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両側乳がんの可能性あり(わたしだけの乳がん物語 #9)


2023/8/15(火) 術前精密検査の結果報告、今後の方針

MRI、エコーと術前精密検査の結果を聞きに行く。この日で手術日や術式など方針が決まるものだと思っていた。

主治医の先生とは初診以来の2回目。改めて、ブレストクリニックで受けた生検の結果より、右側にある病変は非浸潤性のがんでステージ0という説明を受けた。

続いてMRIとエコーの結果より…右胸の別の場所にもうひとつ小さなしこりのような影があること、そして左側にも同じような影があるため、ふたつとも手術前に針生検で確認しておいた方がよいと放射線科の先生からレコメンドをもらったとのこと。

左側にも影があることはわかっていたつもりだった。でも、針生検をするということは良性と言い切れないから、つまり悪性の可能性があるからやるのだと、過去の経験から知っている。恐れていたことが現実のものになりそうだった。右側のもう1カ所は同じ非浸潤性のがんが広がっているのかもしれないし、左側も調べてみないとわからない、エコーのかたちだけ見てもなんとも言えないとのこと。これはブレストクリニックで乳がんを告知される前の針生検でも似たようなことを言われた。結局、その意味するところは「わかりやすいがんではない」ということだったのだけど。

そこではじめて、右側は全摘を考えていたことを伝えた。「おーそうなんですね」。きっと先生は温存できる可能性で考えてくれていたのかもしれない。わたしも何がなんでも全摘したい訳ではなく、この先“完治”と早く言えるような状態になること、局所再発の可能性が少しでも少ない方を選択したいこと、あったものが無くなる不便さとの天秤で判断したいと言った。

仮に左側も非浸潤だった場合は、両側全摘して両側同じように再建してきれいにできるからとも説明してくれたのだけど、再建を希望していないことも伝えた。
シリコンを入れたくないこと、ケロイド体質だから自家組織で新たな傷をつくりたくないこと、説明していたら涙が出てきた。「でも、両側だったらその判断が揺らぎそうです」とも伝えた。

全摘を考えた時、真っ先にイメージした姿がある。それは川村カオリさん。20年ぐらい前に手術痕が残る上半身ヌードの写真を見たことがある。堂々とかっこよくて、でも乳房が無いことが不思議で、“乳房を取る”ということを具体化した姿は鮮明に覚えている。
だからか、全摘姿を画像検索することもなく、想像はついた。ひとつ取ったところで人としての尊厳も女性らしさも変わらないんだなと思えたから、再建しなくても別にいいかと思っていた。片方だけなら。

2度目の針生検

看護師さんも来てテキパキと準備されていく。上半身裸で同意書にサインして、2度目の針生検。今回はバネ式と呼ばれる針生検だった。

処置をしていただいている間、天井を見上げながら今までの経過を振り返っていた。左側も生検することになるなんて。左側もがんの可能性があるなんて。右側だけだと思っていたから、それまでに決めていたことがすべて揺らいでしまいそうだった。

看護師さんに傷口を押さえていただいている間、また泣いてしまった。今度は嗚咽が漏れるほどに泣いてしまった。「辛くなってしまうよね」と看護師さんは優しく声をかけてくれて、肩をさすってくれた。

片側3回ずつガッチャンと組織を取った。バネ生検はマンモトーム生検より傷口が小さいのか、処置後の痛みもそれほど大きくなく、前回は夫に車で迎えにきてもらうほどだったけど、今回は一人で帰れるぐらいの痛みだった。

子供になんて伝えるか。チャイルドサポートへの面談予約

乳がんになったこと、子供にはまだ伝えていなかった。子供は8歳の男の子。わたしのことが大好きで、わたしの体の柔らかい部分を触るのも大好きだった。二の腕、太もも、腋の下、柔らかい部分をもみもみ。しょっちゅうシャツの袖口から手を入れて、腋の下を触りつつちらっとおっぱいもタッチしたり。「触ってないよ!」なんて言ってるけど、照れくさそうに笑ってまだまだ甘えん坊の男の子。まだ一緒にお風呂も入っているのに、乳がんになっておっぱいを取らないといけないことをどう伝えていいのか迷っていた。

この病院にはチャイルドサポートがあり、家族が病気になった場合、子供自身が病気になった場合、どちらも相談に乗ってくれるというのは知っていた。子供に何をどこまで、どう伝えるか。相談したいと思いつつタイミングを逃していたものを、両胸がんかもしれないと分かったこの日、きちんと相談してみようと思い立った。会計後にソーシャルワーカーの窓口に行ってチャイルドサポートの方をご紹介いただき、次回の診察の後に面談をすることにした。「結果次第で、気持ちがそれどころじゃなければその場でキャンセルしてもいいですからね」と言ってくださった。

どんな結果であろうとも、主治医の先生が仮押さえしていただいた手術日は迫っている。そろそろ伝えないとならなかった。

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