熱と愛

お笑い芸人として、自分で長所だと思える部分は単独ライブが面白い事と、文章が書ける事だけだと思っていて、平場で面白く振舞える気もしないし、いくら頑張っても平場なんて面白くなりようも無いと思っていた。

だから、3年目ぐらいまでは何も頑張らずただ後ろの方でボーっとしていた。その時に私と出会った人は「こいつなんだよ」と思っただろうし、実際言われた事もある。
そこから、苦手だとか得意とか関係なく、どうやら平場はみんな頑張るものだと気づいてからは試行錯誤して「その場で自分がどう振舞えば一番良いのか」という事を考えるようになった。結局正解は見つからずその場に合わせて言っても言わなくてもいいような事を言っている。
一番の悩みと言うほどではないが、ずっと心の奥には居座っている。

少し前から「○○が好きな人が集まるトークライブ」みたいなライブに出演する事が増えてきた。そこでは芸人としての立ち振る舞いがどうとか考えず、基本的には「これ好きだから話させて!」みたいな感じで臨んでいる。

何回かそのようなライブを経て気が付いたのだけど、そういう時の自分はめちゃくちゃ喋る。「自分はどういう風に見られているだろうか」とか全く考えず、熱量のままただ喋りまくる。ただ単純に「これのこの部分が好きでみんなと共有したい」という事しか考えていない。そして、その時の自分は他のライブと比べて圧倒的にウケている。
「それ」が好きな人が集まって「それ」について話しているのだから、当たり前だともいえるけど、でも他の平場では考えられないぐらいどんどん前に行っている。
その時ばかりは、この世界のすべてを肯定したくなる。


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