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紅と白の裏で。

最後に、みーぱんさんにグッとカメラが寄る。
その笑顔が大写しになってからの、フレームアウト、別カメラへ。

フォーメーションを組んで待機していた14人が映し出される。

それをきっかけに、私たちはステージ袖へ向かって走り出した。

「お疲れ様ー!」
「お疲れ様!」
出迎えてくれたマネージャーさんやスタッフさんの先導で、先輩方は控え室へと向かっていく。
その後に続こうとしたところで、ふと視線を感じた気がして足を止めた。

ぐるりと首を巡らせると、視線の主はすぐに分かった。
「…綺良ちゃん」
思わず笑ってしまった。
仮にも年に一度の大舞台、全国的に知名度最高クラスの番組に今から出るというのに、なんであの子はあんな満面の笑みでぶんぶん手を振れるんだろう。

「緊張しないのかなー」
気付けば、茉莉が傍らで綺良ちゃんの様子を眺めていた。
「すごく、楽しそう」
その隣には、陽世も。
「だね。めっちゃ笑顔だし。でも大丈夫かな、そろそろ…」

と、綺良ちゃんに小柄な人影が駆け寄る。
「茉里乃ちゃん、ちっちゃい」
「いや陽世ちゃんが言うなし」

茉里乃ちゃんに促され、ぱたぱたとステージへ向き直る綺良ちゃん。
その様子を見届けた茉里乃ちゃんが、ちらっとこっちを見る。

『が・ん・ば・っ・て』
声は出さずに口だけ動かす。
茉里乃ちゃんはニコッと笑って小さく手を振ってくれた。

「カッコいいねぇ」
ステージ上へ飛び出していく背中を見ながら茉莉が呟く。
「そうだね、みんなカッコいい」
「後で話せるの楽しみだね!」
陽世が浮かべているのと同じ表情が、私の顔にも浮かんでるんだろうな。
そんなことを思いながら、光に溢れるステージを見守る私が、呼びにきたマネージャーさんに怒られるまであと、1分。

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