「運び屋」

源田の毎日映画 6日目は巨匠クリントイーストウッドの「運び屋」。流石巨匠、脱帽である。

まず主人公タタのあの絶妙な老害キャラが面白い。インターネットアンチが酷くて、私の学校の世界史の先生のようだ。しかしこれを時代を受け入れられてないと批判するのは一面的で愚かなので黙っておく。
90歳の老人がコカインの運び屋をやるというだけで面白いのに、なぜこんな上質な映画に仕上げられるのだろう。イーストウッドの映画は大体2時間くらいなので非常に見やすい上に質が高い。何気に現代の映画監督の中で1番の監督なのではとたまに思うが、なんだかんだ超高級な焼肉よりも回転寿司くらいの方が良いと思ってしまう精神が働き、その考えは否定されてしまう。
ローレンスフィッシュバーンは声だけでもう存在感がえぐい。「マトリックス」のイメージが強過ぎて、先日の「ジョンウィック コンセクエンス」でもいつ両手から赤と青の錠剤を出すのかワクワクしていたくらいなのに、今回の警察署長もなかなかの存在感だった。
呑気な老人と裏社会の殺気立ったヤバい奴らの対比が面白い。ハラハラするとこはハラハラさせつつも面白いとこは面白くする。この緩急がやはり映画には欠かせない。先日の「犬部!」はその点において最悪な映画だった。
老人が車の中で歌う歌や警察官に語った会話などやはりイーストウッド本人が演じることによってしか出せない味がある。結論家族は大事にしろという話だがその話を何倍も重くする見た目と喋り方がやはりイーストウッドにしか演じることができない。
家族パートだが、孫娘が可愛いのは言うまでもないが、おばあちゃんの危篤状態の演技が素晴らしかった。ほんとに今にも息を引き取るんじゃないかというハラハラを味合わせつつ、ほっこりした会話でバランスをとる。良い。
展開自体はまあ真新しさはなかったが、長回しのカメラワークや引きの田舎の一本道のショットなど見応えのある映像で観客を飽きさせない作りがもうほんとにすごい。

個人的にはあのボスを殺すのが急展開すぎてびっくりした。動機もなんか弱い気がして、日本のヤクザと比べたら海外のマフィアの下っ端の忠誠心ってそんなもんなのかなと思った。でもやはりイーストウッドの名画であることは間違いない。また明日も良い映画に出会えますように。

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