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テレビの奥の世界

赤と青、縦縞模様のユニフォーム




それを着てピッチに立つことが許された特別な11人




そんな彼らが時代を築いた三角形や線運動の数々








そして、一際輝く背番号「10」










これは芸術作品か何かだろうか。







当時、YouTube上のスーパーゴール集やドリブル集などにはあまり興味が無く、
白髪のあいつのファイヤートルネードばかり練習していた僕でさえ、
手元のDSを置いて、テレビの奥の出来事にそう息をのむ日々があった。




おそらく同世代のサッカーに興味を持っていた人達のほとんどは僕と同じ。もしくは白い服を着たライバルの銀河系軍団のどちらかに目を輝かせていた幼少期だと思う。
そう言っても過言ではないほど当時のサッカーの中心はスペインにあった。







「この10番がメッシで、お前と同じ左利きで身長も小さいんだけど―」

サッカーを始めた頃、父が僕にこんな感じの事をずっと言ってくれていたのを覚えている。
今思えば、全てはこれがきっかけだった。
サッカーはしていたけど、今と違ってのめりこむほどでもなかった幼少期の僕の頭の中には父から教えてもらったメッシしか住んでいなかった。他の選手を別に知ろうともならなかったし、とにかく自分は似た身体的特徴を持つメッシだけでいいのだと。なにより世界一の選手だし。



まあ、そんな甘い考えをしていた僕もすぐ自分の才能の無さに打ち砕かれて夢を早々に諦めるのだけどそれはまた別の機会に話すとして。







ただそういった日々が、受動的にではあるが続いていくうちにいつしかそれは能動的な「好き」になり、当時小学生、純粋な僕はとりあえずドリブルの仕方や両手の人差し指を掲げるパフォーマンスなんかを真似てみたりした。
彼のすごさもあってそうなるのは必然かつ一瞬で、そしてそんな好奇心はほどなくして彼のいたFCバルセロナというチームにまで広がり、その後の感情はまた冒頭の5行に帰着する。









そこから今日までに約15年が経った。

今はバルセロナより応援するチームもでき、
メッシより好きな選手もいる。
だけど22歳の年を迎えた僕は、今でもあの頃の憧れに時々背中を押されてこの地でサッカーを続け、子供の頃に眼を輝かせて観ていたテレビの奥の世界で約1年を過ごした。

ここで見たこと、感じたことに関してはこれまでにもう十分書いたので今回は控えておく。






今回はただ、



ここでの生活は有限だとわかっていながらも、
慣れによって大切な何かを見落としてしまわないように、





今自分がいるのはあの頃にこれほど夢見た場所なのだから、できる限りのものを拾っておけと自覚させるために、






自分へ向けてある種、自己啓発に似た手紙を書くような想いで”テレビの奥の世界”を眺めていたあの頃について綴る。









5月ももう終盤。最初で最後のスペインでのサッカーもシーズンを終えた。プロテインとバナナを詰め込んで練習場所へ向かう必要もなくなり、ゆっくりと過ごす19時過ぎ。そのせいか、これまでは気にも留めなかったまだ沈む気配のない太陽と暖かい風がもうすぐここで過ごす時間が終わろうとしていることを告げているような気がした。











あとちょっとだね。

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