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合わせ爪

(2023.03.22 「音のバランスの調整方法」加筆修正。03.01「音のバランスの調整方法」内に、大小の作り方、末尾ふわふわタイプについて注意書き を追加。)

箏で、二音 or 三音の和音をとるのを、「合わせ爪」と言います。

和音のいい音とは

「組み合わせる音が均量でバランスがとれている」こと
一音だけ飛び出てて他の音が小さいのは、あまりいい和音とは言えません。
でも、親指は強い音が出やすく、他の指は力が入りにくい、という人が普通です。そこを意識的に修正しながら音を出せるようになるのが、一番のコツかも。

まずは二音の合わせ爪から。

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■ 合わせ爪の基本

① 掴み込みのときは握力で

*掴み込み=ここでは、手の支え(薬指)を置いた状態でやる、合わせ爪のこと。
薬指をおいて、合わせ爪の形をとったら。
動かすときは、爪は絃に対して立てたままで、握力で絃の上を通過させるような感じです。
爪を寝かせると、曲面で絃の上を滑ってしまい、力が逃げてしまって、音が鳴りにくいです。
(反り指の人は爪が寝やすいので、力を入れるときに手が「コ」の字・親指が「く」の字での掴み込みだと、爪が立ちやすいかも)

爪を斜め下へ入れるように、と言うこともあります。力を逃がさないように、爪を強く押しつけて弾くと、強く太くずっしりとした和音が作れます。
音を「束で出せ」と言われるときはこの方法かも。

 音のバランスをうまくとる

普通にやると、たいてい二音の音が同じ音量では鳴らないです。
親指の方が大きく、その他の指が小さい。
掴み込みの時の修正のコツは、心持ち中指(or人差し指)を手前へ強めに、引っ張るように入れる。支点に近い指は少し動かしづらいので、なるべく親指と同程度の力を入れて動かす(同じ量の音がでる)ように、意識的に使います。
自分ではわかりにくいので、音のバランスを誰かに聴いてもらって、親指の音と釣り合う弾き方、力の入れ具合を覚えるといいかも。

 ☆ 中指の爪の使い方

掴み込みの時、爪を絃に平行に引っ張ると、面であたるので、抵抗が大きく力がいるかも。
爪の、薬指側のへりをあてるようにすると、少し楽な上に、音質もハッキリして、大きく聞こえるようになる。かも。
ちょっとだけ、傾けてみて下さい。

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② 持ち上げるときは「コ」の字

手の支えなしで、手を持ち上げる形で和音を鳴らす方法。
爪と爪が、向かい合っている状態が一番力が入れやすいので、平行になるように、「コ」の字の形に手を作ります。
絃を掴むときは爪先の角、できれば3mmくらい、その部分に集中して。
(ご飯粒とか、豆をお箸でつまみ上げるときの、指よりももっと先のギミックを動かす感覚です。生の指までしか神経がいっていないと、爪が深く入りすぎて、爪の曲面で絃を触ることになり、滑ります。お箸の感じですよ)

*この掴み加減、爪の向きは、消しゴムをつまみあげる練習をすると、感覚がすぐ分かると思います。つまんで、落とさないように持ち上げて下さい。
その感覚で、絃を掴みます。

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うまく絃を掴めるようになったら、持ち上げ方。
「コ」の字の形のまま、絃を掴み、指先を固めて、「そのまま」上へ引っこ抜きます。絃が爪から放れるだけで鳴るので、慣れれば楽かも。
掴む意識が強すぎると、指が内側へ曲がって、爪の先端側のヘリで絃をこするジャリッという音が入りやすいので、ぎゅっと握る感じに指を曲げないように。あくまで、上げたときもそのまま「コ」の字をキープ。
(この記事のヘッダー画像を見てもらえば、爪が平行のまま上げられてるのがわかると思います)

この方法だと、軽やかで響きに丸みのある和音になります。あと、速度対応も可。

 ★ 爪があたって「パチン」

絃から手を持ち上げるときに、爪同士があたる「パチン」「カチン」という音を嫌って、指先を逃がすのにひねり気味クロス(親指を内側へ曲げる)をしてしまう人が多いんですが、最初は多少あたっても気にしないでいいです。できれば気にせずそのままで。

クロスのクセがつくと、手を直すのに時間がかかってしまってかえって回り道なのと、親指の爪の先端側のヘリで絃をこすったジャリッという雑音が入りやすく、力がナナメに逃げているせいで音量もあまり出せません。いいことなし。
指を固定する力が弱いだけなので、半年くらいたてば爪はあたらなくなります。もっと早く改善したければ、握力グーパーと指トレをしましょう。
(指トレについては、以下の記事をどうぞ)

