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ブータンポップスを聴く【入門3曲】

最近(?)巷ではアジアのポップスが流行っているらしく、ならブータンポップスも布教するしかないと思い書き始めた次第です。

2011年にブータン国王夫妻が訪日後、日本ではブータンブームが起こりました。ですがそれも束の間のこと。美男美女のロイヤルカップルと「世界一幸せな国」で一躍知られるようになったブータン。しかし、ブータンがアジアの一国だということも実はあまり知られていないのが現状です。音楽を通してブータンに少しでも興味を持っていただければ嬉しい限りです。

ところで、私とブータンとの関わりはまだ6年程ではありますが、ブータンと出会って以来、ブータンポップスは私を魅了し続けてきました。何が良いのかと言われますと説明するのが難しいわけですが、この感覚はアジアのポップス沼にずぼりとハマってしまった人なら共有できるかと思います。

とある番組で甲本ヒロトさんが「今の音楽」について、「歌詞を聴きすぎ。アナログの頃は音で全部聞いていた。だから洋楽だろうがなんだろうが全部カッコよかった」と語っていたのを覚えています。未知の言語で歌われる音楽を楽しめることは、「音を楽しむ」という本来の意味での「音楽」を体験することと近いのかもしれません。もちろん、ハマってしまって言語を勉強すれば歌詞の意味も気になってしまいますが、とにかくまずは聴いて楽しむしかありません。

そこで今回は、知られざるブータンポップスの幾多の名曲の中から「まずはこれから」の3曲だけを厳選し、ご紹介いたします。ぜひ聴いてみてください!

La Nye Ngam - Misty Terrace

ボーカルのTandin Wangchuk率いるブータンを代表するバンドグループMisty Terraceより一曲。ブータンポップスを牽引するグループ、ブータンポップスの象徴として出てきた第一人者といっても過言ではありません。

他のグループが西洋やボリウッドの影響を強く受けるなかで、Misty Terraceの音楽は歌詞や曲調にブータンの伝統を上手く取り込んでおり、ブータンポップスを初めて聞く人にとっては新鮮さが味わえるかと思います。

本曲を含む2ndアルバム「Himalaya Juu, The Last Himalaya」には、「Tshering Changmo」「Taktsher Meto」などブータン音楽の伝統的ジャンルの様式を取り入れた作品も収録されており、広く楽しめる作品になっています。

また、本曲はブータンの国語であるゾンカ語ではなく、ブータン東部で主に話されるシャルチョップ(ツァンラ)語で歌われています。多言語国家であるブータンならではでしょうか、様々なローカルの言語に気軽に触れられるのもブータンポップスの魅力の一つです。

Choe Da Nga - Sonam Pem

私が勝手に「ブータンのYUI」と呼んでいるシンガーソングライターのSonam Pemより一曲。アコースティックギターの良き音色と透き通る歌声が風に乗ってヒマーラヤの山々に響き渡る様が、背後に靡く祈祷旗もあってか強く感じる演出となっています。

ブータンポップスの特徴の一つは、アーティストの多くが他の職業を掛け持っている点にあります。Sonam Pemも本職は学校の先生であり、他にも大学の学生や俳優の方がよく歌っています。

それは言い換えると、プロのアーティストと呼べる人がブータンにはあまり存在せず、多くのアマチュアが気軽に挑戦できる土壌があるということになります。毎日のように新しいアーティストの音楽が配信され、豊かさを増していくブータンポップス界は飽きることがないのです。

Where is it - Chogo (Kunzang Chogyel)

2018年にラッパーとしてのキャリアをスタートさせたChogoことKunzang Chogyelの代表曲。2019年に大人気となったブータンのラッパー集団「BLACK SQUAD」の正式メンバーでもあります。

彼のミュージック・ビデオは、今日のヒップポップ・カルチャーだけでなくブータンの自然美も表現しており、映像だけでも十分に楽しめる作品となっています。

また、ブータンでは公用語として広く英語が話されており、彼の曲も多くが英語で歌われています。それもあってか最近は海外にも彼のファンが増えており、Chogoは今注目すべき若手ブータンラッパーの一人です。ヒップポップをよく聞く人に「ブータンにもこんなに熱いアーティストがいるぞ」とおすすめしたい一曲です。

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こんな感じでブータンポップス【入門3曲】を紹介してきたわけではありますが、選ぶのに相当悩みました。ここ最近のブータン音楽界では、映像制作の技術がより身近になったこともあり、新しいレコードレーベルが次々と誕生し、若手のアーティストも沢山デビューしています。それらの音楽もまた紹介していけたらと思います。

また、冒頭で歌詞よりも音を純粋に楽しむべきだと述べましたが、初めはそれでよいと思います。ただし一度沼にハマった身からしますと、ブータンポップスの更なる魅力は歌詞を理解してこそ感じ取れるものでもあります。

そのためには、ブータン社会に根付くチベット仏教の教義的要素、それと長く関わりを持ってきた詩的要素、農耕民と高地牧畜民、そしてヒンドゥー文化をはじめとする多民族との交流のなかで培われてきた独自の文化的背景を知り、ゾンカ語やシャルチョップ語をはじめとする20近くの言語を理解して初めてブータンポップスを存分に味わえるとも言えるでしょう。

それはとてつもなく長い道のりに聞こえますが、ハマるというのは恐ろしいもので、私もその極地を目指しています。これを機会にブータンポップスそして広くブータン音楽に興味を持っていただき、私とともに極地を目指していただけたら嬉しい限りです!それではまた!

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#スキな3曲を熱く語る  

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