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『おじいちゃんのまち』――生涯住みたいまちってどんなまち?

読み聞かせ記録第3弾は『おじいちゃんのまち』著:野村たかあき(講談社)です。

版画で描かれた絵本で、息子がこれまで読んできた系統ではないチョイスだったため、思わず

「渋っ…!」

と声が出てしまいました。

しかも3歳が読むには長めのお話。


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話は、おばあちゃんを1年前に亡くして以来、一人で暮らしているおじいちゃんの家に、孫のゆうたとその母が来訪するところから始まります。

ひとり暮らしが心配だから私たちと一緒に住もう、と提案するゆうたの母。

これに対し、ひとりで暮らすからいい、と返しつつ、おじいちゃんはゆうたと共に銭湯に出かけます。しかし道中、ゆうたも「どうして僕たちといっしょに暮らさないの?」と質問を投げかけ……、という展開。


***

うーん。この幕開け、核家族化が進んだ現代っぽいなぁと思い、奥付を見ると、初版は1989年とありました。約30年前です。全っ然現代じゃなかった。感覚が古すぎた。。

現代は「一緒に住もう」の前に、介護付き有料老人ホームに入る流れかしら……と思いながら読み進めると、おじいちゃんのこの街での暮らしぶりが見えてきて、何故ゆうたたちと一緒に暮らさないのかが判明していきます。


新卒時の就職活動で、「まちづくりに対する憧れ」みたいなものがあって、そんな気持ちを元に入社した一社目で、同じくまちづくりに興味があって入社した夫と知り合った身としては、この絵本を読みながら、いろいろと回想に耽るところがありました。

この絵本『おじいちゃんのまち』で描かれているように、声を掛け合ったり、老若問わず関わりあうようなまちを、店舗を通して作りたいって思ってたなぁ……とか。

私が小さい頃にも近所に銭湯があって、たまに行ったけど、親は「根掘り葉掘り近所の人たちに色々聞かれるから行きづらかった」ってこないだ言ってたっけ……とか。

息子の反応はそっちのけで自分の話をしますが…。

大学進学と同時に一人暮らしを始めて以来、賃貸暮らしを12年続け、地域コミュニティから遠いポジションに居続けてきましたが、昨年家を購入したのを機に、いよいよ町内会というコミュニティに入りました。

もともとその土地の人間ではない移住者という身であること、人生の先輩たちが多く住むまち、ということもあって、うまくやっていけるだろうかと不安になりながらの町内会デビューでした。
が、随所で若い家族がやってきたと歓迎され、ゆるやかにまちに入ることが出来ました。

例のごとく、町内会はディープな付き合いがあるようで、入居当初は色々聞かれ、集金や当番の案内が相次ぎ、スポーツチームへの勧誘もありました。

そんな面もありながら、町内会としての仕事もあり、融雪パイプの設置や、ごみ集積所の管理などなど……町内には高齢の方もいらっしゃり、その人たちに無理はさせられないとなれば、若手が出番となってきます。

まちづくりの文脈では、よく
「近所の人たちが助け合って」
「住民自治が必要」
「共助の精神で」
「地域の力で」
と言った言葉が付いてまわりますが、マジで住民自治や共助の精神がなければこのまちで生きていくのは難しいかも、と思う日々です。

私たち夫婦はこういう活動が苦ではないタイプ(むしろやりたい方)なのですが、こういう付き合いが嫌だからと、古くからのまちを避けたり、ましてや移住なんてもってのほか、という人もいるかもしれません。

でも、先日、同じ町内会で同世代の方とお話する機会があり、その中ですごく共感した言葉がありました。

「町内会ってさ、避けようと思えば避けられるけど、避ければ避けるほど、自分が生きづらくなるんだよね。だからいっそのこと入り込んじゃった方が生きやすいんだろうなと思ってる」

まさしくその通りですね、と首がもげるほど頷きました。

絵本の話に戻りますが、こうして日頃から関わり合いのある近所の人たちがいることが、遠くにいる親類よりも頼りになるってことなのでしょう。
『おじいちゃんのまち』は、おじいちゃんが生涯住みたいまちでした。

私も自分の住むまちで、近所の人を頼る、頼られるの関係を地道に作っていきたいなと思い至ったきっかけの1冊となりました。


※ちなみに息子もこの絵本は面白かったらしく、何度も「これ読んでー!」と布団に持ち込んでいました。うむうむ、キミもまちの構成員だからな、と10回くらい読んだ年末年始でした。笑

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