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[私の持病]1型糖尿病を超絶分かりやすく説明するnote

なぜこのエントリを?

私は自分の病気を全く隠していません。話の流れがあれば誰にでもカジュアルに話しています。
異業種からエンジニアへのジョブチェンジにあたり、「どうしてエンジニアに?」という質問を何度も受けました。そしてその度に「幼い頃から病気があって…」と話をしてきました。
最近、以前よりもずっと多くの人と関わる機会が増えています。
カジュアルに話すので、なんとなーーーくな感じでしか伝えていなくて、一体何なのか?という話をあまりしていないなあ、と……いうことで自分の病気の話を詳しくここに記しておこうと思いました。正確な内容は、興味があれば、これを読んで!と言えるように。

1型糖尿病とは

糖尿病という言葉自体は多くの人が聞いたことがあると思います。「甘いものを食べすぎると糖尿病になるよ」とか。よく言われるこれは”2型”糖尿病の話です。いわゆる生活習慣病と呼ばれているもの。
(かつては成人病と言われていましたが、今では未成年でも2型糖尿病になったり生活習慣が要因であることが多かったりするため生活習慣病と呼ばれるようになったのだと思います。しかし生活習慣だけが原因と言い切れるほど単純でもありません。遺伝的要素も関わっていたり。2型糖尿病を「本人の習慣のせい」と言い切るのはあまりよくないかな、と「生活習慣病」と言う表現をあまり使いたくないと私は思っています。でも便宜上使います…)
1型糖尿病は2型糖尿病と違って、未だに原因不明です。(何らかの感染が原因とは言われています)誰でも、突然、なりうる病気です。主に自己免疫性の疾患で、大きい病院だと内分泌代謝科にかかることもあります。日本国内だと10万人に1〜2人だと言われています。難病指定はされていませんが(してほしい)、20歳未満では小児慢性特定疾病に指定されています。
なぜ同じ「糖尿病」なのかと言うと、メカニズムがほとんど同じだからです。血糖値の上昇、放っておくと合併症を併発する…など。
ここでは、1型糖尿病の身体に起きていることを(所々2型との違いを交えつつ)分かりやすく説明してみます。

正常な身体は

まず、1型糖尿病には欠けていて健常者には正しく動いている体内のメカニズムについて説明します。
ご飯を食べると人体は様々なホルモン等を分泌するなどして栄養素を代謝します。
その中でも、糖質を摂取するとどうなるか。
①血糖値(血中1dlあたりのグルコース(糖質)量mg)が上昇
②膵臓のランゲルハンス島β細胞からインスリンというホルモンが分泌される
③インスリンが血中の糖質を体内の必要な臓器に渡したり肝臓に蓄えたり…つまり血中から糖質を抜き取って必要な場所へ運び出すことにより、血糖値が下がる
(勉強したり運動したりする時に糖分を摂ろうと言われるのは、脳や筋肉が糖分を必要とするため!)
このようにして血糖値を下げることができるのはインスリン”だけ”です。血糖値を上昇させるホルモンはいくつかありますし、何より糖分を摂ることで血糖値は上がります。

1型糖尿病の身体に起きていること

インスリンを分泌する膵臓のランゲルハンス島β細胞が完全に破壊されているのが1型糖尿病です。自己免疫の異常などにより自らβ細胞を攻撃して…と言われています。
β細胞が破壊されているということはどういうことでしょうか?
インスリンの分泌が完全になくなるということです。
インスリンとは血糖値を下げる”唯一”のホルモンでした。
つまり、1型糖尿病は治療をせずに放っておくと血糖値が上がりっぱなし(=高血糖)になります。それは命に関わることですし、治療不良で高血糖が続くと血管障害や神経障害など合併症も併発します。
なので必要な治療は、インスリンを外から注入することです。言ってしまえば、これだけ。シンプルですね。食事療法も運動療法もほとんど必要ありません。
(2型糖尿病の場合は、インスリン分泌はあるのにその効きが悪くなってしまいます。これをインスリン抵抗性と言います。2型糖尿病の方はまずインスリン抵抗性を改善するために食事療法や運動療法をします。進行してインスリン分泌が減っていくとインスリン治療が必要となります。)

どんな治療が必要?どんな生活を?

