日本の食を支える十勝に降り立って

とかち。札幌から時間かけておりたった帯広駅は9月だというのに肌寒かった。
この旅の一番の目的は農業バイト。
北海道といえば広大な土地で大規模な農業を行っている土地である。

農業に関する統計資料には北海道が別枠で記載されることが多い。山がちな地形で小規模な面積で生産する多くの日本の農業とはあまりにもスタイルが違うためだ。

「農業バイト」という言葉も北海道以外ではあまり馴染みがないのではないかと思う。猫の手も借りたいほどに人手が不足しているのは北海道に限らないが、アルバイトを雇える経済力があるのかかというと話が違ってくる。
この農業バイトを通して思ったことは大きく2つある。一つは
・確かに日本の食を支えている。
・やっぱり生産現場って見えていない。

1つ目の確かに日本の食を支えているというもの。
これは広大な土地と畑に佇む大型機械を見れば一目瞭然だった。北海道の農家はお金持ちだ。北海道の子どもたちの習い事としてごく一般的なスケート系の種目。これらは月謝に加えてスケートシューズやユニフォームにお金がかかる。シューズは消耗品でもあるため、習い事としてでも続けるにはそれなりのお金が継続的に必要らしい。農家出ない家の子がスケートを続けるのは難しい。そんな話を聞いたことがあったし、数字として知ってはいたものの実感した。とにかく広がっている。これもまた桁違いの規模だけどプランテーションという言葉が浮かぶほどには圧倒された。

農業バイトの具体的な内容を記す。
私が行ったのは北海道鹿追町のじゃがいも農家。じゃがいもの中でも「とよしろ」という加工用のじゃがいも品種を栽培している。A級品はフライドポテトやポテトチップスの原料として工場に運ばれ、規格外のサイズや収穫時に切れてしまっているB級品とされるものは片栗粉に加工されるらしい。
そうか、国産馬鈴薯100%って書いてあるよなぁ。
加工用じゃがいものB級品から作られているのか。
腐っているイモは捨てられる。
ああ、やっぱり見えていないんだ。見ているつもりでも、やっぱり見えていないんだ。あまりにも遠い。

収穫に使用しているのは、ベルトコンベアーを挟んで大人が6人は乗れる「東洋農機のトップワン」だ。この収穫機を購入するために10町まで植え付け面積を広げたらしい。機材の購入に際して助成金を得るのに最低植え付け面積が指定されている。この規模になっても助成金とにらみ合いながら経営の選択をしている。これが農業。地方の政治家たちは農業保護に力を入れると謳うことで票数を獲得している。これが農業。農業従事者数が圧倒的に多い地方の小規模農家は生産力こそなくとも、頭数がある。地方の人口でその力を示している。構造的に出来上がっているから農業保護に関しても抜本的な改革は戦後以降行われてこなかった。

農業には本当にいろいろな思想や考え方を持つ人がいると感じる。企業同士の利権争いの鍵を握るのは、どれだけ消費者の恐怖心を煽ることができるのか。なんてこともある。自らの身体に取り入れるものであるから極端にもなるのだろうか。

大規模な単一作物の生産を行うことは長期的な栽培を妨げると言われる。日に日に進む大規模化によって生産効率ばかり上げてもその先にあるものはなんだろうかと思うことも多かった。
しかし、今回の北海道の農業を見て感じたのは、確かに北海道の農業が日本の食を支えているということである。ただただ、その規模に圧倒された。

やっぱり私達消費者は恩恵を受けすぎている。その先。その先。

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