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教職調整手当10%という報道から考える

自民党の特命委員会が教職調整手当を現在の4%から2.5倍の10%に引き上げるという提言案を出したようだ。

まぁ、文部科学省が言っているわけでも無ければ、財務省が言っているわけでも無いし、国会を通ったわけでもないので、10%になるかどうかはここでは議論しないが、この10%を上乗せを「2.5倍以上に」というセンセーショナルな報道が正しいのかどうかが気になった。

そんなわけで、色々計算してみたら、残業手当の計算方法とか勉強になったので、まとめて見た
本記事は与党の提言案や公共放送の記事見出しに文句を言いたいわけでもなく、報道を根拠を示しながら考えるという純粋に情報モラルの教材として取り上げているだけですので、誤解の無いようによろしくお願いいたします(笑)

以下、色々と計算してみるのだが、ググってにわかな知識で書いているので、間違いがあったらゴメンナサイ(^^;;

教員の1時間あたりの残業手当相当額を試算する。

まずはこの議論をするに当たって、教員に残業手当が支払われた場合の1時間あたりの額を計算してみる。

ここでは、分かりやすいように一ヶ月の給料が30万円(基本給+諸手当)みたいな教員をモデルとする。

2023年の勤務日数は、245日(土日祝日年末年始が120日)である。
1日の労働時間は7時間45分(7.75時間)なので年間の労働時間は
245日×7.75時間=1898.75時間となる。
ここから1カ月の労働時間は
1898.75時間÷12カ月=158.23時間
であることから、一ヶ月の給料が30万円とすると、その時給は
300,000円÷158.23時間=1,895.97円。
端数は切り捨てるとして、1,895円である。
残業代は、基本的には1.25倍の金額は支払わなければならないので、1,895×1.25=2,368.75円
となる。

すなわち、1時間の残業で2,368円程度の残業手当が支払われるのではないかと思う。

教員の残業時間から一ヶ月の残業代相当額を試算する。

一方、先日発表された文部科学省の教員勤務実態調査(令和4年度)【速報値】を見て見る。

もっとも少ない高校の教員でさえも1日あたりの在校時間は10時間6分と出ている。
勤務時間は7時間45分なので、1日あたりの平日の残業時間は2時間21分(2.35時間)である。

先ほど述べたように2023年度なら勤務日数は245日。
これを12で割って1カ月あたりの勤務日数を計算したいところだが、年休を取って残業が発生しない日もあることから、(そんなことはなかなか無いだろうが)最大20日の年休を取りきったとして
(245日-20日)÷12カ月=18.75日
一ヶ月に残業が発生するのは18.75日である。
すなわち、一ヶ月の残業代は
残業手当×1日の平均残業時間×一ヶ月に残業をする日数
で計算すると、
2,368円×2.35時間×18.75日=104,340円となる。

結論として、一ヶ月の給料が30万円の高校の教員の残業代はまともに計算すればおおよそ104,340円である。

10%どころか給料の34%程度の残業手当が必要になりそうだ。

教職調整手当が10%になったらいくら貰えるのか。

それが、教職調整手当を2.5倍の10%にするから良いでしょ!って話に置き換えると、月の教職調整手当は30万円の10%で3万円である。

本来貰えるはずの手当が104,340円だとすると、教職調整手当が10%になったところで3万円である。
2.5倍にしたことがスゲーことなのか、議論の余地がありそうだ

では、教職調整手当はいくらが望ましいのか。

現在の教職調整手当は、昭和41年に教員の残業時間をもとに計算をしたという形であれば、今回も実際の残業時間をもとに導きだしてはどうだろうか。

すなわち、この辺を参考にざっくり計算してみることにする。

現在の教職調整手当4%は、小中学校の教員の1週間の平均残業時間が1時間48分(1.8時間)から導き出されているようだ。

同じ考え方で計算してみる。
先ほど取り上げたように、1日あたりの残業時間は2.35時間。1週間は5日なので、イマドキの教員の1週間の残業時間は2.35時間×5日=11.75時間となる。
1週間の残業時間11.75時間は当時の残業時間1.8時間の何倍かを計算してみると
11.75時間÷1.8時間=6.52
となり、6.52倍となる。
このことから、前回と同じ理屈なら、教職調整手当は4%×6.52倍=26.08%となり、教職調整手当は26%ぐらいつけても罰は当たらないということになりそうだ。

ちなみに、先ほどのモデルケースから仮に一ヶ月の給料が30万円の場合、その26%は7.8万円
それでも、先ほど試算してみた一ヶ月の残業代約10万円よりも安い。2.2万円安いことになる

今回は高校の値とは言え、前述の通り小中の残業時間よりも少ないので多く見積もっているとは言えない。加えて、ここまでの計算には、複雑になるので土日の部活動による勤務時間は入れていない。

まとまっていない「まとめ」

そんなわけで、今回の試算が正しいとすれば、残業手当をまともに計算すれば一ヶ月の給料の34%程度過去の教職調整手当同様の計算をすれば26%程度の支給が必要となるところを10%にしようというのが今回の提案である。かなりコスパの良い提案に見える(笑)コスパ、タイパの時代にマッチしている(笑)

ただ一方で、一般的に残業したから必ずしも残業代が出るわけではないとか、今回算出されている残業時間は真に必要な残業時間なのかとか、社会の現状から考えると、色々な議論の必要性があるというのは想像には難くない。すなわち、34%や26%が必ずしも正義というわけではないと思う

そんなわけで、「2.5倍も支払われるようになる」という見出しだけ見て、倍以上かよ!と思うのでは無く、ちゃんと計算したり、社会の現状も踏まえて考えてみるのも大切だという、あくまで情報モラル的な話題です(笑)

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