見出し画像

「音質」を意識した音作り

合奏で、頑張っても形になった気がしない、特に音量変化を頑張っても思ったようによい感じにならない、と感じたとき、何を改善しますか?


☆ 音質に注目しよう。

箏に限らず、よい音って、どんなものですか。
多分、人により、その時々で、「よい」音という定義は変わると思います。
なぜなら。曲・場面によるからです。

硬質で澄んだ音が「よい」ときもあれば、軟質でとろけるような音が「よい」ときもある。はたまた、雑味があっても強くて荒々しい音が「よい」ことだってある。

部活で多かったのが、単に「音量の大・小で幅をつけよう」と頑張ってしまうこと。
変化をよりよくつけたい = 差を出してアピール力を持たせたい、そういう時のバリエーションをもつ必要があるのでは。
そうでないと、いつまでも何とかの一つ覚えみたいに「もっとフォルテがんばって出して!」ってやっちゃう。

音を大きくする・小さくするのではなく、「色を変更する」ようにするのも、「変化」のつけ方として、有効です。
場面の良さを出すことや、曲の構成の目的を考え、音質を「選ぶ」「そろえる」ことができるようになろう。

箏の場合のみですけど、物理的な手法で、バリエーションの作り方を書いてみます。
(心理的精神的な手法での変化のつけ方、表現の追求については、別記事「感情を音に乗せて、音の雰囲気を変える。」へどうぞ。)

✁-------

音質で差を出す

音質を変える方法は、以下の3つ + 音量との組み合わせでバリエーションが作れます。いくつかをパターンとして持っておく程度でOKかな。

①弾く位置
②爪の立て方
③爪のかける量
( + 手の使い方、指先の力のいれ具合)

✁-------

① 弾く位置

弾く絃の位置で音質は変わります。
手指の細かなコントロールが難しい初めのうちは、これを使うと少し楽かな。
ただ、これは特に柱に近づけたときに手の移動が見た目でわかっちゃうし、音質がいきなり変わるので、「あからさま」感が出ちゃうことがあります。ほどほどにさりげなくですw

★ 端っこ、龍角に近い方→
硬質でキチキチした音。音のとおりがよく雑音もそこまで響かない。ただし音は金属的・無機質に近くなり、情緒表現は抑制されるかも。

★ 普段よりも少し柱に近い方、中程(沖と言う人もいる)←
軟質で響きが長めに残る音。柔らかいが、音に「芯」がなく、特に雑音が大きく響くので、爪の入れ方使い方は注意。位置は中点より先へは行かない。

-------

組み合わせ例:
 「フォルテ × 端っこ」
フォルテの表現で音量を要求されて辛いとき、弾く位置を端へ寄せることで、音が通りやすくなって楽にそれっぽくなるときがある。
(フォルテの合わせ爪の時は、絃がギリつくくらい掴む。端っこ3cmくらい目安かも。強い音を出すときは強く絃に力を伝えるのはどこでも一緒だけど、ガッチリで)

「少し中程 × 後押さえ」
響きが長く残るので、2音目が聞こえやすいかも。ヲ(オ)ハ(後押さえ+放す、音が上がって戻る)の時も、余韻が残る方が聞こえやすい(伝わりやすい)。
ただ、そこだけいきなり音質が変わらないように、爪を立て目に入れるとか、対策を。

「少し中程 × 左ピッチカート + 爪」
左手ピッチカートに合わせて爪を入れる場合、音質をあわせるために爪で柔らかい音をとることも。
(逆に、ピッチカートを硬い音にして爪の音質にそろえる場合もあるので、柔らかい・硬い、どっちにするかはその時の判断。)

「少し中程 × 合わせ爪」
ふわっとした音でやりたいときとか。
連続の時は、十七絃講習の記事でも「同音鳴絃のさわり方」として書いたけど、瞬時に触るようにすると、雑音と音の途切れが少なくてよいかも。しっかり掴めることが前提。

「端っこ目→中程 × デクレシェンド × 音が下がるフレーズ+リタルダンド+そこで終了」 十七絃
徐々に絃上の弾く位置を移動させながら弾くのは、演出としてありです。
デクレシェンドの「表現」として、響かせながらきれいに遠ざかれるかも。
クレシェンドの時はどうだろう…違和感でそうかも?
(× 箏はクレシェンド・デクレシェンドの表現の時に、位置をナナメに移動させながら使うと、ワンフレーズの中で著しく音質が変化しすぎて違和感満載になるので、やらない方がいい)

✁-------

②爪の使い方

②-1 爪の 立てる・寝かせる

立てる=「ぴん」、寝かせる=「ぽん」。
使い分けができると、役割分担が楽になるかも。

★ 立てめ
爪が立ってる方が「ぴん」とした、ハッキリした音になります。

★ 寝かせめ 
爪が寝ている=曲面で絃に触る感じ。音の粒がそこまではっきりしない。やんわり。(ここ、爪が寝やすい反り指さんが苦労するポイントみたいな感じする)

-------

組み合わせ例:
「メインフレーズ × 立てめ」
くっきり前面に出したいとき。特に指先に力を入れて、爪をしっかりさせて絃にあてると音がくっきり。(弾く位置は、端っこすぎない方が響きがあってよいかも)

「上昇音(下降音) × 立てめ」
上昇の音で手を引っ張るとき、下降の音で手を押し下げていくとき。 爪は立て目にし、指先を固めて「ひじで・押す/引く」をする。音の間隔が安定するし弾きやすいです。
(寝かせていると滑りやすい。→グリッサンドと対照)

