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我々はニッパチの2割をクリエイティブできているのか?

私は花王という会社が大好きなのだが、花王の研究者に向けた原則の中にニッパチの法則という言葉がある。

花王の研究者のための2:8の法則とは

一般的なマーケティング用語におけるニッパチとは、全売上の8割を上位2割の顧客が生み出しているというもので、いわゆるパレードの法則と呼ばれるものだ。

一方で、花王研究者のためのニッパチの法則は、上記とは趣旨が大きく異なる。リソースの8割は会社にとって必要不可欠の研究業務をし、残り2割は研究者として自分が気になるテーマを自由に突き詰めていいという、柔軟な発想(伸びしろ、余白、遊び)のための時間が与えられるという比率のことを指すのだそう。つまり売上ではなく、働き方の黄金比を示した言葉なのだ。

この2割の自由が、今はないヒット商品の起点になる

私の会社でいうMUSTとWILLという言葉で表現されるものだが、この2割の自由があることで、花王の歴史を揺るがすようなヒット商品に繋がることもある。

今やドラッグストアで見ない日はないだろう「蒸気でホットアイマスク」や「本格的な香りを選べる柔軟剤」なども、この2割の自由研究から生まれた商品なのだそう。

これって社員目線で考えるとものすごいことで、トイレタリー商品ということもあるが、他社が市場を作ったあとの模倣では絶対に勝てない。既存のロングセラー商品に甘んじて胡座をかけば、企業に未来はない。そのためには、研究者(社員)のための2割の余白が大事だと、会社がきちんと理解しているということ。(もちろん、その2割は遊んでいいわけではなく、きちんと商品開発に生かせる文脈になっているか…という原理原則はあると思うが)

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研究畑を歩んできた澤田社長ならではの嗅覚

このニッパチを支える根底には、自身が研究畑を歩んできたという澤田社長の視点が大いにあると思う。大ヒット紙おむつ「メリーズ」を作った張本人でもある澤田社長の口癖は「本質研究」。泡、匂い、髪、皮膚…様々な分野であらゆる本質を研究し、徹底的にそのメカニズムを解き明かすことこそ、消費者が欲しいと思う商品を正確に作り出せるという考え方だ。

例えば、世界のP&Gから食器洗剤市場をもぎ取った「キュキュット」も、そんな本質研究が生んだ商品。基本の8割を、どう研究者に課しているのかが表れているような言葉でもある。

研究者は偏屈な人も多いが、社長自らの研究者としての嗅覚があるからこそ、2割の伸びしろの重要性を信じられるのだと思う。そしてその叩き上げこそが、マーケティングとの接点を作るハブにもなっている。本当に素晴らしい会社だなと。

その2割を、私達は仕事に生かせているのか?

そんなふうに、研究者(社員)のポテンシャルを信じている花王という会社の姿勢に、私自身はいたく共感するし、研究者が心底作りたいものを形にする熱量が世の中を変えていくところにストーリーすら感じられ、その意味では消費者にとって(少なくとも私にとって)はファンマーケにすらなっている。そんなふうに世の中を変えてくれて、ありがとう!と叫びたい。

いまのうちの部署はどうだろう?

この2割の伸びしろを持たなくてもいいのだろうか?

会社の強みや質の安定感を伝えるために型化が大事なのは理解する。全体視点では不可欠だとも思う。しかしそのMUSTだけで10割以上を浪費してしまっていいのだろうか。研究者とクリエイティブ職が似て非なるものだと言われればそれまでだが、それでも、新しいモノコトを発想するとき、属人性は悪ではないはずだ。圧倒的な市場価値を創る際に、クリエイティブにも2割の遊びは必要なのではないか?個人個人がものすごく面白い!と思う視点を突き詰める熱量の先に、新たな市場価値が生まれるのではないか?

花王のニッパチの法則に、自部署の未来を真剣に考えるきっかけをもらった今日この頃でした。

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