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そのご 名を宿したのは


お久しぶりな、理姫さん(可愛い連中/ex アカシック)の歌詞を考える短期連載。もはや短期連載の定義はわからない。

今回思いを馳せるのは、題名のない音楽会。

ではなく、題名が歌詞に登場しない楽曲。


なんかよくないですか、歌詞から連想できない曲名。

なんかワクワクしませんか、想像が捗る感じ。



※今回は長くなりました。


題名が歌詞に登場しない楽曲

ヨコハマクール
アルカイックセンチメント
鶺鴒
ノンフィクション
溺愛
真夜中のクローンラベル
オールドミス
結婚
華金
夢遊
いちかばちかちゃん
マイラグジュアリーナイト
エンジェルシンク
you&i
エロティシズム
LSD
Death is Not the End
禁煙成功
エリザベスロマン
かしこい食卓


題名が歌詞に登場しない楽曲のうち、歌詞から題名がある程度推測可能なもの

(ある程度テーマに適合する題名であるもの、歌詞の描写に関連する題名であるもの)


ヨコハマクール/ 「伊勢崎町」という歌詞あり。
溺愛/サビの歌詞が「愛してる」
真夜中のクローンラベル/「明日も仕事だ寝なくちゃ」という歌詞から、真夜中であることが判断可能。
結婚/「君の朗報に乾杯」しているので結婚=朗報。その後「流し台に全て捨て」てしまいますが…
華金  「パリパリナイト」、「見慣れない夜」他、浮ついた夜の描写あり
マイラグジュアリーナイト/「贅沢に悩み」=ラグジュアリー? 「一日喪に服し」「内緒の隙間で陽を待つ」=ナイト?
LSD/歌詞には登場しないが発狂している声あり。 ちなみに、LSD=リゼルク酸ジエチルアミド…なんのこっちゃかよくわからんがとにかく幻覚剤らしい。
Death is Not the End/ 同じ題名の曲がいくつかあり。引用の可能性。 なお、歌詞に登場する「死んでも許せないお話」というフレーズが理姫さんなりの題名の和訳では?(もしそうだとしたらセンスの鋭利っぷりに貫かれて私は悶える)
エリザベスロマン /「パリでスリやっている夢」のことなのか…?とにかく「パリ」は出てくる。 ちなみに「エリザベス」は英語圏の名前。パリというかフランスだと「エリザベート」。なんとなく、エリザベートロマンだとシャキッとしない気もする。
かしこい食卓/「夜のキッチン」との描写あり。



歌詞から曲名を推測することが難しい楽曲

ここから本題。


アルカイックセンチメント
鶺鴒
ノンフィクション
オールドミス
夢遊
いちかばちかちゃん
エンジェルシンク
you&i
エロティシズム
禁煙成功 

もはや「禁煙」どころか煙草にまつわる描写すらないのにこの題名になった「禁煙成功」は代表格。

ちなみに煙草については考察しました。ちゃんと(とは何か)「禁煙成功」する迄の喫煙率を数えております。

さてさて。この中から私が特に気になっている題名について数曲ピックアップ。


鶺鴒

酩酊しそうな程好きな曲です。ご一読ください。

マスカラは落としてからの方が良いかもしれません。

鶺鴒とは、鳥の名前なのですが歌詞の中には鶺鴒どころか鳥っぽい描写もなし。深まる謎。

https://ja.wikipedia.org/wiki/セキレイ

上記、ぜひ見てみて下さい。別名の件に、こんな名称が記されています。

イシクナギ(石婚ぎ)、<中略>コイオシエドリ(恋教鳥)、トツギオシエドリ(嫁教鳥)

めっちゃお嫁に行きたそうな鳥。

なんて不躾な言い方をしましたが、『日本書紀』ではイザナギとイザナミに性交の仕方を暗に示した鳥として登場する不思議な鳥。イザナギとイザナミなんて日本のアダムとイブ的存在に関わりを持つなんて、やっぱり恋とは切っても切れない鳥なのです、鶺鴒。

最後の幸せに照れるあたしも阿呆らしい

こんな風に、綺麗に片付けようとしている恋の終わりにすら自己嫌悪に苛まれる、孤独で幸せ慣れしていない主人公。そんな曲に、「鶺鴒」と名付けた意図。分からなければ分からない程、そそられます。