一言で言うと「インスリン自己注入による血糖値コントロール」です。
破壊されたβ細胞の本来の働きを外側から再現するようなものです。シンプルだけど、簡単ではないですね。日頃の食事だけでなく、体の調子によって血糖値は勝手に上がります。インスリンの効き具合も変動します。二十数年向き合ってきましたが、人体って不思議だなーってずっと思っています。
しかし、血糖値コントロールは絶対です。しないと死にます。
というわけで必要なのは以下の二つ。

  • 血糖値のモニタリング

  • インスリンの自己注入

まず血糖値のモニタリングですが、基本は血液を採取して専用のセンサー等で測定します。なので血液検査で簡単に分かりますし、キットがあれば誰でもさくっと測れます。
毎日決まった時間・タイミングで血糖値測定。これが治療のまず第一歩。とはいえ今は便利な機器が登場して、センサーを身体につけておくだけで24時間モニタリング!なんてこともできます。
そしてインスリンの自己注入。必要な時に自分で皮下注射を行います。
必要な時というのはざっくり二種類あり、目的に応じていくつかのタイプのインスリン製剤が開発されています。

  • 持続型
    健常者の場合、インスリンは食後にだけ分泌されるのではなく常に少量のインスリンが分泌されています。これは「基礎分泌」と呼ばれ、血糖値を一定に保つための人体の仕組みです。1型糖尿病患者は、この基礎分泌も補う必要があります。

  • 速攻型
    こちらは食後に上昇する血糖値を下げるためのものです。食べた分だけ必要なインスリンを注入するイメージです。また血糖値が上がりすぎている時(必要なインスリン量が足りていなくて高血糖状態になることもよくあります)に追加で注入するのもこちらのインスリンです。

この二種類の自己注入が基本となりますが、今はものすごーーく便利になって、インスリンポンプという機器を身体につけておけばリモコン操作でいい感じに注入できるという技術があります。(後述)
外付けの機器によってβ細胞を再現しているようなものです。すごいですね。
血糖値を監視しながら、必要なだけインスリンを注入する。これが治療の基本です。
健常者の場合は、その時々の血糖値に応じて身体がいい感じにコントロールしてくれます。生体恒常性(=ホメオスタシス)ってやつです。
1型糖尿病の治療とは、人体が勝手にやってくれているはずのことを「自分で管理する」ということになります。

高血糖と低血糖について

血糖値が上がったり下がったりする要因はいくつもあります。
健常者も食べ過ぎると血糖値が上がるし、食べなさすぎると血糖値は下がります。それに脳や筋肉をたくさん使う時は糖分が必要です。
1型糖尿病患者は、インスリン量を自分(あるいは家族、医者の場合も)で調整しているのでインスリン量が少なすぎたり多すぎたりすることも高血糖、低血糖の要因になります。
では、適切な血糖値とは何でしょうか?
臨床的な正常値は空腹時で「70〜109mg/dl」食後だと「140mg/dl未満」です。

  • 高血糖
    糖尿病の症状としてよく言われる、「頻尿」「喉の渇き」は高血糖によるものです。人それぞれですが、私はあまりに血糖値が高いとなんとなく気分が悪いです。あと口の中がべたべたしてくる(おそらく過剰な糖分で) 急激な高血糖で起こるケトアシドーシスでは意識障害も起こります。

  • 低血糖
    血中に糖分が足りていないと、脳や筋肉や細胞など身体が必要とするところへ糖分=エネルギーを運ぶことができなくなります。つまりふらふらしてきます。空腹感、脱力感、手の震え、思考力の低下…などなど。あと私はメンタルが急に弱ります。ものすごーく下がると、意識障害や痙攣を起こします。

1型糖尿病患者が気をつけるべきは高血糖を避けることはもちろんですが、それ以上に低血糖です。高血糖は続くとよくないですが基本的にインスリンを追加注入すればとりあえずは何とかなります。しかし低血糖は、なんというか、とにかく危険です。放っておくと突然倒れたり思考力低下により日頃の生活が危なくなったり。頭が回っていない状態なので、自分で気づかないと糖分を摂るという判断すらできなくなります。(大丈夫?って思ったら糖分を摂るように声かけてほしい)
糖分の使いすぎやインスリンの注入しすぎなどにより血糖値が下がることは避けられないので、どうするかというととにかく糖分を摂ります。最も吸収が早いのはブドウ糖、時点にジュース…ですね。白米などはこれらに比べて血糖値上昇がゆるやかなので糖分補給には向いていません。チョコレートは糖分量が(私にとっては)少なすぎます。意識障害が起きていたら、とりあえず口にはちみつを塗るとかでもありです。(とろみのついたブドウ糖水が最速なんじゃないかなあ…とは思ったり。)