音のバランスの調整方法

*持ち上げる形を前提としています。
音量=爪のかかり具合によるので、”爪のかかりの感覚を把握する練習”をします。
単独で、コの字の中指( or 人差し指)のみの、爪の先3mmくらいを絃にかけて、手を上に上げて鳴らす。「ピッチカート」の爪版のような動きです。
指の力のいれ具合を、少しずつ手に覚えさせるように練習します。

*この時、大事なのが、「第二関節」に力を入れて、指先・爪をしっかりさせること。力が抜けていると、絃に負けて、音として鳴りません。
ここで第二関節の訓練として指の力が足りないと思う人は、握力の筋トレしよう。指トレはひとつ上にリンクを入れたのでそっちで見てね)

大きな音を作る時:

「ぴん」という音で、「大きく聞こえるような」音質をつくれれば、そこまで力尽くで頑張らなくてもいいので、まずは強い音を出すための関節の力のいれ具合を覚えましょう。

◆ 二音の場合。
中指(or 人差し指)と親指とでしっかり絃を掴み、和音を鳴らし、よく聴きます。よく聴く。
これが自分で出来ない場合は、誰かに聴いてもらいましょう。
和音の内訳、バランスを見て、音の粒の大きさが二音の二つ共でそろうように、中指(or 人差し指)の指先の調整をしていきます。深すぎず浅すぎず、強くしっかりかけられるように。

(爪の向きについて。
平行で掴むと力が入らず滑る場合、やや下に差し入れて持ち上げる感覚ですると強めに出やすい。龍尾側の横から見て爪が「リ」ではなくて「ソ」の形。わかるかなw
これは、人差し指・中指の、単体での「かけて-上げる」練習をすると、どれくらい下から絃に当てればよいのか、指の固定はどこにどれくらい力を使えばよいのか、が分かってくると思う)

これを何度か繰り返して、うまくバランスが取れたときの力のいれ具合を手に覚えさせるような感覚で、繰り返し練習します。

◆ 三音の場合。
中指よりも、人差し指のかかりが悪いことが多いので、人差し指の調整をメインに、三本それぞれのバランスを取れるように調整します。これはちょっと時間がかかるかも。
ここも同じく、音をよく聴いて(聴いてもらって)、音同士のバランスを見て、調整を進めていきましょう。

(私は音を色に近い感覚でとらえているので、例えるなら、音同士の均一感のない時には混色バランスのちがった色のように感じられます。なんかちょっと違う、という程度の違和感。でもそこを曖昧にせずに追求するのが大事。
絃の音色を一音ずつ確かめて、もう少しこの音を多めに入れたい、と思ったら、その指を強化し修正します)

小さい音を作る時:

 小さい音は、爪先で「針のような」音を作る。この小さい音こそ、指先の力がないと美しく作れないので、とても難しいですが、音質の一定の・均質な・統一感のある音作りには必須ですので、上級生曲、ひとり1パートになる前には、身につけておきたい部分かも。

 響きの聞き取れる程度の、とても静かな場所で練習することをおすすめします。

 爪で絃をそっと摘まんで、一音ずつ丁寧に、静かに。音質は変更せず、端正な音作りから。
 この時の動作のコツは「アクセル踏みつつブレーキも踏む」感覚です。分かりにくいですね。と思うけど、でも実際そんな感じです。
 力を入れすぎず・抜きすぎない。しかし絶妙に前進する拮抗具合、このバランスの統一感を保ちます。

 この絶妙な力加減は、適当な基礎練習では追い切れないので、ぜひ、音の変化が分かる静かな環境で、摘まみ方、爪の深さ、力加減、その組み合わせを追求して下さいね。
(一年生は、まず大きな音での練習をしてからの方がいいです。小さい音はバランスの聞き取りが難しいから、修正として二重に難易度が高い。これは教える側からの感想ですが)

練習中の調整方法は二音の時も三音の時も、上の「大きな音を作る時:」の方法と同じです。大きな音が作れるようになっているなら、小さく音を出す時の指の形は共通、ほぼ変わらないので、小さい音の練習の場合にはもはや指の調整は必要ない事が多かったような。絃の触り方で雑音が出るとか、そういう相談が多かったような。
(雑音は爪のヘリの擦過音が問題になることが多く、=握り込む形の手の使い方(指の固定が甘い点を動作によってカバーする)をしていて、学年が上がってからも基礎から手を見直すパターンだったりのこともわりとありました)

