教えたい1つのことを100の角度から伝える指導 15.

僕が指導するときに意識していることの一つに、「コツを掴ませられるように教える」というのがある。

自分の専門分野であるソフトテニスを例に出して話そう。

自分がストロークを打つときの感覚は、言葉にしようとするとたいてい十人十色になる。

例えば僕のストロークの感覚は、「ラケットでボールを押し返す」って感じかな。

僕が今までの経験の中で打つときの感覚を言葉にしたときの表現をいくつか挙げてみる。

ボールを運ぶイメージ
ボールを持つ感覚
ボールをしばくように打つ
ボールをつぶすようにして打つ
ボールとラケットが触れている時間を長くするイメージ
ボールは腕じゃなくて足でコントロールする
ボールは体重移動を意識して打つ

etc...まあ挙げればキリがない。

きっとほかのスポーツでもそうだと思うが、このような微妙な感覚を言葉にしようとすると、人によって全く違う表現になることが多い。

ボールコントロール良くなおかつスピードのあるボール=良いボールを打つために意識していること考えると、これまた十人十色の回答となる。

ちなみに僕が現役時代に主に大切にして意識していたことは「股関節の使い方」と「重心の高さ」かな。
他にも「打点の位置」「体重移動」「テンポ」「テークバック」「打ち終わりの右足の使い方」とか、ストロークだけで意識していたことは無数にある。

無数にある意識するポイントを1秒にも満たないスイングの中ですべて考えて意識してやろうとか思うのは到底不可能なので、意識することを無意識でできるくらいまでにすることが練習だと思っている。この話も掘り下げるとそれだけでnote1記事分くらいになりそうなので、いつか書こうと思う。


話が脱線しかけたのでもとに戻すが、要するに僕が言いたいことはこうだ。

何か1つのコツを掴ませるためのアプローチは無数にある。ということ。

例えばざっくりした話をすると、「ドライブ回転できれいなストロークを打つときのコツ」を生徒に教えたいとする。
「とにかくドライブ回転で打つ意識で打ちなさい」と言われても、まずコツはつかめない。
「テークバックで打つ面を後ろ向ける」というべきかもしれないし、「フォロースルーを首に巻き付けるようにスイングする」「グリップを正しい持ち方に直す」、または原因は別のところにあって、「腰を落とす」とか「左手の使い方」と教えるべきなのかもしれない。

教える側が自分の中に持っているイメージとか感覚とかを一方的に生徒に教えたとしても、生徒がコツを掴んで良いボールが打てるようになる例は少ないだろう。
僕が感じるのは、理論は誰でも教えられるけど、その理論を身につけるためのコツとか良い感覚とかを生徒に掴ませて、実際に生徒が良いボールを打てるようになるように教えるのは難しいということ。

そのためにコーチは、何か一つのことを教えるときもできるだけたくさんの角度からアプローチしてあげることが大切だと思う。

そうすればその中の何か一つが生徒にコツを掴ませ、上達するきっかけになるかもしれない。

だから指導者は、自分の考えとか理論とかを生徒に押し付けすぎず、できるだけ柔軟に教えられるようにするといいのではないだろうか。

端的に言うと、「教えたい1つのことを100の角度から伝える指導」を目指すといいと思う。僕もそれを目指したい。


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