ちなみに、フォロワーさんからは別の考察を教えていただいたことがあります。皆さんはどうでしょうか。


エンジェルシンク

「鶺鴒」同様、私が好きで好きで仕方ない曲。こちらもすっぴんで満を持してお読みください。

さて。検索してもヒントが出てこない2単語の化合式。なぜこの単語は巡り合ったのか。

まず、エンジェルから。

「聞き分けのいい子供」「正体不明の像」あたりの意味が気になります。ていうかエンジェル=天使と短絡的に思ってましたが深い単語ですね。表意文字文化に慣れすぎているなという反省。


続いて、シンク。

「sink」には動詞もあるし、動詞ならそもそも「think」もあるけれど、「エンジェル」が主語で「シンク」が動詞なら三人称単数現在のsが必要なのでは…という易しい中学英語ちっくな判断で「シンク」は名詞と仮定。

名詞が連続しているので一単語目は「エンジェル<の>」と形容詞的な扱いになり…

ああ辞めた辞めた。大した知も持たないのにこんな攻め方しても終わらない。


とにかく名詞「シンク」だとすると、台所のシンクとか、排水溝とか、みぞ、掃き溜めという意味にたどり着きます。


私たちがよく知る意味で考えると「天使の排水溝」。

他の候補で攻めると「聞き分けのいい子供の掃き溜め」とか。

後者……辛すぎないか曲名の時点で……(絶句)


なお、「エンジェルシンク」で私が最も好きな歌詞はこちら。

目が乾くほど暖めてきた部屋に戻るわ
飲み切れず残してきたけど
長い夜にシラけるわ

もしこれが、「聞き分けのいい」ふりをして別れを告げた後の心境だとしたら、後者の解釈でも通じるかもしれません。いやでも正解はわからなくていい。あいまいな余白こそ、愛が育まれる隙間。


アルカイックセンチメント

いっちばん曲名についての答えを見いだせないのがこの曲。バンド名「アカシック」に何らかのかかわりが…?と思っていたが、バンド名も由来不明。謎が謎を呼ぶ。


「古拙(古風で拙いが味わいがあること)」が一番近い和訳のようです。ギリシア文化とか言われますと私にはもう…分厚い資料集から太字だけ覚えてヤマはってテスト終了とともに記憶から滅却した高校生の頃の後悔しか…


感情。情緒。感傷。こちらはシンプル。センチメンタルの名詞ですね。


そのまま足し算すると「古拙な感傷」。

やっぱり「感傷」はすんなりかみ砕けるのですが、「古拙」となると「何が」と訊きたくなります。古きものとは、それは一体。

私の考えたものは2つ。


(1)古くて味わいのあるもの=結婚

小さな頃の夢は
いつからか忘れていた
大きな花束

この描写は、結婚を示唆しているようにも思われます。「結婚はして当然」、そんな考えは確かに前時代的。多様性もへったくれもありません。

ただ、古びた価値観でも、私にとっては憧れのもの。

小さい頃はあんなに信じていたのに、段々と遠ざかってしまった憧れ。

という説です。


(2)求められず置きざりになって「古く」なっていく私

続いて気になるのはこの歌詞。

でも愛してほしいこんなあたし
ガタクレちゃっても

人間に対して、まるで機械が壊れたような表現を用いています。

求められない、報われない私。そんな私は誰のものにもならぬまま「ガタクレ」ていくかもしれない。

そんな焦燥感が「古拙」に含まれているかもしれません。


やっぱり考えても答えは遠くにある気がして、それこそ楽しい。



例示した3曲に共通するのは、「独りになることへの苛立ち、恐怖、悲哀、不安、憂鬱」でしょうか。

その淋しさを乗り越え、たった一人と向き合い続ける日々を描く新バンド、可愛い連中。

もしかしたら、歌詞や命名のアプローチにも変化があるかもしれません。

正式な歌詞のリリースは未定ですが、既に「グロテスク(YouTube公開)」「互市才覚(FC限定公開)」など、気になって仕方ない曲名が発表されています。また「四月」「八月」(共にFC限定公開)のように、曲と曲の関係性も考えてみたい曲名もございます。

いつか手元に歌詞がやってくるその日まで、あれこれと考えるのが今の私にとって大きくて尊い日々の楽しみです。



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