします。

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