ヘモグロビンA1cについて

血糖値コントロールの指標として血糖値とは別に血中ヘモグロビンA1cというものがあります。
血糖値が今この瞬間の値であるのに対し、ヘモグロビンA1cは1〜2ヶ月の血糖値の状態を反映します。
正常値は5.6%未満
治療目標は、"治療強化が困難な場合"は8.0%未満、"合併症予防"は7.0%未満
私は7.0〜7.5%で安定しており、今はこのあたりを維持する方向で問題ないとしています。

私の治療

医療テクノロジーの進歩はすごくて、以前は一日に何度も針を刺して血糖値測定と食事毎の自己注射をタイミングを見計らいながら行っていた私が今ではiPhone(+AppleWatch)と専用リモコンだけで身軽に生活しています。

24時間血糖値モニタリング

二の腕(皮下細胞の細胞間液)にセンサーをつけてBluetooth接続したiPhoneのアプリで24時間いつでも血糖値を見ることができます。
AppleWatchを買ったら、なんとこちらでも見れるようになりました。便利すぎる。
低血糖と高血糖でアラートが鳴ったり、上昇下降も確認できたり、ものすごく便利です。
センサーの交換も10日に1回。
測定キットの荷物もなくなり、指に針を刺して血を出して…とする場所を気にせずによくなり、そして24時間モニタリングして監視できる+記録が残るので血糖値をコントロールしやすくなりました。

インスリンポンプ持続注入

こちらも二の腕にチューブを刺してそこにインスリンが入った機器を取り付けて、リモコン操作でインスリンを注入しています。
常に取り付けてある状態なので持続的にインスリンが入り続けており、食事時や高血糖時に必要なだけインスリンを注入することができます。外付け人工膵臓のようなものだと思っています。
注入するインスリン量を細かく調整できるためコントロールしやすくなったことはもちろん、出先でインスリン注射を打つために場所やタイミングを見計らう必要がなくなったことがとにかく楽になりました。

治療方法は人それぞれ、自分の身体と生活に合ったスタイルを選びます。
血糖値を監視しながら自分で必要なインスリン量を決めて注入できるスタイルが私にはぴったりでした。
また荷物を軽くして、おしゃれも楽しんで……が叶うようになりました。これがとにかくうれしかった。
医療テクノロジーって本当にすごい。技術が人を助ける、を身をもって実感しています。

望むこと

同じ病気を持っていても、自らの病気への捉え方、考え方は人それぞれ。
私の話をします。

私の場合

物心がついた頃にはこういう身体だったので、自分が不知の病を持っていることに対して何か落ち込むというようなことは一度もありませんでした。病気も含めて私自身。
高校時代に校内の弁論大会で自分の病気を「個性」だとする話をして優勝しました。こういう話はウケがいいと分かって。ずるいね。高校生という時期は今よりもずっと未熟、あるいは純粋だったのかなあと思います。
今となっては、個性というにはあまりにハンデでは?とちゃんと捉えつつあります。
子どもの頃は家族や学校の先生たちが私の状態を注意深く見てくれていました。低血糖、大丈夫?という具合に。私は血糖値が低くなると喋り方がふわふわしてくるそうです。基本無自覚、危ない。(今では自覚症状は多少あるし、何より常に確認できるからまだマシです。)
大人になってからは、保護責任は自分自身。周りの人の助けが必要になるなら、はっきり伝えておく責任は自分にあります。……ということにようやく気付きました。
自分の病気を重く捉えていないことが問題だなあ、と。軽く話しすぎている。それは自分の病気について話す時に相手をあまり重い気分にさせずに済みます。でも本当は、軽くなんかない。一生涯治療が必要な不知の病で、 経済的負担は大きい。コンディションやメンタルは血糖値に左右され、いくら便利になったと言えどやっぱり大変。あぁ実は重いんだな、と見て見ぬふりをしていた自分自身に気づいたのは本当に最近です。
どれくらい真剣に、しっかり、自分の病気について伝えるかは環境や相手との関係性によると思います。

わがままを言うようだけれど、私が病気の話をする時に重く受け止められるとどうしたらいいか分からない。もっとカジュアルに話したい。
しかし多様性といえるほど平等なものではなく、明確にハンデ。難しいですね。
このnoteが私の病気をよりフラットに伝えるためのツールになればいいなと思っています。
気になることがあれば気軽に聞いてほしいです。試験勉強の分からないところを聞くようなノリで、大丈夫。
私の日常が少しでも伝わればうれしいです。

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