「中指(人差し指)× 立てめ × ヘリ」
中指・人差し指の場合、立てて+爪の「面」をあてて使うよりも、立てて+薬指側のヘリを使う方が、より効果的。ひじから手ごと手前に引っぱる。(あたる面積が小さいほど音がくっきりするのって、物理ではなんて言うのかなこれ、なんかありそうなんだけど)

「グリッサンド × 寝かせめ」
グリッサンドは、面で滑らせる方が抵抗が少なく、楽によく響きます。弾く位置で響きの持たせ方が変わるので、そこも変えると面白い。上昇音・下降音のキッチリした弾き方と真逆になります。
(グリッサンドはまた記事を書こうかな。全部ガシャガシャ弾かないのがコツねw) 

✁-------

②-2 爪をあてる量

絃へあてる量で、音質が変わります。爪のコントロールに気をつかうので、手・指先の力をつけないと、安定して音を出すのが難しいかも。

★ 爪の先を使うと、細く「ぴん」とした音。
繊細さ、透明度、鋭さ、などの表現の時はこっちかも。指の力が必要。

★ 爪の中程を使うと、太く「どん」とした音。
ぬくもり、やわらかさ、温度湿度、などの表現の時はこっちかも。
*一年生の内はこっちで、しっかり弾かせた方が無難。

-------

組み合わせ例:
「ピアニシモ × 細い × 立てる × 弾く位置」
音の透明度を保つ。これはけっこう使うのでほぼ必須かも。
爪先に神経を集中して、1音ずつ手指で丁寧に押し込むようにする。(指先だけで絃を叩くと芯がなく爪のあたる雑音が大きく鳴るので注意)

”弱音”であっても届かなければ意味が無いので、「距離感」を意識して、少し前へとばすように。
(音量に限らず、「聴く人までの距離」を意識できるようになると、表現は伝わりやすくなります)

*ピアニシモは、「弱い音=力を弱めて」という意識で弾くと、音質がスカスカのモサモサ(!)になりやすい。密度を薄めないよう注意。逆に、音を凝縮させるくらいの感覚で練習するといいかもしれない。

「フォルテ × 太い × 立てる × 弾く位置」
特に特に強い音がほしいとき。自分の前方100m先の物体へ音を突き刺す気持ちで発すると、かなり強さが出せます。手ごと入れる使い方。
(キープには手の力と体力がかなり必要なので、これでメインフレーズを弾きこなすにはかなり練習が必要かも。単音だと使いやすいかな、ここぞというときだけに。)
(個人的には、”雑音も荒さも迫力のうち”と思っているので、腕ごとたたき込むような弾き方もアリだと思うのですが、この判断は人によるかな…笑)

✁-------

③ 手・指の使い方を変える

★ 指先が硬めの時は「芯」のある音ができる気がする。

★ 抜いてあてるとボンヤリした音になるかも。

「指トレして」という理由はこの力加減ができるようになる目的もあるかな。「音に芯がない、音質がよくない」、と言われるときの原因も、多分ここら辺が大きそうな気がします。(一年生が音がか細いと言われる時もこのあたりで解決できるときがある。指トレについては「指トレのススメ」を見て下さい)

基本、弾くときに指の力はそこまで抜かないですが、
力のいれ具合 &抜き加減=演奏時の表現&体力温存
という、ふたつの兼ね合いがあるので…
(体力の温存には、どこで手を抜いていいか、というのは大事。でも、それがお客さんに伝わってしまうのはまずいので、上手にね)

-------

親指の使い方。
★ 跳ねるように入れると、「ぽんぽん」(うきうき)

これは動画の方が説明しやすいのだけど…w
ボールがバウンドするような動きで、手を浮かせて1音ずつ入れていくような弾き方、ホバリング+ローリングで瞬間的にあてる、十七絃の記事で書いたようなやり方。
音も弾んだ感じになります。バウンドするような「ぽんぽん」という音に。あまり演出として使う機会はないかな…意図せずこういう音がでてしまうことの方が多かったかも。手の移動が多いときもきちんと押し込んで弾こう。

✁-------

イメージは音質で作る。音質の統一で、違和感を削る

タイミング・フレーズの形などは合ってるのに場面としてまとまらない、そういうとき、できるだけ悩まずに、打開策の提案と効率のよい試行錯誤ができたらいいな。
①場面のイメージを言葉で共有しておく。
②それを形にする方法として、音質を使う、音の形を「そろえる」。
まとまらないときの違和感の削り方のひとつとして、覚えておいてほしいかも。

音質を考えるって、弾けるようになってからようやく意識できる部分だと思うので、けっこう余裕がないと難しい気がします。時間がないとできにくいとこ。(時間の確保が大事になってくるかも?)

音の優先順位のつけ方、合奏の整形のコツについては新しく記事を書いたので、下をどうぞ。


-------

あと修正に大事なのが、聴き役。違和感を見つけられる人がいてくれると助かる。
これも、得意不得意があると思うから、得意な人はより伸ばしてほしいし、今得意でない人も、今後必要なスキルになるから頑張って伸ばしてほしいな。(感性の伸ばし方についてのメモは「音楽の心技体」の記事に少しだけ書いたけど、不完全なので、色々試してみてほしい)


他にも、フォルティシモの作り方・ピアニシモの作り方に関連して、こちらの記事を書いたので、時間があればどうぞ。

追加で、全体の音量の感覚についての記事を書いたので、こちらもどうぞ。


↙左下の♡マークをポチして下さるととても喜びます。(未登録の場合はポチのカウントのみです、ご安心を) よろしくお願いします❤️ もちろん投げ銭サポートもできればよろしくです!