* これは上級生向け。
pppは特に曲に合わせた表現が大事。
なので、演奏会前など時期を変えて、基礎練習の時から目指したいイメージをもとに進めると、より美しい音作りに近づけるようになると思います。

例として、遠い星のキラキラ(幽玄、だが少しの動きがある)、氷の表現(透明感がありエッジを持つが静止している)、など。
イメージの力を取り入れましょう。
曲中でのppp、特にソロ、弱くても強い音が表現として必要なことの方が多い気がするので、透明度や音の通り方は、爪の使い方と楽器性能の使いこなしを研究してみるといいかもです。

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■ 左手の和音

左手は、爪をはめていないので、楽です。絃を指先の感覚そのまま掴んで持ち上げて放すだけ。
ですが、ピッチカートの時と一緒で、深く指を入れると、いい音が鳴りません。指のかけ方はピッチカートの記事を参考にして下さい。

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左手の和音、伴奏でよくあるのですが、同じ和音の連続の時は注意

鳴っている絃に指を置いたら、その瞬間に、音が消えます。「プツッ」という感じの変な空白ができてしまって、意外と目立つんですねこれ。
特にテンポのゆっくりのとき、ゆったりとした気分で手を置きがちなので、よくあります。「ぽーん プツッ・ぽーん プツッ」ってなると、興ざめです。
( =「休符も音の一つ」なので、この消えた音(空白)は、「雑音」であり、邪魔という扱いになるわけです。意外と本人は気がつかないことが多いから注意)

このよくやりがちなやつの回避方法は、十七絃講習会の記事でも書いた、「同音鳴絃」のさわり方と同じ。

限りなく一瞬だけ触る。
これ、けっこう難しいので、瞬時に掴んで一瞬で放す練習をして下さい。
なので、まず、いい音の出る掴み方を習得して、そのあと速度対応させるのがよいかと。
(このあたりのことは、ピッチカートの記事にも追加しました。内容がかぶっていますが、それだけよくあるwことなので。)


■ 速度対応する場合。(追記)

上下運動は限界まで削って下さい。
時間のロスがどこで発生しているかは、音の隙間がどこにあるかを聞き取れれば、原因を探すことが出来ます。
(「理由があっての結果である」というのを忘れない。条件分岐的な感覚を持って探すといいかも)


■ (注意書きあり。応用編:合爪・ふわふわタイプについて)


 ここからは応用。
 p~ppp、ふわっと、雰囲気だけの音が限定的に使いたい場合。

追記。
*これは、基礎練習ではやらないで下さい。
どうしても必要な時以外には使わない奏法です。どちらかと言えば「表現的に、どうしても、消去法的に選ばざるを得ないときだけ」の方法。なので、これを初心者さんに教えることはまだやめておいてね。

一・二年生は、「爪先を使う基本的な奏法で、小さい小粒ダイヤモンド(=ppp)の音を生成する」意識で、きちんとした基本練習をやりましょう。

この曲面で作るふわっとタイプは、ダイヤモンド的なキラキラ基礎がやれるようになってからあとの、応用編です。

 爪の面の丸みのある部分だけを使います。爪の先・ヘリでは絃に触れないのがポイント。いつもの合わせとは真逆の方法です。
 これは爪を外して、指で感覚を掴む方がいいかも。「つ」の手の形で、指の腹だけで絃を滑らせるようにゆるくつまむ。音を鳴らさないように。指と絃との接触面が大きく、スルスルという皮膚の擦れる音がする、いわゆる「良くないピッチカートのつまみ方」。
 これを、爪をはめてやると、ちょうど指先の位置、爪の中央から下角にかけての面の部分だけで、スルッとした感触のフワッとした響きだけが出ます。

20211205_ふわふわp合わせ爪

 指を曲げるとへりっこまで使ってしまうから、絶対に指は曲げない。手の形は変えずに、触れたらそのまま滑らせて上に手をあげるだけ。
 爪を最後まで絃に押しつけないように気をつけて。

 指を曲げないようにしててもサリサリと雑音がする時は。絃に対して、2.3の爪が完全に平行に置かれていない可能性。へりがふれていないかどうか、角度、位置をチェックして下さい。


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この、いい掴み方ができるようになると、右手・左手のアルペジオへ発展させられますので、合わせ爪はよく練習しよう。
苦手な人は時間をかけてでも、クリアしておくと、あとが楽ですので、クセの矯正とか、がんばろうね。

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